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第一の犠牲者

とにかく落ち着こう。

まずは家族構成から。

今部屋に籠ってるのが全ての元凶。この家の主人で資産家のご当主。

そして奥さん。若そうに見えて化粧をとると醜い。言い過ぎか。

そこでふんぞり返っているのが長男。父親の血を引いたのだろう。

我々を蔑むような眼で見る。

弟たちは遺産欲しさに一騒動起こそうと画策。

後は…… お医者様が一人。

お婆様がよそ者に文句を言う。

それから……


きゃああ!

女の叫び声が響き渡る。

「どうした? 」

急いで様子を見に行く。

扉は開けっ放し。

当主を迎えに行ってすぐに悲鳴が。

どうやら開けた瞬間中の光景が飛び込んできたのだろう。

ちなみにここの扉は普通の押扉。

お洒落な見た目に反してオートロックなどではなく至って普通の後に引くタイプ。

入る時に押して出る時に引く。

どの部屋も同じタイプだと思われる。


腰を抜かしたメイドが後ずさりをしている。

「どうした? どうしたんです? 」

あわわわ……

いくら呼びかけても要領を得ない。

まったくメイドとは言えしっかりしないか。

血を流しうつ伏せで倒れている男。

「これは…… 」

ついに恐れていたことが起きてしまった。

我々が遅れたばかりにご当主が殺害される事態に。


「おい! 」

相棒を呼び寄せ検視に立ち会わせる。

相棒はぼうっとした見た目に反しこの手の事には精通したエキスパートだ。

ただ俺以外数人にしか心を開かない困った奴。

だからトラブルも多発する。

とにかく喋らない。命令でもない限り話そうとしない。

だから私が強く命じるしかない。


「それで死因は何だ? 」

「鈍器による撲殺」

「ほう通りでな。破片が散らばってる訳だ。これは恐らく壺か何かだろうな」

「うん。間違いないよ」

「何て酷いことしやがる」

「一発じゃない。少なくても三発は殴られている。これは怨恨じゃないかな」

「おいおい。勝手に推理するな。それは探偵の領分だろうが。違うか? 」

怒って見せる。別に本気ではないが思い込みは事件を複雑化させる。

余計な情報はいらない。マイナスにしかならない。

「他には? 」

「うん。窓のカギは全て掛ってたよ。部屋の鍵は机の上」

無造作に置かれていたところを見ると大雑把な人間だろうか。

ただトリックの痕跡は見られない。

と言うことは今のところ密室殺人。

被害者は恐らくこの部屋の住人。要するにご当主。

うん鍵? あれ何かおかしい。

だってここはこの男のもの。要するに資産家の爺さんの別荘。

部屋ごとに鍵があるのは変だ。もちろん客室は別だが。

まあ大きな屋敷ならあり得なくもないが……

さっきから何か違和感がある。とんでもない失敗。勘違いをしてる気がする。

どうも気持ち悪い。

うーん。これは一体どう言うこと?


「おい被害者を起こすぞ」

「うん。でも慎重に。気をつけてね」

そんなことは言われなくても分かっている。その辺の素人と一緒にするな。

手袋を嵌め二人でうつ伏せの死体を回転させ仰向けにする。

あああ?

誰だこいつ? 俺の知ってる爺さんじゃない。

写真の男とは似ても似つかない。

これは一体どういうことだ。

「ううう…… 何で…… 」

相棒も動揺して言葉にならない。

これはあまりにも衝撃的過ぎる。

一つの推論が成り立つ。

まさか間違えた?

いやさすがにそれはあり得ないか。


「おい! 」

「ごめん。たぶん隣だったみたい」

痛恨のミスに気付く。

こんな間抜けな探偵いますか?

いたら返事して。恥ずかしいなら手を挙げるだけでいい。

間抜けにもほどがある。

「うわあああ! 」

前代未聞の出来事に頭を抱える。

「お前が間抜けだからこういうことになるんだぞ」

「僕? でも止めなかったじゃないか」

「任せろと言ったろ? 」

「確認しなかったよ」

「うるせい! 」

ついに喧嘩になる。

自分が悪いなら我慢もできるが証拠はある。

奴が悪い。奴のせいだ。


「あの止めてください! 」

様子を見に来たもう一人のメイドが止めに入る。

たぶんメイドじゃないけどね。

「ほれ。あめをやるから大人しくしな」

この屋敷の婆様のはずだけどたぶん違うよね。

「あなたたちは一体何者ですか? 」

ついに追い詰められる。


                  続く

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