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ドスグロ山

三〇六号室。第三の被害者、雑見の部屋。

小駒さんの協力を得てダイイングメッセージの謎に挑む。


「うーん。これ擦れてないかい? 」

『ドスグロ山』の後に何か書こうとしたような跡が。

「最後まで書こうとした? 」

「どうだろう。だったら『の』だけど縦棒は変じゃないか」

「書こうとして絶命したので下に流れたとか? 」

「そうかもしれないがこれはどちらかと言えば縦棒を書こうとしたんだと思うよ」

「縦棒? 」

「ああローマ数字でない限りね。『ドスグロ山1』はおかしいし意味不明だろ。

だったら漢字を書こうとしたんじゃないかい」

「漢字ですか。うーん良く分からないな」

どうにか話について行ってるが小駒さんには先に先に進もうとする悪い癖がある。

もう少し丁寧に分かりやすく説明してくれると助かる。


「私だって意味不明さ。あの男は何だって? 」

相棒の見立てに興味を示した。

「それは聞かない方が。後悔しますよ」

「いいから奴の見解を教えな! 」

「十回繰り返せと」

「はあ? 大丈夫かいあの男? 」

「それは元からですから。お気になさらずに」

『ドスグロ山』を十回ほど繰り返したがただ顔を赤らめるだけだった。

相棒の悪ふざけを真に受けては馬鹿を見ることになる。

ここは直接相棒に真意を確かめるのが良いだろう。


さっきから血文字を見て唸るを繰り返す小駒さん。

まあそれも仕方ないこと。そんなに簡単に分かるはずがない。

探偵でも閃かないものをたかがミステリーマニアのお婆さんでは荷が重すぎる。

いくら年の功でも限界がある。それに彼女が真犯人なら絶対に解けるはずがない。


「ではダイイングメッセージはこれくらいで…… 」

「待ちな! やっぱりこれはおかしいよ」

カタカナと漢字の部分が離れすぎていると指摘する。

「死に際ですからそんなものでは」

「いやほら自分で書いてみな」

言われるまま横たわって準備完了。

被害者の立場になって考える。こうすれば少しは何か見えてくるだろう。

血は無いので赤のマジックで。

もちろんダイイングメッセージと離し部屋の中央で再現。

大事な殺害現場を荒らす訳にも行かない。それに遺体の側には横たわりたくない。


「ああ本当だ! 」

何度も書いてみるが四文字目と五文字目を空ける意味が分からない。

遺体の状況からも体が邪魔で離したとも思えない。充分に書くスペースがある。

「そうだろ。急いでる時にわざわざ開けるのは不自然。

何か意図してるとしてもダイイングメッセージは伝わらなければ意味がない。

未だに分からないとなると意図してないことになる。だから…… 」

私の探偵としての能力を測っているのかそこでストップ。

「えっと…… だからその…… 」

もう少しヒントがないと無理だって。

「ほら早くしな! もうイライラするね」

せっかちなお婆さんに急かされて強制的に閃く。


「そうか! 分かりました。これは真犯人が書いたものだったんですね」

今まですべて被害者が残したものだとばかり。

だが良く考えればこんなに目立つ血文字をそのままにするのは不自然だ。

「正解だよ。だとしたら…… 」

「『山』の後を書こうとしたがそこで絶命。

雑見は『山』の後を書こうとしただけで『ドスグロ』は真犯人が別に加えたもの」

「あーあ。もう美味しいところを取らないでおくれよまったく」

一言文句を垂れてから満足そうに笑う。

さすがは小駒さん。頼りになる。

これでダイイングメッセージの謎が解けそうだ。


「それで何て書こうとしたんですかね? 」

「漢字だろうけど私には思い当たる節はないよ」

そう。これ以上は被害者にしか分からないこと。

生き返らせれば楽だろうが生憎そんなシステムになってない。

「犯人に関することでしょうか? 」

「ああ、単純なものだよ。名前とかね」

年の功はここまでか。仕方がない後は自力で考えるとしよう。


「ちなみになぜ犯人は消そうとしなかったんですかね」

最大の疑問。これが真犯人の工作だとしても消せば済むのに逆に付け加える暴挙。

「私に全部聞くのかい? まったくとんだ探偵さんだ」

白い目で見られる。

「ははは…… 解説お願いします」

「最初は消そうとしたんだろ。でも消す時間がなかった。

たぶん血が固まってしまったんだよ。そこで犯人は気づいた。

もうあまり時間がない状況だったから仕方なく足した」

「ちょっと待って。固まってるんですよね? 不可能では…… 」

「それは簡単さ。自分の血を使ったんだ」

小駒さんの見立てが正しければ真犯人は大胆にも決定的証拠を残したことになる。


                   続く

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