死角
三〇三号室。第二の被害者ミサの部屋。
相棒に再度確認する。
「なあ本当にすべて調べたのか? 」
事件が発生する度に現場検証を相棒に依頼。
仕事ぶりは評価するがぼうっとしてるので手を抜いてるように見える。
もう少し真剣に取り組む姿勢を見せると説得力が増すのだが。
無理な注文だと分かってるがこういう時ぐらい頼むよ。
「ああ、もちろん調べたよ。どの現場も密室だったし凶器は壺だった。
遺体もなるべく動かさないように注意してる」
以外にも仕事をきっちりこなす相棒。
「全部見たのか? 」
「いやそれは…… 見えるとこだけ」
「ちょっと待て! だったら何か仕掛けがあっても気づけない。そうだな? 」
ついつい相棒を追い詰める形に。
これには狙いがある。相棒を使ってもう一度あの奇跡を再現するつもりだ。
「僕はきちんとやったよ」
「そんなことは聞いてないだろ? 調べ切れてないところがあると言ってるんだ」
「やったんだって! 」
都合が悪くなると大声を上げる。追い詰められた時の悪い癖。
むくれて後ずさりし逃げるように距離をとる。それこそ遺体を通り越して。
子供じゃないんだからまったく。
真犯人が相棒のように分かりやすい反応をしてくれると楽なんだけどな。
取り敢えず壁を探ってみる。
まさかとは思うけど何か仕掛けがあったとしたら……
ガイドさんの時は偶然だった。ついバランスを崩し、絵に触れたのがキッカケ。
「特にこの不気味な絵の部分が怪しい。これは一体何だろうな?
後でガイドさんにでも聞いてみるか」
「どうしたの下手な芝居して。しかも棒読みだし」
相棒が興味を示す。これでいい。
「うん。取っ手? まさかこれは…… 隣へと繋がる扉? 」
「おいおい! どうしたんだってば? 」
「まさかここの鍵を使えば開くのでは…… 」
ガチャリ
防犯の為に一応鍵を掛けていた。その鍵が開く。
そして取っ手を押すと新たな世界が。
四号室へと繋がっていた。
「これは大発見だ! 」
大げさに分かりやすく秘密の抜け穴の存在を示す。
これで相棒も閃くだろう。
「うん? あれどこに行った? 」
相棒が騒ぎ出す。悪ふざけのつもりか?
「何言ってるんだ! 扉を開けたろ。見えなかったのか? 」
「いやここからだと壁が死角になってて見えないんだ。だからよく分からなくて」
それは要するに部屋の中央まで行かなければ見えない。そう言う構造。
もちろん無理すれば見えないこともないがそこまでの余裕は第一発見者にはない。
このイリュージョンを完成させるには発見時に第一発見者を近づかせないこと。
だからこそ従業員であるガイドさんが選ばれた。
責任者のガイドさんが第一発見者になるのはある程度予想できる。
もし違ってもあの料理人さん。どの道余計なことはしないだろう。
ドアの近くで立ち尽すか腰を抜かして後ずさりをするかのどれか。
だから真犯人はあまりに有り得ないことを実行。すべてはこのトリックの為に。
もしオーナーと真犯人が繋がっていればそう仕向けることも不可能ではない。
相棒は私の演技を声だけで堪能していたようで改めて隠し扉の説明をする。
二度手間で面倒でしかない。
「どうしたの? まさかこれがトリック? 」
「ああイリュージョンさ。まあこの場合マジシャンは必要ないけどね」
ついに不可能殺人解明へ大きく前進した。
これですべての事件が一つに繋がる。決定的な秘密の抜け道。
誰もが想像もしなかったであろう大胆不敵なトリック。
ただまだ完全じゃない。
さあいい感じだ。この勢いのまま第三、第四の現場へ。
相棒を引き連れて第三の現場へ。
確認するべきポイントは三つ。
被害者の遺体の位置。
やはりベットではなく入ってすぐのところ。
遺体が道を塞いでいる。
もちろん隙間があるので通り抜けることも可能。
ただ遺体を越えて先に進もうとは普通思わない。
思う思わないの前に殺人現場に近づこうとする者はいない。
仮に誰が第一発見者であってもそれは変わらない。
我々も探偵であるから現場保存を最優先する。
明らかに息の無い死体をどうにかすることもない。
もしナイフが刺さっていたら?
助かるかもと錯覚することもある。
そうでなくても取り敢えずナイフを抜いてあげようとするだろう。
明らかに死んでいると分かっている状況でなければ助けようとするのが人情。
いや当然のこと。前日まで一緒に過ごした仲間。助けようとするのは自然。
逆に言えば助けようとしないのは確実に死んでいると確信してる犯人。
続いて二つ目……
続く




