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第三の現場

「本当に黒木さん居ませんね。どうしたんでしょう? 」

詐欺グループの一員とは言えガイドさんにとっては客の一人。

そんなに心配することないのに。あんな奴放っておけばいいさ。

世話を焼き過ぎ。そんなんだから第一発見者にされてしまうんだ。

おっと…… つい感情的になってしまう。冷静に冷静に。

だが四度も第一発見者になるのはどう考えても異常。わざと?

真犯人によって仕立て上げられた可能性もある。


「ねえ探偵さん? 」

彼女はすっかり私に頼り切っており話を聞こうと瞳を輝かす。

ああその大きな瞳に吸い込まれそうで怖い。

「あれほど部屋で待機してろと言ったのにまったく黒木の奴め!

抜け出したとなるとますます怪しい」

「まさか黒木さんが犯人? 」

驚いた表情を見せるガイドさん。今のところ黒木が第一容疑者だろう。

何と言っても密室だと思われた現場に隠し扉が用意されていたのだから。

これでありとあらゆる前提が崩れた。黒木が真犯人ならすべて辻褄があう。


「あのもう一度聞きますがこの隠し扉の存在を知らなかったんですよね? 」

「はい。私も田中さんも気づく暇などありません」

「そうですか。分かりました」

隠し扉発見時にはもう黒木は姿を消していた。

仮に彼が真犯人だとしてもこちらの動きを悟られることはないだろう。

取り敢えず秘密の抜け穴から元の世界に戻る。

こうして小さな冒険から戻って来た我々は静かに部屋を後にする。


続いて第三の現場へ。

三〇六号室。雑見の部屋。

ドンドン

ドンドン

やはり簡単には開かないか。

「何してるんですか探偵さん? 」

「念のための確認です。鍵が掛ってるか? 強引に開けられないか? 」

ここも前の二件同様に鍵がかけられており出入りが出来ないようになっている。


遺体もそのまま。今回は覆いを剥いで遺体を確認する必要がある。

ミサさんの時とは状況が異なりどうしても剥ぐ必要がある。

それにはダイイングメッセージの存在が大きい。

『ドスグロ山』で力尽きたようだが雑見は我々に何と残したかったのか?

さすがに『ドスグロ山』では意味不明。

解明が待たれるが私も相棒もその手のことに明るくない。


立ち入り禁止。

勝手に入られては困るから。警察が来るまでは立ち入り禁止に。

鍵も犯行当時のままで机の上に置いてある。

仕方なく彼女にマスターキーで開けてもらう。

ロック解除。

「お邪魔します」

さあ中はどうなってるのか?

夏ではないので悪臭が漂うほどでもなく鼻にハンカチを当てればどうにかなる。

うん? 鼻がおかしくなったかな。ちっとも臭いを感じない。

「すみませんちょっと…… 」

ガイドさんはやはりダメらしい。

とは言えこの臭いは強烈で消臭スプレーでもどうすることも出来ない。

ただ今のところ自分は臭いを感じられないが。


遺体の確認。

絶命した鑑定士が恨めしそうに睨んでいる。

これでは成仏できそうにない。

「きゃああ! 」

ガイドさんが大声を上げて後退りをしようとする。

「大丈夫。生きてはいないさ」

「何か睨んでるみたいな気がして…… 」

やはり彼女には荷が重すぎたか。

四度も第一発見者になったから現場慣れしたと勝手にそう考えていた。

だがそれは思い込みに過ぎなかったのかもしれない。

いくらお客様のお世話をするとは言えこの非常事態。思っても見なかったこと。

ここはもう相棒と交代した方が賢明だろう。


「大丈夫? 無理しないで。今相棒と…… 」

「心配ありません。続けましょう」

気丈に振る舞う彼女に好感が持てる。

「よしだったらまず隠し扉の類があるか調べよう」

三号室と同様動物の絵がある。これは川を泳ぐ鴨?

絵の周りを探ってみると案の定取っ手が。

だが今回は三号室のように開くことはなかった。


「おかしいな。どうやら鍵が掛ってるみたい」

「ちょっと待ってください。それではやはりここは密室だと? 」

「いやそうとは限らない。その鍵を貸してくれないか」

「これですか? 」

机の上にある鍵を取ってもらう。


鴨の絵で隠れた取っ手の下を探り鍵穴に差し込む。

ロックを解除。取っ手の部分を押して隣の部屋へ。

どうやらロックされていたようだ。

ここはもうこれくらいでいいだろう。

六号室を後にする。


続いて第四の被害者の千田の部屋へ。


                 続く

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