表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/122

慰安旅行

咳ばらいを三度し語りだす龍牙。

「もう二年前になりますかね。別に色仕掛けでついて行ったのではありません。

ただ強引に勧誘するものだからつい。よくあることです。

あの場所にいたのは亡くなった三人と黒木だけ。

黒木が強引に迫るものだから断り切れずに白い壺を買う羽目に」

「おいくらで? 」

黒木たちがどれだけ吹っ掛けたのか気になる。

「三十万です。でもお金がなくてカードで支払いました」

「三十万? いくら何でも高すぎやしませんか。三十万ですよ? 」

「あの時は高いとかよりもいかにして無事に切り抜けるかしか考えていなかった」


「それで…… 本物だったんですか? 」

壺の価値が本物であればまだちょっと高い買い物した程度。

だがもしこれが偽物なら無価値なものを大金を払って掴まされたことになる。

「はい鑑定士さんが太鼓判を押してくれましたからね」

「その鑑定士に文句を言いに行って派手にやり合ったって聞いてますが」

「お恥ずかしい。鑑定士の方もどうやら彼らの仲間だったようですね。

そのことに気付いていれば騙されずに済んだのに…… ああ脱線しましたね。

壺の本当の価値は分かりません。あの日の帰りに割ってしまいましたから」

ただでさえ高い壺を無理矢理買わされてるのにその壺を壊すとはついていない。

これが偶然なら何てツキのない男となるが……


「それでどうやって偽物だと気づいたと? 」

物がなければ確認のしようがない。

「はい。同じような被害にあった人をネットで見つけたんです。

その人の話では偽物を掴ませ証拠隠滅に壺を壊すと。だから私の時もそうかなと。

その後同様の被害者が何人も現れ話を聞くことに。

壺も女性も手口はどうやら同じ。

これは皆で団結し訴えようと弁護士の協力を得て犯罪被害者の会を設立しました。

私はその副代表です」

ついに龍牙は認める。


「では奈良さんもそのお仲間? 」

二人は親子でも兄弟でもなくタイプもまるっきり違う。

そんな二人が仲良くなるのはやはりこのような会を通じてだろう。

「まあそうですね…… 」

あっさりと奈良も仲間だと暴露する。

やはり龍牙を突っつくのが手っ取り早い。


「その言い方だと他にもいますね」

「ええっと…… あのお婆さんもそうです。息子だかお爺さんだかが騙されたと。

何度か見かけた覚えがあります。それからマジシャンの方もそうだと聞きました。

それだけじゃない。今度の旅行は実は我々被害者の苦しみを癒す為の慰安旅行。

参加者のほとんどが彼らの被害者になる訳です」

龍牙は淡々と衝撃的事実を語るものだからまるでサイコパス。

やはりどこか狂っているのだろう。色相が悪化してるに違いない。

これはもはや執行対象…… などとふざけたくもなる。


これ以上は話を聞けなかった。

少なくてもこのバス旅はただ偶然集まったのではなく意図されたことになる。

それが真犯人によるものなのは明らか。

だとすればこの後の殺人計画も当然練られているのだろう。

果たして真犯人はどう出てくるのか。


「最後に一つよろしいですか? 」

確認を取る。

「どうぞ。答えられる範囲で」

「壺は偽物だと? 」

「たぶんそうなんでしょう。まったく酷いことをする連中だ」

「では彼らを恨んでいると? 」

「当然ですよ。鑑定士を見つけて怒鳴り込んだんですからね」

「では騙されたことを根に持って殺そうとしたと? 」

「いえそれは違います。いくら何でも殺そうとは思いません。

ただ返してもらえるなら返してもらいたい。ただそれだけです」

合法的に取り返したいだけだと潔白を主張。


「ではあなたは殺すほどは恨んでいないと? 」

「だから何度もそう言ってるでしょう! 信じてくださいよ。私は何もしてない」

一連の殺人を完全否定する。

「分かりました。信じてみます。それよりも真犯人に心当たりありませんか? 」

龍牙は恨みこそあれど人を殺すような愚かしい真似はしないと。

それは彼の性格によるものなのか。この程度では誰も人を殺すことはないのか。

「それもどうかな。会の皆さんは恨んでいますがさすがに殺人を犯すまでは。

私も彼らも殺すほど恨んではいない…… 

いや待てよ。彼らに殺されたと叫んでいた遺族の方もいたとかいなかったとか」

龍牙は詳しい話を聞いた訳ではないと主張する。

これは犯人を庇っている可能性が高い。

聞き込みを終え黒木と千田の二人を除いた全員を食堂に集める。


さあ最後の夜。

今夜は何としても連続殺人を阻止しなければ。


                  続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ