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絞られた容疑者

マジシャンが指摘するようにこの事件の容疑者は絞られる。

密室でなければ全員が疑わしいが密室であれば鍵を手に入れられる者が真犯人。

真犯人なら鍵の複製も当然できる訳だ。

情けないことに指摘されるまで気付かなかった。


「やっぱり黒木だろうね。黒木が怪しいよ」

お婆さんはどうしても黒木を犯人にしたいらしい。

そんな誘導に引っかかるほど私は甘くない。

「しかし密室はトリックかもしれない。安易に黒木さんを疑うのは危険では? 」

可能性が捨てきれずにどうしても大掛かりなトリックがあると考えてしまう。

探偵の性みたいなもの。そんな単純であって欲しくないと願う。

「そんな大掛かりなトリックなんてあるもんか! 黒木が犯人に決まりさ」

お婆さんが断定する。


「どうしても黒木さんにしたいようですが山田さんだって怪しい。違いますか?」

どちらかと言えば山田さんの方が簡単だ。黒木には実行不可能だった恐れがある。

「いいから手を動かしな! 」

お婆さんが話を遮る。都合が悪くなるとすぐこれだ。

「第三の事件で山田さんが犯人ではないと分かった以上残った黒木が真犯人さ。

私だって消去法で選んだだけで他意はないさ。この小駒さんを信じな! 」

三つの事件が一人によるものならばそうだが果たしてどうだろう?

どうもお婆さんは黒木を目の敵にしている。

確かに悪人でどうしようもない奴だがそれで犯人ではいくら何でも。

山田さんが犯人ではない確固たる証拠もない。

現段階では情報が不足しており誰とは断定できない。

それは黒木であろうと山田さんであろうと他の誰かであろうと。


「やはり私も彼が怪しいかと思います」

マジシャンも黒木が犯人だと睨んでいる。

二人はどう言う訳か黒木犯人説を強く推している。不自然なぐらいに。

お婆さんは見かけの印象で決めている気が。

マジシャンは鍵のトリックを当てたものだから気を良くし調子に乗って。

自分だってもう少し時間があれば鍵の秘密に辿り着けていただろう。

偶然とはいえ部屋を間違えた訳だから。


屋敷の後ろに回る。

「危ないですよ探偵さん! 」

人が普段立ち入らないので非常に危険。

すぐに崖になっていてちょっとでも足を踏み外せば滑落する危険性がある。

「お婆さんももう戻りましょう」

マジシャンが危険を嗅ぎ分ける。

もし気付かなければ今頃崖下に転落していたであろう。

そう言う意味では命の恩人。

一周することなく戻ることに。


「そうだ…… 二人にお聞きしますが被害者たちのスペアキー作ってませんよね?

あれば密室関係なく殺せますからね」

二人にプレッシャーを掛ける。

「そんなつまらない真似するかい! あったらそいつが犯人さ! 違うかい?

言い逃れ出来ないよ」

お婆さんは鼻で笑う。

「スペアキーは反則でしょう。ただガイドがマスターキーをお持ちのようですが」

マジシャンもスペアキーの存在をを否定する。

天候も悪いのでホテルの周りを見て回っただけで探索終了。

ホテルへ戻る。


「どうでしたか? 」

ガイドさんは外の様子をえらく気にかけている。何かに怯えているかのように。

何もありませんと言うと安心したのか胸を撫で下ろす。

三つに分かれたが特に収穫なし。

ただの時間の無駄となってしまった。

だがこれでいい。時間潰しが出来ればいいのだ。

明朝までの辛抱。もう無理する必要はないさ。

今籠っている二人が狙われる可能性が高い。

即ち黒木と販売員の千田。


相棒から話を聞く。

「不審な人も物もなかったよ」

「不審な行動を取る者はどうだ? 」

「それも別に。二人はいつも通り。ただ知り合って間もないから分からないけど」

身も蓋もないことを言う。

「分かった。引き続き頼む」

相棒はポンコツだが鋭い観察眼がある。

私などよりよほど探偵向きで優れてる。ただ煽てると調子に乗るから厳しくする。

出来たらもう少し他者ともコミュニケーション取れるといいがその辺りは壊滅的。

私も人のことは言えないが。


「どうするの? 」

「少し寝るわ。夕食には起こしてくれ」

ベットで一休み。

明朝には助けが来る。それまで徹夜で警戒に当たるつもりだ。

だがさすがに一睡もしないと頭がフラフラに。それでは使いものにならない。

今のうちに寝ておくのがプロ。三件とも夜遅くに発生してるのだから。

おやすみなさい。

犯人は必ず今夜行動を起こすはずだ。


                  続く

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