懺悔の時間
相変わらず外は雨が降り続いている。
皆殺しになるまで閉じ込める気でいるかのように。
警察のヘリもこの天気では無理だろう。
土砂崩れによる通行止めもまだ解除されていない。
いつになるかまったく分からないが希望を失ってはいけない。
大丈夫。必ず無事に帰れるさ。
今はただそう信じるしかない。
食糧はどうにか一週間分はある。
さあヘリが先か救助隊が先か?
その時には我々は果たして何人生き残ってられるか?
食堂にて。もうレストランなどとシャレるほどの余裕はない。
「アリバイのある方は? 」
挙手制を採用。
もうプライバシーだとか過去だとか言ってる時ではない。
早くしなければ。一日でも早い解決が求められる。
ただ必ずしも真犯人である必要はない。
疑わしく否定できない者に押し付ける。
この際だから犯人役を被ってもらうつもりで話を聞く。
はっきり言ってどう考えてもこの密室は難問だ。
一日や二日でどうにかなるものではない。
「そんなのある訳がない! 」
奈良がそう叫ぶと龍牙が同意。
この二人の関係は良くできている。いや出来過ぎな気がする。
まるで演じているかのように庇い合ってる。
片方は臆病でもう片方は冷静。
おかしい。何て怪しのだろう。
アリバイはなかった。
それも当然のこと。深夜ではアリバイも何もない。
結局は愚問なのだ。それでも聞いてるのは一人でも排除できればなと思うから。
「いい加減にしてくれ! こっちはもう限界だ」
黒木が吠える。それに続くようにして皆が騒ぎ出す。
「そうだ。もう放っておいてくれよ」
販売員は何だか元気がない。震えたまま突っ伏す。
お婆さんとマジシャンはただ黙っている。
「心当たりのある者は挙手お願いします」
今回の連続殺人事件のターゲットになりうる者を探るが……
誰も手を挙げない。どうやら指摘するまでシラを切るつもりらしい。
「黒木さん。失礼ですが狙われてますよね」
根拠もなく言ってるのではない。
被害者たちの仲間だったであろう黒木と販売員の男はすでにマーク済み。
もしまだ続くとすればそのターゲットは彼らに違いない。
「俺…… 俺が? まさか冗談だろ? ははは…… 」
豪快に笑うが震えが治まる気配はない。
「いいんです。今さら取り繕っても意味がありません」
時間がもったいない。包み隠さずに告白してもらえると助かる。
「黒木さん。話してください。何もかもすべて話すんだ黒木! 」
強引に迫る。
懺悔の時間だよ! ちょっと古いか……
「分かったよ。仕方ないな」
観念したらしい。
「俺たちは一般的に言うところの詐欺師だ。だからお客から恨まれても当然さ」
多くの人からお金をだまし取ったことを認めた。
詐欺師は決して己の罪を認めようとしないもの。
言い逃れるだけ言い逃れようとする。
だが黒木は違った。まだ人間の心を持っているようだ。
「これでいいだろ。俺は認めた。以上だ」
ここまでしたのには閉ざされた山で次々に仲間が殺され、堪えたからだろう。
特に愛人であるミサを失ったのが大きい。
「まさか壺を売りつけてたなんてことありませんよね? 」
「そうだな。何年か前にチームを組んで派手にやっていた覚えがある。
だがそれがどうした? これくらいどってことないだろ? 」
開き直る悪党。その態度が気に喰わない。
「ではもう一人のあなたもきちんと答えてくれますよね? 」
販売員の方に視線を送る。
「ふざけるな! 巻き込むなよ。このおっさんも今までの奴も知るもんか! 」
「黒木さん! 」
「さあな。俺は口をつぐむぜ」
仲間は売らないと黒木は格好つけるが無駄な抵抗。
「往生際が悪いですよ千田さん! 」
「だから関係ないって! 」
まだただの観光客を装うらしい。無理がある。
詐欺みたいに宝石を売っていたではないか。
彼ほど分かりやすい者はいない。
彼らが今回の主催者と考えるのが妥当だろう。
人数までは分からないがそれも正直に白状してもらえばいいのだ。
「もう諦めてください。今改心すれば許してもらえるかもしれないんですよ」
無理だとは分かっている。そんなことで逃れられるほど甘くないだろう。
それだけ罪深いことを過去にしている。
「うるさい! いい加減にしろ! 何を根拠に? 」
この期に及んで言い逃れができると思ってるらしい。
今回の連続殺人の動機が彼らの詐欺行為にあるに違いない。
「私は関係ない。関係…… 」
震えが止まらずにコーヒーカップを割ってしまう。
もう冷静では居られない。限界が近い。
「では詳しい話を包み隠さずにお話しください」
販売員は頑なに否定していたが堪えきれずに語り始めた。
続く




