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第三の被害者

相棒を残し廊下を歩き回る。

もはや日課になってしまった。

こうすることで多少の歯止めにはなるだろう。

さすがにもう殺人は起こらないと思うが二度あることは三度あると言うしな。

異常がないか一部屋ずつ確認。

もちろん寝てる場合がほとんど。

起こしては悪いので反応がなければロックされてることを確認して次の部屋へ。


三〇二号室。

ここでは山田さんが閉じ込められている。

バリケードもあり開けるのは困難。さすがに強行突破は不可能と思われる。

もし事件が発生しても彼が疑われることはない。

「はい。どうしましたこんな遅くに? 」

ドアをノックすると反応があった。まだ寝てないようだ。

「お困りのことはありませんか? 」

まだ犯人と確定してもないのに閉じ込めてしまった。悪いことしたと反省してる。

だからこそ最低限のことをしてあげたい。

眠れないと愚痴る山田さん。

ある意味私も同じなんですけどね。ははは…… もう寝たいよ。

「今日一日の辛抱です。頑張りましょう」

励ましの言葉を贈る。

今日と言ってもあと少しで終わる。ただここで気を抜いては犯人の思う壺。

うわ…… 壺。これは禁句だった。思ってもいけない不快ワード。


声を張り上げドア越しに話を続ける。

「お食事は? お腹は空いてませんか? 」

無理矢理閉じ込めてしまった手前少しでも力に。それが当然。

仮に犯人だったとしても人間。その辺りの配慮は必要。

「ええ言われてみれば。ただもう遅いですし。用意してもらえるんですか? 」

明日以降のこと。特に食事が気になるらしい。

「それはもちろん。持って行くよう手配します」

「ああ良かった。それだけが心配だったんです」

「トイレは? お風呂は? 」

「大丈夫です。部屋のトイレもありますし二、三日入らなくても問題ありません」

うん。これなら困らないだろう。よし完璧だ。


「それから気になったことやおかしな点はありませんか? 」

「さあ…… 思い当たりませんね。ところであなた本当に探偵さん? 」

これと言って不審な点はないそうだ。

「当たり前じゃないですか。他に誰が? 」

「いえ申し訳ない。疑ってる訳では…… 見えないものですからつい気になって」

全員が疑心暗鬼になっている。閉じ込められる体験をした山田さんは特にだろう。


三○四号室。

山田さんの次は本命の黒木。

ドアを叩くが応答がない。

まさかもう……

大きなイビキが聞こえて来た。電気も点けっぱなしで寝てる。もったいないなあ。

よし生存確認。次に行こう。

こうして一部屋ずつ丁寧に見回りをする。

ノックしても反応がなかったのはお婆さんとマジシャン。

他の者は何かしらの反応が返って来た。

日課の見回りを終え部屋に戻る。


「どうだった? 」

「ああ今のところ問題ない。ただ二人ほど反応がない。

ただこの時間だ。もう寝ていても不思議はないさ」

特にお婆さんは早寝早起きが基本。問題ないだろう。

不安はあるもののずっと張り付いてる訳にも行かないからな。

さあやることはやったしもう寝よう。

結局床に就いたのは二時過ぎ。

メモを読み返してるうちに眠りにつく。


翌朝。

きゃああ!

またしても悲鳴によって起こされる。

これで三度目だ。

相棒に部屋で待機するように指示してから悲鳴のした方へ走る。

はあはあ

はあはあ

慌てたせいで親指を角にぶつけてしまった。

かなりの痛みが走る。それを堪えて現場へ。

三〇六号室。

悲鳴はここからのようで人が集まっている。

と言うことは鑑定士の部屋?

「どうしました? 何が…… 」

「探偵さん早く来てください。もうダメ! 」

急いで中へ。


倒れる寸前のガイドを受け止める。

「どうしたんですか? 」

「殺され…… て…… お客様が亡くなってます」

二度あることは三度ある。

それを実践するかのように鑑定士の無残な姿が。

「どうしてこんなことに? 」

殺されるはずがない。

鍵を掛け誰も中に入れなければ殺されることはない。

だが三人目の犠牲者となってしまった。

これは失態。紛れもない我々の失態。

甘い考えは捨てるべきだった。


撲殺体が横たわってる。

状況から言って後ろから後頭部を鈍器のようなもので殴られたに違いない。

その凶器はなぜか壺。あるはずもないのに壺の破片が散乱している。

男はもう息をしておらず冷たくなっている。

死後何時間か経過してるのは間違いない。

詳しいことは相棒に譲るとして。

話を聞くことに。


                    続く

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