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長期戦

残るは黒木と従業員の二人。

黒木からはこれ以上聞く必要もないだろうし教えてもくれないだろう。

よしまずは料理人から。


「探偵さん」

一人ずつと言ったのに二人一緒に入って来る。

「たた…… 大変です! 」

血相を変えた料理人と早口で聞き取りずらいガイドさん。

「落ち着いて二人とも。一体どうしたと? 」

「それが迎えのバスが来られないそうです」

時刻は二時半過ぎ。

三十分もすれば迎えが来るはずだった。

だが天候が悪化し昼前からドスグロ山を覆う黒い雲が。

外はまるで夜のように暗く雷雨となっている。


「何だって? 」

緊急事態発生。

「だったら警察のヘリは? 」

「それがまだ天候が安定しないので出せないそうです」

「そんな。もうどっちでもいいから歩いてくれば? 」

実際我々は登って来た。だから不可能ではないはず。

「いえそれが地元の判断では難しいともう少し待つように指示がありました」

大雨の影響で土砂崩れが発生したらしい。

それにより登山道の一部が土砂で埋まり通行止めとなった。

これで下からも上からも救出不可能。

まったく警察は何をやってるんだ。昨日から要請してるのに。


「おかしくないか? まるで何者かの意志が働いてるような絶妙なタイミング」

二人の態度もおかしかった。

じっと二人を見る。

「ごめんなさい! 」

料理人が頭を下げる。

「実はお客様が亡くなったことは伏せて要請したんです。閉じ込められたとだけ」

「おいおい冗談だろ? なぜそんな大事なことを? 」

「オーナーからの指示です。それ以上はちょっと…… 」

やはり従業員の二人は何か隠してるようだ。

「オーナーってまさか? 」

「分かりません。どうしよう…… 」

動揺するガイドに寄り添う料理人。


ここで言うところのオーナーとはこの舞台を用意した真犯人に違いない。

オーナーは悪い噂が立たないように穏便に済ますため指示。そう考えるのが普通。

だが実際は事件の発覚を遅らせることと我々を閉じ込める為だった。

彼女たちから聞いた時にその辺のことをしっかり確認しておくべきだった。

すべてを彼女たちに任せたのが仇となった。

手となり足となり動いてくれる協力者の二人を信用し過ぎてしまった。

彼女らにとってはオーナーの命令が絶対なのは分かり切ったことではないか。

雇い主と探偵では比べるまでもない。

くそ痛恨のミスだ。

一体私は何をやっていた?


「急いでもう一度…… いや私が通報する」

これ以上人任せにはできない。

彼女たちを説得して警察に連絡を取る。

「閉じ込められてるってね。かわいそうに。三日分ぐらいは食糧あるんでしょう。

だったら堪えてくれや。こっちも手が足りんのでな」

呑気な警察。緊張感が感じられない。


「お願いです。早く来てください! 」

「ははは…… よくあることだから我慢してね。うん? 人が死んだ?

しかも殺された? 二人も? 」

慌てた様子。どうやらようやくドスグロ山で何が起きてるか理解したらしい。

「早く来てください。まだ人が殺される恐れがある」

「分かった。待ってろ! 」

天気が回復次第ヘリを送るそうだ。

土砂崩れで道が塞がってるのでヘリ以外は不可能。

外はどんどん雷雲が発達している。

さすがはドスグロ山。これは長期戦を覚悟しておかなければ。


もう一泊することになりそうだ。これは大きな誤算。

ピクニックなら嬉しい誤算。

海外旅行でも大歓迎。

あちらの都合なら金もかからない。補償もあるはずだ。

だがこれはどうだろう?

補償どころか命の保障もない。

ああやってられない。

登る山を間違えなければこんな大事件に巻き込まれずに済んだのに。

いくら探偵でも依頼料もなしにやる気なんかでない。

せめて事件解決に報奨金でもあればなあ。

たぶん感謝状で済ますんだろうな。


ついにやる気を失った探偵。

ドスグロ山に閉じ込められた者たちの最後の希望は失われる。

もういいんだ。大人しく寝てよ。

部屋に籠りふて寝する。


                  続く

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