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ドスグロ山の雷人

ついに第二の事件が勃発。

被害者は昨夜見かけた若作りの綺麗な女性。

「昨日に続き起きてしまいした。もはや連続殺人事件と断定していいでしょう。

凶器が壺だと言うことですが何か事情を知っている者は名乗り出てください。

何でも結構です。どうかご協力ください」

丁寧にお願いをする。

ここで変に高圧的な態度を取れば協力は得られない。

犯人以外は皆協力者。そう言う意識が大切。

ただそう簡単には名乗り出ない。

最初の一人が動かなければ静観するつもりらしい。

やはりこうなるか。

これが日本人の良いところでもあり悪いところでもある。

ただ積極性に欠けるのにもそれなりの理由があるのだろうが。


「実は昨日のこと…… なんだけど」

メガネの男は顔面蒼白。震えが止まらないのか聞き取りずらい。

「おい待て! 何を言ってるんだ! 」

昨日見かけた二人組。

立場は若い方が上に見える。

「どうしました? 何でも構いませんよ」

「見たって言うんですよ」

震える男を説得してる様子。

両方ともおかしい。何をそんなに怯えてるのか。

「何を見たと? 」

先を促す。


「化け物を見たって言うんだ。落ち着かせたが今になって再発しちまった」

化け物? ここで化け物? 見たからって何だと言うんだ?

「殺される! 殺される! ドスグロ山の雷人に殺される! 」

まるで狂ったかのように繰り返すメガネの男。常軌を逸してる。

「落ち着いてください。二人はどのような関係で? 」

「このおっさんとはバスで仲良くなって一緒に行動するように。昨日も言ったろ」

と言うことは一昨日知り合った。

「待ってください。今メモを取りますんで」

急いで手帳をめくる。

本来ならこれは助手の仕事。ただ助手は隣の山にいる。

一っ跳びすればすぐだが生憎私は人間。不可能だ。

それはここにいる者全員そう。だから化け物と言われてもいまいちピンとこない。


「それでどの辺で」

「分からない。化け物がうごめいたんだ」

メガネの男は慌てふためく。

「これを」

料理人が水を渡しどうにか落ち着いた。

「見たんですね? 」

「ああ見えたんだ」

辺りを見回す。

お婆さんと目が合う。

「きっとそれはあれだよ。あれ…… 」

お婆さんは懸命に思い出そうとしてる。

「この山に伝わる伝説さ」

「伝説? 」

「そう。ドスグロ山の雷人! 」

「何ですかそれ? 」

「あんた聞いてないのかい? ほらガイドさん教えておやり」

いつの間にか場を支配しようとするお婆さん。


「はい。この山に伝わる伝説です。ドスグロ山は人間を好みません。

近づく者を追い返そうと雨を降らすそうです。

恐ろしいことに近づく者を追い返すだけでなく山から逃れる者も帰さないとか」

地元民なら誰でも知っている伝説。

だから無闇やたらに近づいてはダメ。

特に雷人を呼び覚ますような真似は絶対に。特にバスや車は絶対に避けるべき。

徒歩であろう怒りに触れる場合もある。

それはもう賭けみたいなもので。

助かる唯一の方法は敬い恐れ大人しくしていること。

地元民は昔からそう教えられているからよっぽどのことがなければ近づかない。

今はヘリがあるのでそうなっても何とかなるらしいが。

ドスグロ山の雷人を起こしてはならない。

マンフットのように存在は確認されていない。

よく観光客の前に姿を見せると言うがそれも噂に過ぎない。

生きて山から戻って来た者は皆一様に口を塞ぐ。

そんな風に伝わっている。

ドスグロ山の雷人。


「ほら私らも行きのバスで雷雨にやられたろ」

そうだそうだと騒ぎ出す。

そう言えば私たちも洗礼を受けた気がする。

あれは近づくな早く帰れと言うことだったのか。

だったらここは違うと言ってくれよな。間違って登っちまったじゃないか。

冗談じゃないよ。その上事件にまで巻き込まれてやってられない。

「とにかくその化け物はドスグロ山の雷人だとそう言いたいんですね」

「ああ俺もそう思う」

若い方の男が同意する。

メガネの男はただ顔を振るだけ。

何だか良く分からないがこの連続怪死事件を化け物の仕業にしたいのだろう。


                  続く

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