言い逃れ
往生際の悪い真犯人はまだ言い逃れようとしている。
では直接対決と行きますか。
「山田さん。もういいじゃないですか? 誰もあなたを責めていない。
私も探偵とは言え警察ではない。いい加減自分の罪を認めて楽になりましょう。
これ以上あなたを追及するつもりはありません。私はあなたを救いたい」
追い込まれた山田さん。後は彼の告白を待つばかり。
それなのに雑見氏殺害のみを自供する作戦に出た。
これは一体どう言うつもりだ? 引き延ばしでもする気か?
仮に何らかの意図があって時間稼ぎをしているとしても無意味だ。
犯人を追い詰めた今、我々には時間がある。それもたっぷりと。
警察の到着を待ってるとしてもそれこそ決定的な証拠を掴まれて逮捕されるだけ。
山田さんは何を考えてるのだろう?
「山田さん? 」
「あの…… 実際黒木も殺してない。違いますか? 」
自供するつもりはサラサラないらしい。私は彼を買い被りすぎたようだ。
「山田さん。もう証拠は揃っているんですよ。ふざけてる場合ですか? 」
ふふふ……
不気味な笑みを浮かべ余裕を見せるが私には通用しない。
「では確認です。本当に一連の事件には関係ないと? 」
「うーん…… 」
山田さんはまだ言い逃れようと考えを巡らせている。
最後の悪足掻きといったところか。
「何度も言いますが雑見さんには悪いことをしたなと思います。
でも偽物を掴まされては誰だって怒り狂う。そうでしょう皆さん?
安くないお金でガラクタを買ったんですよ。もう悔しくて悔しくて」
上手く言い逃れたつもりだろうが私には滑稽にしか映らない。
「でしたら黒木さんを殺害しようとしたのはなぜですか? 」
黒木襲撃の矛盾をつく。
「それは…… 」
黙って下を向いてしまう。考えてなかったはずないだろうが明らかに無理がある。
その弱い動機では黒木を襲えない。突発的な犯行に黒木は無関係。
そもそも冷静になれば後悔はすれど再び襲おうとするだろうか?
「まさか気に喰わないからですか? 」
山田さんに助け舟を出す。だがこれはもちろん泥船だ。
乗れば確実に沈んでしまう。それが分かってるのかうんとは言わない。
「はっきりしてください! あなたは騙された恨みから突発的に襲ったと言った。
だがそれなら黒木さんは関係ない。どうなんです山田さん? 」
追及を緩めない。ここで言い逃れられたら彼の勝ちだ。
本当ならこれ以上彼を追い詰めたくはない。
でも認めようともせずにいつまでも言い逃れようとするから。
「ほら…… 部屋に籠ったり一人で勝手に逃げたり怪しいからつい…… 」
もう言い訳が破綻している。
「怖ければ籠りますよ。逃げ出したくもなりますよ。それが普通の感覚だ。
私は探偵ですからそんなことは言ってられない。でも黒木さんは違う。
ガイドさんたちだって責任があるから客の世話をする訳で。そうですよね? 」
「はいそれが私どもの務め」
「そうこの子の言う通り。それに私たちは恨まれる覚えがありませんから」
料理人の田中さんがズバッと言う。
だが恨みとは被害者が持つもので残念だが加害者には見当もつかないこともある。
いつ恨みを買われるか分からない。ただ殺されるほどなら自覚があるものだ。
記憶の奥に封印しようともそれは被害者には関係ないこと。
「ありがとうございます。
それから犯罪被害者の会の者は当然ながら恨みはあっても恨まれる覚えはない。
だから黒木さんたちみたいに震えずにただ見守っている。
残るは相棒。まあ奴は気にしないタイプ。逃げようよりも寝ていようが口癖です」
相棒が異常なのかはさておき逃げ出すようなタマではない。
「悪口言ってない? 」
「いいから黙ってろって。一応はフォローしてるんだから」
山田さんが雑見氏を殺害したのは紛れもない事実で決定的な証拠もある。
だからと言ってそれ以外は関知してないはあり得ない。
そもそもだったら誰が真犯人なのか?
通常、真犯人でなければ他を当たるがここは何と言っても閉ざされた山の中。
凶器は壺で密室殺人。
連続殺人であるならば真犯人は必ずいる。それは山田さんしかあり得ない。
「それで何が言いたいんです? 」
「途中になりましたね。犯人候補を集めるばかりに特殊な者を招いてしまった。
黒木さん以外誰も恐れていない状況。あなたも当然恐れてない。
龍牙さんはどうです? 」
「恥ずかしながら…… 今回はまったく。
普段なら幽霊だの伝説だのは滅法弱いんですが。被害者は奴らですから。
我々が出来ることは怖がる振りをし被害者たちを追い詰めることぐらいですから。
でも私は決して間違ってない。罪に問われますか探偵さん? 」
「いえ…… 本来連続殺人が起こればもっとパニックになってますよ。
山に閉じ込められてる訳ですから。相棒はあなたの演技に気づいてたようですが」
「ああだってオーバーだったから。普通はそんなに震えないでしょう? 」
「震えるよ木偶の坊! あんたが鈍感なだけだろ。まったく副会長には困ったね。
あっさり白状するんだから」
お婆さんは総意だと認める。
「山田さん。あなたは黒木さんが異常に見えたのでしょうね。
ですが私から見れば生き残りメンバーの冷静さの方が不気味に感じました。
感覚がマヒしてしまったのではありませんか? 」
「だからそれがどうした! 」
ついに我慢しきれなくなった山田さんが吠える。
続く




