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ミスリード

全裸体の謎が解明されようとしている。

小駒さんは騙された男の恨みだと考えているらしい。

果たしてそんなに単純なものだろうか?

田中さんは争った痕跡を隠蔽する為だと主張する。

それは私も考えたが……


「その辺のところはどうだ? 」

相棒に確認を取る。

「ううん。それはないんじゃないかな。シャワーを使った形跡がない。

たぶん一回も使ってないよこの人」

さすがは相棒。ここまで断定するなら恐らく間違いないのだろう。

後は警察の到着を待つだけ。相棒の見立ては彼らによって裏付けられるはず。

恐らくミサさんは二晩とも大浴場へ。

汗を掻くこともあっただろうがそれは隣の部屋で済ました。

そう考えるのが自然。

こうして田中さんの説は否定された。


「残念ながら違ったようですね」

「あら探偵さん。否定されるのがあらかじめ分かっていたみたいじゃないか。

私の考え方も彼女の推理もいい線行ってると思ったけどね。

まさか初めから知っていて最後に美味しいところを持って行こうって魂胆かい?

性格悪いよ。ほら木偶の坊も何か言ってやりな」

何かにつけ相棒に突っかかる困った小駒さん。

これでは相棒も我慢の限界か?

「へへへ…… 」

駄目だ。嬉しそう。喜怒哀楽が苦手な相棒は小駒さんのオモチャにされる。


「どうなんだい探偵さん? 」

「そんなこと言われると話しにくいな…… 」

小駒さんの強烈な追及に防戦一方。とりあえず様子を見ることに。


皆から熱い視線が注がれる。早くしてくれと言っているようだ。

小駒さんまでふざけて悪かったねと謝罪する始末。

よし今だ。探偵としてもう黙ってられない。

真実を語る時が来たようだ。だがその前に一つ確認することが。

真犯人に目を向けるとしきりに汗を拭いている。

焦っているなこれは。真相に迫ったと見ていい。

では披露しますか私の仮説を。恐らく間違っていないだろうが。

ただ確実ではない。慢心は真実を遠ざけてしまう。

慎重にも慎重に。


「お二人とも真犯人に踊らされてますよ。実は何も起きていなかったんです。

その証拠に血の跡がどこにもありません」

「いやだからそれはこの人が拭き取ったからでしょう? 」

小駒さんの指摘はもっとも。

「拭き取ってもルミノール反応が出ます。はっきり言えばもう逃れられません。

警察が来れば終わりなんです。真犯人もそのことを充分理解してるはず。

だから仮に田中さんの言う通りだとしてもそれはそれ。

真犯人の沈黙が不気味で追い詰めることを躊躇っていました。

ですが黒木さんを使い結果的に追い詰めてみても未だに大人しい。

何か切り札があるだろうと踏んだが何もない。

もうこれで充分。真犯人にはもう何も残されていない。

そうでしょう真犯人さん? あなたは一体どう言うつもりですか? 」


ふふふ……

ただ笑うだけで答えようとはしない。


「全裸体は真犯人によるフェイク。我々をミスリードする為の罠。

三号室で被害者と揉めその後隠蔽したかのように偽装したのです。

これこそが今回の全裸体の真相です」

「はあ? 無理がねえか? 」

さっきまで大人しくしていた黒木がキレ気味で反論する。

「なら婆さんの言うように騙された恨みでひん剥いたが正しいだろ?

ミサに何てことしやがるこの変態野郎! 俺の…… 俺のミサを返せ! 」

泣き出しそうな黒木に同情するアリ。

人間では誰も同情してくれないのでアリが涙を流す。


「黒木さんそれぐらいで。真犯人はどうしてもここで暴れたことにしたかった。

それはなぜだか分かりますか? 」

黒木が悪態を吐く。

小駒さんはぽかんとする。

田中さんは自分の推理が信じられなくなって項垂れる。

他の者はただ聞き役に徹する。


「ミサさんを全裸体にしたのにはミスリードさせる為。

あるいはセンセーショナルにすることによって皆の目を遺体の方に向けさせる為。

そんなところ。どうです真犯人さん? もう何もかも吐いて楽になりましょうよ。

あなたが黒木さんを襲ったと言う揺るがない事実もある。

時間を無駄にしたくない。これ以上はどうか私の手を煩わせないで。

認めてはくれませんか? そしてあなたの口から真実をお願いします 」


だが何一つ反応を示さない真犯人。

残念だ。もうすべてを白日の元にさらけ出すしかないらしい。

ここまで真犯人の良心に訴えかけ続けたのに。私の想いは結局届かなかった。

仕方がない。次の段階に移るとしよう。


                続く

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