お楽しみ
真犯人を目の前にしてなぜか罪の擦り付け合い。
すべての可能性を潰す過程で第一発見者のガイドさんに注目が集まる。
彼女の疑いを晴らそうとするも上手く行かずに失敗。逆に明後日な方向へ。
このままでは再び疑いの目が彼女に向けられることに。
黒木は唯一公正で公平なガイドさんを追い詰める。
「おいおい! よく考えてみろお前ら。第一発見者だぜ?
疑うのが当然だろ? 婆さんだってそう思うよな? 」
「ふん! 誰があんたに同意してやるものか! ふざけるんじゃないよ! 」
小駒さんの怒りは相当なもの。すべての元凶である黒木に味方するはずもない。
それは誰しも分かってること。黒木本人を除いては。
「おいお前ら…… 知らねえぞ。どうなっても知らねえからな! 」
黒木の指摘はもっともだが逆にだからこそ無関係だとも言える。
「黒木さん落ち着いて。もし彼女が本当に共犯者ならば第一発見者にはしません。
真犯人も馬鹿ではない。彼女から漏れる恐れもありますからね」
「逆にそう思わせるのが狙いだとも考えられるだろ探偵さんよ? 」
深読みの黒木はガイドさんに異常に固執している。
「それに料理人の田中さんも同様に犯人にも共犯にもなり得ません」
「なぜだ? 」
しつこい。自分にばかり疑いの目が向くものだから誰かに擦り付けたいのだろう。
「根本的にあり得ないんですよ」
「根本的にだと? 」
「はい。アリバイもありますし共犯にするつもりなら関係者を選ばない。
あれだけ動機のある者を招待したんです。
もし私ならその辺の無関係な者に依頼すると思います。
心理的にもあり得ない。共犯者にするほどのメリットが見当たらない」
彼女の元恋人は黒木たちの詐欺によって自ら命を絶った。
そのことを知る真犯人なら共犯者にはしないはず。
「いやメリットならマスターキーがあるじゃねえか! 」
「ですからそんなものはあらかじめ作っておけばいいだけ。
ただこれではトリックでも何でもないですけどね。
真犯人はそんなつまらないトリックを使ったのではありません。
では再び第一の事件に戻ります」
一旦ここで切り見回す。
「海老沢氏殺害は真犯人を招いたが為に殺されたのではありません。
寝ているところを襲われ逃げ惑う中で殺害された。
その際使用したのは二号室の鍵。一号室の鍵にもなっていますからね。
殺害可能なのは二号室の山田さん。
それから密会の約束を取り付けたミサさん。
黒木さんも知り得たでしょうね。
その他の龍牙さんも奈良さんも小駒さんもマジシャンも盗み聞きすれば可能。
ただミサさんが山田さんを誘惑したのもほぼ偶然。二人が意気投合した結果。
コントロール出来るはずがないんです。
出来るとすればそれはミサさんと深い仲で詐欺仲間の黒木さんのみ。
他はミサさんを脅迫でもしてない限り不可能。
部屋割りも適当でミサさんも制御不能では観客は指を咥えて見てるしかない。
ですが演者の方はいくらでも……
おっと第一の事件はここまでにしておきましょう」
お楽しみは最後までとっておこう。
探偵として出し惜しみしてるようで心苦しいが謎解きには適した順番がある。
これを誤れば真犯人を追い詰められずに反撃を喰らうことも。
一種の余裕でもあるのだが。
真犯人は目の前。もし暴れれば相棒が取り押さえることになっている。
警察もまだ。ここはゆっくり時間を使う時だ。
それに急ぎ過ぎてはせっかくの晴れ舞台が台無しになる。
せっかちは命取り。
第二の事件に移る。
全員三号室へ集まるように指示。のろのろと隣の隣の部屋へ。
「ええ第二の事件は三日目の早朝。被害者はミサさん。
恐らく夜遅くに殺害されたのでしょう。それでは詳しくお願いします」
もう一度ガイドさんに発見までの経緯を語ってもらう。
「お客様より早く起きるよう寝坊しないようにと五時半に目覚ましを。
ですがその日は私よりも先の田中さんの目覚ましで五時に。
起きてすぐ田中さんは皆さんの朝食作りにキッチンへ。
私は見回りに。そこで発見したのが例のメモ。
食堂のテーブルの上にミサさんからのメモが」
「ちょっと待って。本当にミサさんからだったんですか? 」
「はい。走り書きのメモは彼女の席に。
メモには起こすようにと時刻が記されていました。
ミサさんからのご要望に応え三〇三号室へ。
そこで彼女の遺体を発見。悲鳴を。
悲鳴で皆さんが駆けつけた次第です」
ガイドさんによる振り返り。
これからも分かるようにバスガイドさんたちには時間的に犯行は不可能。
被害者はすでに冷たくなっていた。
もし二人が共謀しているとしても第一の事件では犯行不可能。
連続殺人である以上二人は真犯人にはなり得ない。
続く




