表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一人二役の精霊王さま  作者: I*ri.S
7/51

第七話

「一人二役の精霊王さま」第七話です。

本作は毎週火曜日の更新を目標にしています。

 自身のデータは不満の残る結果だったが、ひとまずステータス鑑定というスキルを知れたことで良しとしよう、と有沙は気持ちを切り替えた。何しろ今は精霊王という特殊な立場なのだから、(周辺住民のためにも)いちいち落ち込んではいられない。

「皆さんっ」

 集結した八人の精霊に向かい、有沙は高らかに宣言した。

「私はこの世界に来たばかりで、右も左も分からない状況です。どうか私に、この世界のこと、精霊のこと、その他の生き物のこと、オスティアの歴史や国のこと、全てを教えてください! 頑張って勉強しますので、ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いします!」

「おお。なんと恐れ多い……」

「新しい精霊王様は、なんと謙虚なお方か……」

 八人の精霊たちは皆が驚嘆の表情を浮かべ、口々に精霊王の宣誓に答えた。

「初めに申し上げましたが、精霊王様あってのわたくしたちでございます。何なりとお申しつけください」

「エマの申す通りです。わたくしにできることでしたら、何でもいたします。わたくしの精霊王様への思いは、泉の水がごとく尽きることございません」

「精霊王様への我らが忠誠心は、マグマより熱く強うございます。このマーカスにお任せを!」

「この大地は、精霊王様が統べる、全ての生きとし生けるものを守る揺り籠でございます。私の心は精霊王様と共にあり、精霊王様の願いが私の願いでございます」

「……僕はこの世界の影であり、精霊王様の影でもある。影は主君の命に従うのみ」

「わたくしの持つ光の力は、偉大なる創造神と精霊王様に与えられし力です。どうぞ存分に、この力をお使いくださいませ」

「森は命を育む場所。その場所を与えてくださったのは、神と精霊王様に他なりません。その御恩に少しでも報いることができるなら、これに勝る喜びはございませんわ」

「私の雷の力は、創造神と精霊王様の怒りの御力。戒めを与えたい者がおりましたら、ぜひこのローガンにお命じください!」

 忠義に厚い八人の精霊たちの言葉に、有沙は感動で胸が熱くなるのを感じた。

 これまでの人生では、入退院の繰り返しで、人からこんなに強い信頼と敬愛を預けてもらった経験などない。家族の縁にすら恵まれなかった有沙は、精霊王という立場に生まれたがゆえの恩恵に今さらながら感謝した。

 全身に力が漲るのを感じる。この時ようやく、有沙は自分が生まれ変わったのだと実感した。

 彼女は晴れ晴れとした表情で、「ありがとう、皆さん。これからよろしくお願いします!」と力強く挨拶した。


       ***


「というわけで……」

 緑の黒板を前に、有沙は八人と向き合った。

 黒板には思いついた順に掲げた直近の目標を、エマにウィスタリア語で書いてもらい、その横に自分で日本語訳を書き添えた。

1.オスティアの歴史を学ぶ(※主に魔神出現の頃と、人類の文明について)

2.国と人の暮らしについて学ぶ(※主にウィスタリア国について)

3.精霊王の力を学ぶ(できること、できないこと)

4.精霊の力を学ぶ(同上)

5.魔物について学ぶ

 学校に置いてある物と変わらない書き心地の黒板もどきだが、ちなみにこの黒板もどきもチョークも、精霊王の力で出現させたものだ。

 どういう仕組みか謎だが、とにかく有沙が「こういう形のこういう機能の物が欲しい」と願うと、大気がざわめき、どこからか素材となる物質が集まってきて、“黒板っぽいもの”が出来上がる。

(この能力、すっごく便利だなー。でもさすがに、スイ●チやPS●は作れないだろうなー。そもそもハードがあってもソフトがないし……)

 そんないらぬ想像をしながら、有沙は自分が書いた、お世辞にも上手いとは言い難い文字を見つめた。

「で、この中で優先すべき課題は、どれだと思う?」

 そこで「はい」と挙手したのは、キュート系美人のフレイヤだ。

「我々が精霊王様の学びのお手伝いをすることは理解しました。が、教育係に八人も必要でしょうか。たとえば人類の歴史のみならば、土の精霊である私が適任であると思います」

「なるほど」

 もっともな弁に有沙がうなずくと、すかさず「はい!」とエマが手を上げた。

「歴史ならば、風の精であるわたくしが一番詳しゅうございます! ぜひわたくしに、その任をお与えください」

「えーと、……」

 するとまた、「はい!」と別の者が手を上げた。アオイだ。

「人族の暮らしならば、水の精であるわたくしが一番よく存じております! 何しろ人族は、水がなくては生きてゆけませんから、人族のいる場所には必ず水がございます。市井の暮らしをお知りになりたいのであれば、ぜひわたくしにお訊ねください!」

「何を言うか! それを言うならば、人族の歴史は火の歴史でもある! 人族がろくな家もなく狩猟をしておった頃から、火は彼らと共にあった! 精霊王様! 人族についてお聞きになりたいことは、このマーカスにお訊ねください! どんな質問にも即座にお答えいたします!」

 いきなり「自分が一番」アピールを始めた精霊たちに有沙がアワアワしていると、ずっと無言だった闇の精霊がぼそりと呟いた。

「そもそも、我々と精霊王様は潜在意識で繋がっているのだから、そこは教えるとか聞くとかでなく、知識の共有を行えば良いだけの話……」

「えっ、なになに、そのチート技!」

 エドガーの発言に有沙が反応すると、他の精霊たちも「たしかに……」という顔でうなずいた。

「どうやるの、その知識の共有!」

 リディアの姿で有沙が詰め寄ると、シャイな性格らしいエドガーは少し顔を赤らめて、「簡単です……」と低い声で答えた。

「お知りになりたいことを思い浮かべ、僕たち個人にでも複数にでも、心の中で訊ねられたら良いのです。そうすれば、我々から答えが返ってきます」

「えっ、それだけ?」

「我々が知り得ないことはお答えできません。その場合は、精霊王様が直々にお調べになるか、近くにいる者を調査に行かせる必要があります……」

「え、すごい! じゃあちょっと、やってみていい?」

「はい、どうぞ」

 そこで有沙は声に出さず、エドガーに対し問いかけた。

「エドガーって、服は黒色しか着ないの?」

「えっ……」

 予想外の質問に戸惑いつつ、エドガーは念話で、「闇の精霊ですので、基本、黒色の衣装ですが……。精霊王様が他の色が良いと仰るならば、他の色を着ることもやぶさかではありません……」と答えた。

「わーっ、すごい。返事が来たー。これってテレパシーってやつだよね。すごい、便利ー!」

 有沙は無邪気に感心し、照れるエドガーに「教えてくれてありがとう」と礼を言った。そして、「エドガーが黒が好きなら、その色の服を着るのが一番だと思うよ」と付け加えた。

 二人のやり取りを見て、すかさず他の精霊たちも色めきたち、「精霊王様! 他にも便利な技がございます!」「わたくししか知らない秘術もございます!」と、一斉に挙手を始めた。

 賑やかなクラスの先生になった気分で、有沙は「はい、発言は順番にー」と、両手を使って彼らをなだめた。


       ***


 有沙がオスティアに転生し、一年が過ぎた。

 あれからすぐに判明したことだが、有沙が目覚めた場所は、オスティア大陸のほぼ中央に位置する、ニンファレア大公国の領土にある森だった。

 ニンファレアは世界最長の大河に海のような巨大湖、樹齢千年越えの巨木が生い茂る森や険しい山岳、砂漠など、多様な地形を有する大国で、人の踏み込めない秘境も数多く存在した。

 有沙が今いる土地も珍しい動植物が多数生息しているために、国の許可がなければ人が入れない国有地だった。そのためここで過ごした一年間、有沙は一度も人間に会わなかった。

 おかげで学習のみに集中でき、オスティアという世界とその常識にもだいぶ詳しくなれた。


 魔法もかなり覚えた。

 精霊王という特殊な存在ゆえに、習得した魔法はその場でレベルMAX状態の上、全属性持ちなので扱えない魔法もスキルも存在しない。

 各種族の精霊に魔法の効果とスキルの特性について学び、彼らができることは精霊王も全てできることを確認した。

 ちなみに各属性の精霊の技も人族の扱う魔法も、どちらも魔法と呼んではいるが、精霊の使う魔法の方が人族よりも圧倒的に強力なのは、彼らには人間が持たない神聖力があるからだ。

 魔力は地上に住まう全ての生き物が有する力だが、神聖力は神に近い存在にしか発現しない。聖職者や鍛錬を積んだ魔導士などが、たまに神聖力を得てよりより高位の魔法を使えるようになるが、それは彼らの魂が神に近づいたためと考えられる。当然、神に一番近しい精霊王の神聖力は、他を圧するほど強力だ。

 また魂と生命と肉体、この三つのバランスが均衡することで、個々の魔力量は変化する。ラビサーに登場したメインキャラたちは皆、かなり強い魔力を持っていたが、その理由は、彼ら自身が生まれつき持っていた才能によるものだった。

 足が長い、肌が美しい、声が良い、そういう生まれつきの資質と同様に、このオスティアでは魔力というギフトが存在するのだ。

 地球で、生まれつき心臓が悪く不利益を被ってきた有沙だったが、ここオスティアでは、チートとすら呼べないレベルの、世界一強大な能力と地位を与えられた。

 精霊や人族、精霊王について学ぶほどに、有沙は自分の幸運に改めて感謝した。

(私って、本当にラッキーだったなぁ。先代の精霊王様には挨拶もできなかったけど、もしも会うことができたら、しっかりとお礼が言いたいなぁ……)


       ***


 勉強を始めて半年くらい経った頃、有沙は久しぶりに、自分のステータス画面を開いてみた。

 すると、下に延々とスクロールするほど魔法とスキルの数が増え、体力と魔力には「∞」と無限大を意味するマークがついていた。

 その規格外な能力に有沙自身呆れたが、気分で天候を変えるような存在ならば、それも当然かもしれないと思った。

 また、精霊王にしか使えない能力もあった。属性の違う魔法を組み合わせた複合魔法に、属性を持たない無属性魔法である。

 一番初めに使ったステータス鑑定が、その無属性魔法に当たる。黒板を出現させたのは、土属性と風属性の複合魔法だ。そして精霊たちとの感覚共有、精霊獣の使役である。

 特に有沙が喜んだ能力が、精霊獣の使役だ。その名の通り、精霊獣を呼び寄せ、命令を下すことができる。

 属性ごとに精霊獣の姿も能力も異なり、エマたち精霊も精霊獣を使うことができるが、全精霊獣を操れるのは精霊王だけだ。

 また精霊王の側近である精霊の数は八人だが、精霊獣の数はそれよりもっと多く、国一つ滅ぼせるような力のある強い精霊獣もいれば、お使い程度の仕事しかできない弱い精霊獣もいる。

 精霊も精霊獣も、普段は人の目には見えない。ただ特別な加護を与えたい時や、その人間に何かしらの用がある時、彼らは人前に現れる。それは百年に一度レベルの極めて稀なことで、そんな精霊や精霊獣を神聖化して生まれたのが、精霊聖教という宗教である。

 国ごと土地ごとに祀る精霊は異なるが、精霊聖教自体は一つの大きな宗教団体だ。各国に支部があり、本部は大国ラウレ帝国にある。

 ちなみにアリッサが生まれるウィスタリア国は、ラウレ帝国の南にある小国で、帝国と同じく光の精霊を信仰対象としている。

 ラウレ帝国の初代皇帝は旧ウィスタリア国の王族で、王位争いに敗れ、自分を支持する貴族たちと隣国に逃れて新しい国を興した。それがラウレ帝国の始まりだ。

 現在、国土も人口も、ウィスタリアはラウレの十分の一以下の規模しかなく、完全に帝国の属国扱いとなっている。ウィスタリアにとっては何とも皮肉な話だった。

 その辺りは、ラビサーのシナリオではまったく描かれなかった部分で、有沙はリアルなオスティアの歴史を学び、所変われど、権力争いが好きな人の性質は変わらないな、と思った。

 ただ地球と違い、オスティアには魔法があり、精霊がいて、魔物も存在する。畏怖や信仰の対象が現実に存在することで、オスティア人は皆、信仰心厚い。威張った貴族も犯罪に手を染める悪党もいるにはいるが、その割合はとても低い。

 親たちは自分の子に、自分たちの行いは精霊様が見ている、悪さをすれば神罰が下る、と教える。そこは日本人がよく口にする、「お天道様が見ている」という戒めに近いように思える。

 魔物は前世で悪事を働いた者たちの生まれ変わりで、魂が穢れてしまったから魔物になったのだ、と言われている。

 その影響で、罪人を人の立ち入らない土地へ捨てる、という村も存在する。どうせ魔物になるのだから、魔物の住処へ捨ててしまえ、というわけだ。

 だがこれは間違いで、マリリンは、闇落ちした精霊が魔物の正体だと言っていた。

 そしてその原因は人間にある。人と深く関わった精霊は、人と同じように他者を妬んだり憎んだり、時には害するようになった。

 そうした精霊はもう、神の浄化の力が及ばない存在になる。そんな者たちが魔族となり、人族が増えるのと比例して魔族の数も増えていった。

 そして人族が発する毒を餌として強大化していったある魔物が、恐ろしい魔神となった。理性のない魔獣は、獣が魔神の生みだす瘴気を浴びて魔物化した姿だという。

 ある意味、彼らは人族の被害者だ。有沙はそう思った。

 だが、他人を憎んだり羨んだり、蔑んだり疎んじたりする悪感情は、人が人である証でもある。感情に振り回されるのが人族であるならば、人族をそのように作った者にこそ、本当の罪があるのではないだろうか。


 土の精霊のフレイヤと風の精霊のエマから、「魔物と人について」というお題でレクチャーを受け、有沙は「うーん」と唸った。

「つまり魔物は、公害と同じってことか……」

「それは、精霊王様が以前いらした、チキュウの話ですか」

 エマの問いに、有沙は「うん」とうなずいた。

「昔も今も、地球の命題とも言える社会問題だよ。大気汚染とか土壌汚染とか。環境が変わって絶滅した動植物も沢山いるし、人間自身も、公害で病気に罹ったりして」

 有沙は頬杖をつき、「どこの世界でも、人間って罪な存在だよね……。どうして神様は、そういう迷惑な生き物をこの世界に生みだしたんだろう」と、今度は宗教の命題の一つを呟いた。

「たしかに魔物は害ある存在です。ですが彼らも、元は神の息吹から生まれた存在です。それに魔物であっても、精霊王様の(しもべ)であることに変わりはございません。制御のきかない魔獣や低級な魔物もおりますが、たいていの魔族は精霊王様の命令に従います」

「えっ、精霊王って、そんなこともできるの!?」

「もちろんです。全生命を自由に操るお方ですから、強い魔族とて精霊王様に逆らうことはできません」

 フレイヤの言葉に驚いた有沙は、「じゃああの、三千年くらい前に暴れた魔神はどうなの? 精霊王は魔神に大人しくするよう命じなかったの?」と、一度聞きたかった質問を精霊たちにぶつけた。

 フレイヤもエマも当時から存在しており、三千年前にいた魔神のことも覚えていた。だが、人と魔神の戦いに精霊は干渉しないのだ、と彼らは言った。

「魔物は、我々精霊と対極の位置にある者ですが、この世界のバランスの一角を担う存在です。人族は大した魔力もなく寿命も短い脆弱な生き物ですが、その数と団結力で大陸の支配者となりました。彼らはわたくしたち精霊のことは崇め祀り、保護する対象としているため、敵対関係にありません。ですが魔族のことは嫌悪し、排除の対象にしています。もし人族が魔族のように精霊族を扱ったなら、我々も人族を嫌悪し攻撃したでしょう」

「そ、それは……。卵が先かニワトリが先か、的な話なのかな……。人が魔物を攻撃するから、魔物も人を攻撃するってこと?」

「順序としては、魔物が人を害するから人が魔物を排除する、と言うべきかと」

「ああ……じゃあ、魔物が人を襲い、人が魔物を攻撃するようになり、それで高位魔族の魔神が怒って人類と戦争を起こした、と……」

「どちらが悪いとは申せません。人と魔物の戦いは、地上に住まうもの同士のいわば縄張り争いですから……」

「精霊も精霊王も、その戦いはスルーなの? 魔物が暴れたら自然破壊も起きると思うんだけど……」

「ある種は滅び、また新しい種が生まれる。ある意味それも歴史の一部であり、自然な流れなのです。精霊の力は、特に精霊王様のお力は強大です。人族と魔族の戦いに精霊王様が介在なされば、あっと言う間に決着はつくでしょう。ですがそうなると、人族の今日(こんにち)の躍進と繁栄もありませんでした」

「じゃあ、魔神を封印したのは人族なの?」

「そうです。人族の中にも稀に魔力の強い者は生まれますし、我々精霊族に加護を受けて、高い神聖力を有した者も存在します。彼らが一致団結し、魔神を討伐しました。完全に討ち滅ぼすことは不可能だったため、強力な結界を作ってその中に魔神を封じたのです」

「人族は魔神の恐ろしさを後世に伝えるため、討伐を行った者たちを伝説化し文献に残しました。また討伐のメンバーだった魔法使いたちが、より強力な封印魔法の研究を行うための施設、魔塔を作りました。各国が、子どもが生まれてすぐに魔力値を測る法を作ったのも、魔族に対抗しうる人材を育てるためです。潜在能力の高い子どもを選抜し、特別な教育を受けさせるのも全て、魔族の脅威に備えるためです。選ばれた子どもたちは成長すると、洩れなく魔塔や騎士団に配属されます」

「大陸の西にフルードゥリスという大国がございますが、ここが人類発祥の地です。何万年も前から、人族と魔族は戦を繰り返してきました。一万年前にも、魔神と人族の戦争がありました。人族が、初めて魔族に勝った戦いです。王族や貴族に魔力値が高い者が多いのは、彼らが魔神を討伐した者たちの血族だからです」

 フレイヤとエマの説明に、有沙は「はぁ……すごい」とため息をついた。

(完全にゲームの世界だ……。現在の王族は、魔王を討った勇者御一行の子孫、ってことか……)

「でもそうすると……、もしかして精霊王って、人の味方はしちゃいけない立場なの? 前にも言ったけど、私、ウィスタリア王国に生まれる予定の、アリッサって子を応援してあげたいんだよね……」

 エマとフレイヤは顔を見合わせ、フレイヤが「それが精霊王様の望みでしたら、されたいようになさってよろしいかと」と言った。

 エマも同感らしく、「以前も申しましたが、精霊王様はこの世界にいてくださるだけで、尊く神聖な存在なのです」と強い口調で言った。

「精霊王様が望まれることは、全て正しいことなのです。ならば一人の人間を寵愛なさることも、逆に魔神を滅ぼすことも、どちらも精霊王様のお心一つで決まることです。我々がそこに異を唱えることはございません」

「エマの申す通りです。全ては精霊王様の御心のままに」

「マリリンさんも似たようなことを言ってたなぁ。でも、全生物の頂点に立つ者がエコ贔屓するのは、バランス的に問題あるんじゃないかなぁ……」

「精霊王様は、人族の王などとは次元が違う存在です」

 口調は丁寧だが、どこか逆らえない空気を出して、エマが言った。

「この世界をお造りになったのは創造神様ですが、のちを託されたのは精霊王様です。この地上にあるもの全て、生かすも滅ぼすも精霊王様のお心一つ。たとえ魔族が全員滅んだとしても、それに異を唱える者などございません。植物を根絶やしにして不毛の大地になったとしても、大噴火を起こしてマグマで大地を覆い尽くしたとしても、我々精霊全てを消滅させたとしても、それが精霊王様のご意志であるならば、それがこの世界の運命なのです」

「いやいやっ! さすがに、そんなひどいことをするつもりはないし、絶対やらないよ!」

 両手をブンブン振って否定した後で、リディア姿の有沙はぽりぽりと頬を掻いた。

「でもまぁ、ちょっとくらいなら、私がやりたいようにやっても、特に問題はないってことだね」

「左様でございます」

「精霊王様がなさることに、タブーなどございません」

「うん、それを聞いて安心したよ」

 精霊たちの了承を得たことで、彼女の中の「アリッサを幸せにする」という決意はますます固まった。

(そのためには、今はとにかく、精霊王として勉強&スキルアップしなくちゃね!)



第八話につづく

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

次回の更新をお待ちくださいませ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ