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一人二役の精霊王さま  作者: I*ri.S
37/51

第三十七話

「一人二役の精霊王さま」第三十七話です。

本作は毎週火曜日の更新を目標にしています。

 王宮にも精霊はいる。だがその数は圧倒的に少ない。理由は、城内のいたる所に設置された、魔法を封じる結界魔法の影響だ。

 結界魔法にもいろいろな形がある。

 有沙が作る結界は、精霊王の強大な魔力によって、結界内で放出された魔法を相殺する仕組みであるのに対し、ここ王宮で使われている結界は、特殊な魔法陣によって、放出された魔力を吸収する仕組みである。

 神聖力と魔力の集合体である精霊にとって、魔力を吸収する魔法陣は鬼門である。罠と言ってもいいだろう。誤って魔法陣の中に入れば、たちまち弱って動けなくなる。小さな低位精霊などは特に影響を受けやすい。

 ただし、あるレベルを越えた高位精霊にとっては、普通の魔導士が作った魔法陣の影響はほぼない。ゆえに王城内には、エマたち最高位の八精霊に次ぐ、高位精霊たちが見張りについていた。主に風の精霊、土の精霊、光の精霊がその任にあたった。

 しかし彼らが守護するのはあくまでセルヴィッジ家の人間のみで、現在対象となっているのは王国軍に所属するトマス一人だった。精霊王がそう指示したのだから、彼らはそれに従うのみだ。

 ゆえに王太子のジェイデンは精霊たちにとって、怪我をしようが病気になろうが、万一亡くなってしまったとしても気にする必要のない、「どうでもいい存在」だった。

 さらに間の悪いことに、現在トマスは国境近くの駐屯地に出張中で、精霊たちもそちらへ出払っていた。そのために、王太子の病気についても報告が遅れてしまったのだ。

(あー……失敗したー……)

 クライヴに続いてジェイデンに関しても、これまでまったく気に留めてこなかったことを、有沙は心底後悔した。

 アリッサとジェイデンが婚約するのはアリッサが十歳の時で、クライヴと知り合うのは高等部に進級してからだ。現在一歳のアリッサには、王太子も弟も何の関わりもない。それがラビサーの設定だった。

 だから、油断した。

 ゲームが進行すれば決まったタイミングで自動的に登場するキャラクターと同じように、現実のオスティアでも、時期がくれば主要キャラたちは自然とアリッサの前に現れるだろう。そんな風に思っていた。

 だがこの世界は、ゲームとは違う。すでに基本設定から大きく逸脱し、アリッサの母親は亡くなっていないし、ゆえにトマスの再婚もない。ヒロインのエミリアが無事誕生してくるかさえ不確定だ。

 ならば他のキャラクターたちもシナリオとは異なり、大きな事故や災難に見舞われたり、最悪アリッサと知り合う前に亡くなる可能性だってあったのだ。

 一番の推しはアリッサだが、有沙はラビサーの世界と、そこに登場するメインキャラは全員好いていた。特に王太子のジェイデンは理想の王子様そのものの見た目と性格で、かなりの推しキャラだった。二次元の初恋の相手でもある。

 そのジェイデンが、原因不明の病で寝込んでいるという。数カ月前からときおり体調を崩していたが、ここ数日で一気に悪化したらしい。

 有沙はエマとともに、王太子が住む第四宮殿、別名『蒼玉そうぎょく宮』に行った。

 自室のベッドに横たわるジェイデンは、天使のように美しい子どもだった。顔は紙のように白くやつれ、苦しげに荒い呼吸を繰り返している中、ゆるく巻いた金の髪に長い睫毛、つんと尖った鼻に形の良い唇など、どのパーツを切り取っても美しい。

 アリッサが誕生する二年前、王子誕生の報がウィスタリア国内を巡った際に、有沙も一度、生まれたばかりのジェイデン王子を見に王城へ忍び入ったことがあった。その時見たジェイデンは、生まれたばかりの赤子の姿でさえ、神々しいほどに麗しい見目をしていた。

 三歳になり、さらにその美貌は磨きがかかっている。

「はぁ~。やっぱり生ジェイデンは可愛いわ~~~」

 ベッドの真上に浮遊し、有沙は王太子の姿をほれぼれと見つめた。

 王太子の寝所には、お付きの侍女や侍医、呼ばれたヒーラーや魔導士に加えて、親である王と王妃もいた。二人は手を取り合い、沈鬱な表情で長椅子に腰かけている。

 多忙な国王と王妃が付き添っているということは、つまりそれだけ、王子の病状が重く深刻ということだ。

 広すぎるベッドで、ゼイゼイと荒い息をして苦しむジェイデンを見て、有沙は痛む胸に顔をしかめた。

「……どうやら王太子の不調の原因は、瘴気当たりのようです」

 有沙の隣で、エマが言った。博識な彼女は、一瞥しただけで病の原因を突き止めた。

「瘴気当たり? まさか王宮で暮らしていて、瘴気にさらされたってこと?」

「はい。しかも少量ずつ長期間に、です。彼はどうやら、瘴気を吸いやすい体質のようです。そのうえ過敏でもあるようで、本来なら瘴気を本能的に避けられるはずですが、そうできない状況だったのでしょう」

「それっていったい、どんな状況?」

 首をかしげつつ、有沙はすぐにジェイデンの体から瘴気の影響を消した。炎症を起こしていた箇所を全て治し、早く体力が戻るよう回復魔法もかけた。

 精霊王の魔法により、ジェイデンはすぐに正常な呼吸を取り戻し、顔にも生気が戻った。

 王子がゆっくり目を開くと、サファイア色の瞳がきらきらと宝玉のように輝いた。

「おお……」

「ジェイデン様が目を覚まされた……!」

 いきなり覚醒したジェイデンはベッドから起き上がると、自分を取り囲む大勢の人間を見て、驚いた顔をした。

「みんな、どうしたの……?」

「ジェイデン!」

「ああ、良かった、意識が戻ったのね!」

 座っていた国王と王妃が息子に駆け寄り、王妃は彼の手を取って喜びの涙を流した。国王も今にも泣きだしそうな顔で、きょとんとする息子を嬉しそうな顔で見つめた。

 いきなり回復した王太子を見て皆が驚いたが、侍医の「もう大丈夫でしょう」という診断に、その場にいた全員が手を取り合って喜んだ。

「つまりジェイデンは瘴気に対して過敏で、おまけに影響を受けやすい、厄介な体質なんだね? なのに長期間瘴気の影響を受け続けたってことは、いわば重度の花粉症患者なのに、杉林の近くに家を建てて住んでるようなものだよね? 何でそんなことになったんだろう……」

 有沙の分かりにくい例えに、しかし風の精霊は冷静だった。

「まずは、瘴気の発生場所を特定しましょう。それによって原因も判明するでしょう」


 大量に招集された風の精霊により、元凶はすぐに見つかった。

 いったい誰の仕業か。第四宮殿に呪物が持ち込まれていたのだ。

 それは、王太子が普段利用する図書室に、巧妙に隠されていた。わざわざ幼児向け書物の並んだ書棚の、その一番上の棚の本の間に、挿絵のような紙として挟まっていたのだ。呪い自体は強力だが、物がただの紙だったために、漏れる瘴気の量は少ない。高位の魔導士でなければ見破れない隠匿魔法がかけられており、クラリスに贈られたブローチに似ていたが、術者はダグラスではない別の者だった。

 瘴気に敏感な体質のジェイデンは、この図書室に来るだけで嫌な気分になっていたが、まさか呪物が原因とは思わず、真面目な彼は不快感を堪えて、この部屋で毎日勉強していた。まだ三歳ながらすでに読み書きを覚え、ここで家庭教師にウィスタリアの歴史などを学んでいたそうだ。

「……許せない」

 声に怒気を含ませ、有沙は手の中で呪物の紙を握り潰した。大事な証拠ゆえに消滅させることはしなかったが、視界に入れるのも不快なのでエマに保管を頼んだ。

「ジェイデンの真面目な性格を利用して、こんな場所に呪物を隠すなんて……。ここが彼専用の図書室と知って、わざわざ子ども向けの書棚に隠したってことは、ターゲットは完全にジェイデンだったってことだよね」

「そう考えるのが自然かと」

「まさか犯人は、イザベル?」

「……その可能性は私も考えましたが。エドガーの話では、彼女は王太子の病気を、息子が毒蛇に噛まれるまで知りませんでした。彼女が犯人ならば、王太子が病気と聞いても驚きはしないでしょう」

「……そっか。じゃあ今回も、ランズベリー伯爵を使って侯爵夫人にブローチを贈ったように、謎の黒幕がいるってこと?」

「そうですね……。思うに、今回の犯人とセルヴィッジ家を狙った犯人は、同じなのではと思います。手口が酷似していますし、王太子を狙った動機が不明という点も同じです」

「つまりアリッサだけじゃなく、ジェイデンも謎の敵に狙われているってこと?」

「そうかもしれません。……確証はありませんが」

 エマは断言を避けたが、有沙も彼女の意見に同感だった。


       ***


 ジェイデンが完全に回復したのを確認し、有沙はエマとニンファレアの森へ行った。

 最近精霊たちは、この森でなくチェスナス山のリディア村にいることが多いが、八大精霊のみ集めて会議を行うには、有沙的にやはり、この大森林が一番しっくりくる場所なのだ。

 精霊王の招集命令に、八人の精霊たちはすぐに集まった。先ほど命令を受けたばかりのアオイとエドガー、エレノアはすこし遅れたが、無事自身の任を果たし戻ってきた。

 エレノアからクライヴも回復したと聞き、有沙は改めて皆に、ラビサーの登場人物について説明した。

 まず、今回狙われた王太子のジェイデン。彼の異母弟であるクライヴ・ラスキン。そしてアドキンズ侯爵家のリアム。

 さらに、まだ生まれていないカルバート伯爵家次男のジェフに、フェアクロフ伯爵家のレイモンド、またアリッサの七歳上で歴史教師になるはずのジュリアン・シーウェル、二歳上で魔導士になるはずのキース・ベインズについても言及した。

 これに、セルヴィッジ家に仕えるバートとバーサの息子ノアを加えて、ラビサーの攻略対象は全部で八人だった。偶然にも側近の精霊たちと同じ人数だ。

「ただ、ターゲットにされるのが、ラビサーの登場人物だけとは限らないでしょう。もしかすると、ウィスタリアの貴族の子全員が、無差別に狙われているのかもしれない」

 敵が分からない以上、その狙いも、誰が標的になるかも不明だ。唯一の手掛かりはあの偽シモンだが、彼は今外国にいてこちらに戻ってくる気配はなく、監視役の精霊からも目立った報告は入っていない。

 現状、黒幕の正体については行き詰っていた。

 だが有沙にとって何よりショックだったのは、一番安全なはずの王宮にいたジェイデンが、瘴気に侵されて死にかけたことだ。

 色んな場所の瘴気溜まりは失くしていったが、人為的に作られた呪物まで全て見つけることは不可能だ。一カ所ずつ注意して調べていくしかない。

「セルヴィッジ家の警戒はこのまま維持して、さらに、ウィスタリアの王侯貴族の、特に子どもがいる家を注意して見守る必要があると思うの」

 一つ一つ言葉を選びながら、有沙は慎重に話した。

「その子どもだけ見張るのじゃなくて、その周辺で何か変わったことが起きていないか、怪しい人物がいないか、特に呪いに関わることはしっかり調査して、些細な出来事でも私に報告して欲しい」

 精霊は、AIと同じだ。気を利かせるとか、命令の範囲を逸脱する行為はしない。セルヴィッジ家を守れと言えば、セルヴィッジ家だけ守る。たとえば火事が起きても、火を消すのはセルヴィッジ家だけで、近隣の屋敷に飛び火しても気にしない。その火事で人が亡くなっても、精霊たちにとってそれは何ら悲しむべきことではないからだ。

 今回、有沙はエドガーに「イザベルを守れ」と命じた。そしてエドガーも、配下の精霊たちに同じ命令をした。ゆえにクライヴは、守るべき対象に入らない。有沙自身も、クライヴの安全に関しては完全に失念していた。

 おまけに感応力が上がったことで、有沙が口で命じていないことまで“命令”と受け取られた。

 毒蛇に噛まれたのはクライヴで、イザベルは害を受けていない。と同時に、息子が危篤状態に陥ることで、母親である彼女には罰が与えられる。まさしく完璧な計画だ。……精霊たちにとっては。

 有沙にとっては違うということを、彼らは察することができない。元人間である有沙には、自分たちよりもっと複雑な感情があることを、彼らはなかなか理解できない。

 聡いエマやエドガーは察してくれるが、他の精霊たちは、その価値観の違いにより意思疎通がうまくいかないことも多い。下位の精霊であればなおさらだ。頂点にある精霊王の命を八人の最高位精霊が受け、八精霊たちはまた下の者たちにその命令を伝える。伝言ゲームになるがゆえに、よけいに精霊王の本来の意志は伝わりづらい。

 今、精霊王である自分が彼らに何を望んでいるのか、有沙はそれを明瞭かつ正確に、精霊たちに伝える必要があった。

「無理はしなくていいの。かなり長期間の話になるから。とにかくこのウィスタリアにおいて、アリッサやジェイデンみたいにターゲットにされている子どもがいないか、子どもじゃなくて大人でも、命を狙われている人がいないか、もしくは呪物や呪いに関係すること、悪事を働こうとしている人間、そういうのを皆に気をつけて見ていて欲しいの」

「注意を払う対象は、呪術と殺人のみですか? 窃盗や暴行・傷害事件に関してはいかがなさいますか」

 エマの指摘に、有沙は「うーん……」と唸った。

「軽犯罪は、まぁ……、たまたま現場に居合わせて、防げそうなら防いでほしい、かな……。ただそういうのの報告は、べつに私に言う必要はないと思う……」

「担当はどのようにお決めになりますか。各地方に加え、王都だけでも東西南北に地区が分かれておりますが、それで担当地区を各自に割り振る形でよろしいでしょうか?」

「あー、うーん……。それぞれ得意な土地とかあるよね? たとえばオリビアは緑の多い場所とか、アオイなら水が豊富な場所とか……」

「でしたら、ランズベリー家を見張っていた時のように、各属性に適した場所でまんべんなく散らばる形にいたしましょう」

 議事進行が得意なエマは、有沙の意見を聞きながらテキパキと役割分担を決めていった。

「地方の農村などは、その土地に住む精霊たちから異変があった時だけ報告を受ければ良いかと。そして王都内の主要貴族の邸宅や王宮など、一番注意が必要である場所については、知性の高い精霊獣や高位精霊を担当につけるのがよろしいかと存じます」

「あー、そうだねー。今、セルヴィッジ家やラスキン家、ランズベリー家にいる精霊たちを少し減らして、王宮や他の貴族の家に回ってもらったらいいかなー」

「一番確実なのは、全ての家に精霊王様が結界魔法をかけることだと思います」

「えっ!」

 有沙は驚いたが、エマのこの意見に他の七人も同意した。

「そうですわね……。わたくしたちがかけるよりも、精霊王様の全属性を有した結界が一番有効だと思いますわ」

「うむ。精霊王様の魔法は万能だからな」

「……間違いない」

 風の精霊に追従する七人を見て、有沙は「えー……」と不満の声を上げたが、言い出した当人としては、「めんどくさいからやりたくない」とはとても言えない。

「でも結界魔法って、かけた人の魔力が、かかっている間中使われるんだよね?」

 ゆえに普通の結界魔法は、複数の魔導士が一つの結界を作るので精一杯な代物だ。それも貴重な魔鉱石を電池代わりに使って、である。

「精霊王様ならば、ウィスタリアのみならずオスティア全土に結界をかけても、何ら問題ありません」

 エマが言った。

「オスティアが存在する限り、精霊王様の魔力は無尽蔵に供給され続けるのです」

「……はい、そう聞きました」

 先生に諭された生徒の気分で、有沙は神妙な顔つきになった。

 自分の魔力量に無自覚な有沙だが、大昔に「精霊王について」の講義を受けた際、その無限の魔力についても説明は聞いた。

 そもそも魔力とは地球で言うところのエネルギーであり、地球のエネルギーが光エネルギー、電気エネルギー、熱エネルギーなど多種多様であるように、魔力もその属性によって発生源や用途が変わる。川の水流が岩を削り土地の形を変えるように、太陽光が植物を育てるように、水魔法や光魔法もその発生方法やできることが変わる。

 地球でエネルギーがごく当たり前に存在するように、ここオスティアでは魔力が存在し、精霊と人と魔物は、魔力を自分の中から生み出し使うことができる。そして精霊は自身の魔力だけでなく、自然界からも魔力を取り込むことができる。光の精霊は太陽光から、火の精霊は火山のマグマから、など、自然から多くの力を得ている。精霊の加護を受けた人間の魔力が強くなるのは、この精霊の特性を多少なり受け継ぐことができるからだ。

 そして、精霊王だ。

 精霊王は八属性に加えて、全種の魔力を有している。オスティアに存在する全魔力が精霊王の魔力と言える。だからどれほど魔力を消費しようと、精霊王の魔力は尽きない。外に向けて放出した魔力も、また精霊王自身に還元されるからだ。

「じゃあいっそのことさー、ウィスタリア全土に結界魔法かけちゃう?」

「それはかまいませんが……」

 有沙の冗談口調に、エマが真顔で答えた。

「この国全体に結界を施してしまうと、邪心を持った者はウィスタリアに住めなくなります。そうすると、今回の事件の首謀者を見つける手がかりも失われるやもしれません」

「あーーー……」

 盲点を指摘され、有沙は思わず頭を抱えた。

「罪のない子どもが危ない目に遭うのは嫌だけどー。犯人が見つからないのもすごく嫌だーーー」

「ですから各所に弱い結界をかけ、それに反応した者を精査する、という形が最善かと存じます」

「そーだねー、それが一番間違いないだろうねー」

(ってことはやっぱり、一軒一軒に弱い結界魔法かけなくちゃいけないのかぁ~……)

 しかたのないこととは言え、果たして王都にどれだけの貴族の屋敷があるのか見当もつかず、有沙は自分のした決断をほんのすこし後悔した。


 しかし翌日。

 魔法の調整が得意なアオイとフレイヤに、「弱魔法を同量複数撃つ方法」を習ったおかげで、有沙は数刻もかけず王都全ての王城と貴族邸に結界魔法をかけることができた。

 そのため王宮の既存の魔法陣は全て無効化され、低位の精霊たちも自由に王宮内を往来できるようになったのは、予期せぬ幸いだったろう。

 後日、突然の魔法陣消失に気づいた王宮所属の魔導士たちが、大慌てで教会と魔塔に調査依頼をする、というおまけがついたが、エレノアから宣託を受けていたオルグレン司教が、「王宮全体に精霊様の祝福が授けられております。これは大変な吉事と申せるでしょう」と国王に進言し、魔塔も結界魔法の属性が光であると認めたため、逆に国を挙げてのお祭りに変わった。

 そして翌年から、ウィスタリアに精霊にまつわる祝日が一つ増えた。



第三十八話につづく

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

次回の更新をお待ちくださいませ。

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