処分完了ですわ
「はは……驚いたわ。アウラシア皇后陛下も、私と同じ転生者だなんて……」
ミカエラは冷や汗を流して笑うと、アウラシアを見返す。
「別に驚くことじゃないわ。割りと転生者は居るものよ?ただ、貴方達みたいに理性や欲望を剥き出しにして悪事を働かないだけね。犯罪を犯す転生者が質が悪いだけなの」
「ふふ……なら、私は殺意と言う欲望を糧に命を奪ってきたのだから悪ですわね。……だけど、ただではやられないわ!!」
「っ!?」
ミカエラが魔力を放出させたので、アウラシアは咄嗟にばくてんして避けた。
「私の固有魔法は、【透明化】と【切り裂く者】の二つ!!いつ、何処でも私は視界に入る者を切り裂けるのよ」
笑ってミカエラは周囲にある護衛騎士の死体や、馬車、馬車を引いていた馬などを魔法で切り裂いていく。
「見えない刃、【切り裂く者】ね。このまま放置するのは危険だわ」
アウラシアは剣に魔力を纏わせると、たちまち剣は白銀色に光る。
「あはははっ!!無駄よ無駄!!」
笑いながらミカエラは透明になって姿を消す。
「……無駄ですって?」
眉を潜めたアウラシアは苛立つ。
「見えない私に切り裂かれて死ぬ未来から、アウラシア!!あんたは逃れられないって事よ!!」
見えないミカエラが、折り畳みナイフをポケットから出すとアウラシアに向かって切りかかる。
ザンッ
アウラシアとミカエラが擦れ違った瞬間、ミカエラの身体が血に染まり、ゆっくりとミカエラは膝をつく。
アウラシアは剣の血飛沫を飛ばすと、返しで拭い鞘に収めた。
「嘘よ……私は完璧だったはず……」
「殺気と気配を辿れば、姿が見えなくても位置くらい分かるわ。これが実践と殺人鬼だった貴女との違いよ」
冷たくアウラシアは答えた。
「そんな……化け物……」
そのまま、ミカエラはうつぶせに倒れ絶命した。
「化け物ではなく、私は戦の大聖女よ。皇后に向かって不敬だわ」
アウラシアはミカエラの死体を見て目を細める。
「ともかく、これで処分完了ですわ」
苦笑したアウラシアは、空を見上げるのだった。
幸い、皇后騎士団の中で負傷者は出たが、全て軽傷であり、各自の判断でミカエルから離れた事で誰一人欠ける者は居なかった。