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とある司法省長官の独り言
我が息子セオドスの婚約者が、社交界でも名高い金の姫君なのは我が家でも誇りだった。
才色兼備で家柄も公爵家。我が家も安泰で幸せの絶頂を満喫していた。
婚約を結ばせたのは、姫が産まれて直ぐ。
何故か公爵家に、姫の固有魔法を国民名簿に記載せぬようにと口止めされたのは不思議だった。
どうせたった一人だ。秘匿しても問題ないと私は深刻に考えて居なかった。
数十年後。巷を騒がせる猟奇殺人事件が起きる。
私は言い知れぬ不安を感じ、部下を現場付近に向かわせ調べさせることにした。
そこでは、赤い血に染まった息子の婚約者が公爵家の馬車に乗り込む様子が頻発に目撃されているではないか。
騎士団の見廻りを掻い潜って婚約者は犯行を繰り返しているようだ。
きっと秘匿していた婚約者のチートスキルが関係しているのは間違いない。
事が分かれば、我が家も終わりだ。
私は不安で眠れなくなり、この日宰相閣下に後宮へ召還された。
あぁ、これで私は何もかも終わりだ。
鉛のように重い足取りで私は自ら破滅へと向かう。
こうなれば、公爵家も道連れにしてやる。
私の覚悟は揺らがない。