事件の顛末と処断
事件を隠避したアナカクシ伯爵家は爵位剥奪の上、平民に落とされた。
トンデール公爵家本家の一族は、帝国に反逆した国家反逆罪で広場にて公開火炙りの処刑。
代わりに、トンデール一族の分家が公爵家から子爵位に落ちたトンデール家を相続。
事件は一先ず落ち着いたのだが……。
「ミカエラって子、自分で気付かなかったみたいだけど、魅了の固有魔法も持って居たのよ。だから、トンデール一族本家は正気を失くしていたの。恐らくアナカクシ伯爵家もね」
アウラシアは、庭園にある温室で紅茶を飲むと、思い出したように答えた。
「三つの固有魔法持ちか。早く始末して正解だったな。これ以上犠牲者を出さずに済んだ。ラルフ、被害者の遺族には帝国とトンデール子爵家から慰謝料と損害賠償を払わせろ」
「御意。ですが、帝国の国家予算ならともかく、トンデール子爵家から払わせるとなると……子爵家ごと潰れますが?」
ラルフはレインに問い掛ける。
「構わん。本家を諫めず、甘い汁吸ってきたんだ。今さら貴族じゃなくなっても自業自得だ」
レインは目を細めてラルフに言うと、足を組む。
「分かりました。それではそのように手配します」
恭しくラルフは頭を下げて答えた。
「俺達は、今回の事件で初動捜査の不備や、魔導師師団と騎士団の連携不足を痛感した」
「今回を恥ずべき失態として、被害者を減らせるように根本的に見直すことにしたよ」
ルアとアガサは顔を見合わせて答えた。
「ふふ、精進することは大事よ」
満足そうにアウラシアは微笑む。
こうして、赤いピエロ連続殺人事件は幕を閉じたのだった。