心のカセットテープ
初めての私小説風の作品です。
こんな不思議な発明あるのか。
僕のお祖父さんが亡くなった。お祖父さんは発明好きで、孫だった僕に色々なモノを作ってくれた。例えば、手作りラジオ、手回し発電機、はんだごて等身近で役に立つ道具だ。そんなお祖父さんを亡くした僕は、大きな喪失感を抱いていた。
そんなある日、お祖父さんが昔使っていた物置を整理していると、中から埃のかぶった小さな箱が出てきた。
「おや、こんな箱見た事が無いな」
箱を開けて見ると、中から昔ながらのカセットテープが綺麗な状態で出てきた。ケースには「心のカセットテープ」と書かれていた。
「お祖父さんの物かな?」
僕は試しにラジカセでカセットを再生してみる事にした。しかし、音は再生されなかった。
「使って無かったのか。じゃあ録音はどうだろう?」
今度は僕の好きな音楽をカセットに録音してみた。ところが、カセットを再生してみても音楽は再生されなかった。
「どうなってるんだ?このカセットは壊れてるのかな」
そう思って、カセットを取り出そうとした瞬間、突然、ラジカセから声が発せられた。
「やあ、僕は心のカセットテープ。持ち主と話が出来るカセットテープだ」
「何だって?心のカセットテープ?お前は会話が出来るのか」
「そうさ、君のお祖父さんはカセットテープに不思議な細工を施して僕を作ったんだ」
「そんな馬鹿な。お祖父さんは発明家であって魔法使いじゃない。そんな魔法みたいな発明が出来るものか」
「じゃあ試しに、君の友人を呼んで来てみてごらん。僕の声が聞こえないから」
僕は言われた通りに、友人にカセットを聞かしてみた。僕には先程のカセットの言葉が聞こえた。しかし友人は、
「なんだい。このカセット、別に何にも聞こえないじゃないか」
「そんな、こんなにはっきり聞こえてくるのに」
「おいおい、お前、頭が変になっちゃったんじゃないのか」
僕は観念してカセットに尋ねた。
「参った。お前は確かに不思議なカセットだ。それで何故僕の前に現れたんだい?」
「君と話しをする為さ。僕はお祖父さんが生きていた時からお祖父さんの話し相手だった」
「お祖父さんの?」
「そう。でもお祖父さんは亡くなってしまった。だから君と話がしたかった。君もお祖父さんが大好きだったのだろう?」
カセットと話をしているうちに、お祖父さんとの思い出が鮮やかに蘇り、僕は亡祖父との思い出にいつの間にか涙した。
最後までお読みいただきありがとうございます。
もう少し長く出来れば、会話も充実したものになると思ったんですが・・・・・・