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爆笑づくり助成金 申請書類 『どっぴゅらぴーダンス事業計画』

作者: 凪沢渋次

《概要》

私は2010年4月に、漫才師「クールダウン」のボケとして、お笑い芸人デビュー。その後2012年6月に「クールダウン」を解散、2013年3月にコントユニット「デポイント」を結成、2014年5月に解散。2014年6月にコントユニット「尾道水道」を結成、2014年9月に解散。以後、現在に至るまでピン芸人として活動中である。

主な活動拠点は新宿、下北沢のライブハウスで、月間約2本のタイバンライブに出演。平均的に多くの笑いを取り、オーディエンス、芸人仲間からも、その高いギャグセンスには定評がある。


《市場動向》

コロナ前までは、何度目かの“お笑いブーム”の影響で、また、演劇や音楽ライブよりも安価に楽しめることから、お笑いライブの需要はかなり増加しており、私の出演回数も、前年同月対比で約1.2倍にまで膨れ上がっていた。

しかしながら、コロナの影響で、ライブハウス自体の休業、閉館が相次ぎ、またオーディエンスの移動制限もあり、お笑いライブの集客は壊滅的な打撃を受けている。

一方で、配信による無観客ライブの開催に切り替えている団体が増えてきており、巣ごもり需要の影響もあって、チケットの売り上げも好調らしく、今後も配信でのライブが増加することが見込まれる。


《問題》

私の持ちギャグの多く(「ペンタゴン!」「パンタロン!」「錦糸町!」等)は、大きな動きと、大きな声量で構成されているものが多く、これらは、それを至近距離(生で)で見ることにより、より大きなインパクトをもたらす種類の笑いであるため、ライブハウスで上演された際にこそ効果的なギャグであり、現状、配信には対応していない(向いていない)。

実際に、先月に出演した配信でのコントライブに出た際、人気投票(誰が一番面白かったかをオーディエンスが投票し集計するシステム)では、10組の参加者の中で9位という結果だった。


《課題》

そこで喫緊の課題として、配信に耐えうる革新的なギャグの開発が必要となる。

配信でも、ライブ同様にインパクトを残すためには、(画面を越えてオーディエンスに届く)従来の10倍以上のテンションと、意外性・独自性が必要である。これまでの経験上、新ギャグの開発には、1週間から10日かかり、その間は自宅に籠もり、アルバイトなどの収入手段が一時的に断たれることになる。すでに滞納している経費をも考慮すると、近日中に電気が、来月には水道も止まり、芸人として以前に、人間としての生命維持にも問題が生じる。

また、年齢(42歳)の問題もあり、これまでの10倍のテンションを発し、維持するのは、体力的にかなり困難な挑戦であり、根本的な生活習慣の改善からはじめる必要がある。

具体的には酒量制限、喫煙量制限、深夜バイトの削減、日常的な運動、ときどきの過度の運動などが必要だと考える。


《方針》

配信はもちろん、ライブが復活した際にはライブハウスでも通用するギャグを開発するため、過去のお笑い芸人の単独ライブはもちろん、コメディ劇団、コメディ映画のDVDなどから広く情報収拾して、最善のギャグの開発検討に入っている。

現在、試作として上げているものが2点あり、一つは「モンパルナス!」、もう一つは「どっぴゅらぴーダンス」である。

「モンパルナス!」はこれまでの私のギャグ「ペンタゴン!」の系譜で作られたもので、目を見開き、正面を向き、身体を硬直させつつ、全力で垂直跳びをしながら大声を発するギャグのシリーズである。私は身長に対する顔の表面積が大きく、目を見開くと、かなりの圧力があるため、この手の構成のギャグには、安定した支持層があり、実績も多い。「モンパルナス!」は、すぐに「ペンタゴン!」を想起できるギャグであり、これまでの顧客には、比較的早い段階で認知され、また平均点以上の笑いが期待できる。一方で、コロナ前から徐々に「ペンタゴン!」に対する期待値は下がっていた。本来、先輩の質問に対して、何の脈絡もなくこれを発することで笑いを取っていたギャグであったのだが、昨今は、私が最年長になることも多く、ギャグを出す対象が後輩や初見の新人芸人の場合には、相手を当惑させるだけで、あまり跳ねないこともわかってきている。ウィズコロナの時代に、従来の系譜のギャグがこれまでのように通用するかは未知数である。

「どっぴゅらぴーダンス」は、現在のダンスブームに着目し、ダンス好きな若い客層をターゲットにしたギャグで、これまでの私のギャグの系譜にない革新的なギャグである。日本の古典的音楽、雅楽リミックスバージョンもありに合わせて、上半身と下半身を180度ねじった状態(つまり、腰から下は正面を向き、腰から上は真後ろを向いた状態)で、コサックダンスやブレイクダンスに酷似した、非常に激しいダンスを踊る、というものである。

私には年齢の割に柔軟性とリズム感があるため、この「どっぴゅらぴーダンス」が可能となり、つまり、私だからこそできるギャグで、同業他者にはまず絶対に不可能なギャグである。

この独自性は、オーディエンスの注目を浴びることが確信でき、また、ダンス好きの世代は、動画配信を楽しむ世代と同一のため、何度も動画を見られる(バズる)ことによって、他の舞台、他の配信はもちろん、テレビにも呼ばれることが予測される。


2点のギャグを同時進行で開発するのは、コスト的にも時間的にも難しいので、今回は、より革新的な「どっぴゅらぴーダンス」の開発に的を絞り、今夏までの完成を目指したい。


《助成対象》

「どっぴゅらぴーダンス」の開発にかかる経費は、

 開発期間の生活費・・・30万円 

 健康維持費・・・20万円

 保険料・・・5万円

 資料代・・・6万円

 交際費・・・10万円

 ライブ参加費・・・2万円(20回分)

 チケットノルマ・・・10万円

 DVD製作費・・・10万円


 合計 93万円



本事業が成立した際の1年後の収益は、

 舞台出演料・・・10万円(10回分)

 テレビ出演料・・・100万円(10回分)

 DVD売上・・・50万円(5000円×100本)


 合計 160万円


このように、経費は1年で回収を終え、その先は、収益が微増しつつ安定することが考えられる。

この事業は「“お笑い”による世界平和、安全で健康な社会の創成」ガイドラインに則したものであり、国費を使うに相応しい事業だと考えている。


お国の偉い人へ。

どうか、私にチャンスをください。

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