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いつか選択肢に辿り着くために  作者: 七香まど
三章 聖羅ルート攻略シナリオ
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93聖羅ルート 黒薔薇の楽園

「いらっしゃい、霜月兄。花恋なら部屋で囚われの姫のごとく首を長くして王子の助けを待っているよ」


 女子寮に一人でやってきた俺を玄関で待っていたのは城戸先輩だった。前みたいに花恋さんが出迎えに来ていると思ったから、俺は警戒心を露わにする。


「安心しなさいって、罠なんてないから。私がここにいるのは副寮長という立場が理由で、それ以上でもそれ以下でもないよ。ほら、学生証出して、この紙に記入する!」


 奪い去るように抜き取られた俺の学生証の代わりにアナログな記入式の紙を渡され、俺はそれに女子寮への立ち入り理由を書いていく。


 書いた紙を渡すと交換で学生証が返ってきて、一応仕事をした城戸先輩が許可証をくれた。


「安心して、部屋までは私がついて行ってあげるから」


 男子に飢えた無法地帯のことは把握しているみたいで、俺は城戸先輩の言葉に甘えて隣を歩く。


「こういっちゃなんですが、城戸先輩的にはいいんですか? 俺なんかが花恋さんの部屋に遊びに行って」

「私は花恋のコンプレックスを知っている。本人は割り切っているつもりだけど、身長が低いことを誰よりも気にしていて、可愛いものに自分の身を固めているけれど、あの子は昔、散々それを弄られたことがあるのよ。でもそれを初見で受け入れた男女が人生で一人ずついた。それは一体誰と誰のことでしょう?」


 城戸先輩の話を聞いてホント! 自分自身が嫌になる! なんでこんなことも知らないんだろう? 俺は花恋さんの何を知って好きになっているというんだ? 尊敬しているというんだ?


 ……時間っていくらあっても足りないな。周囲の人も含めてその人を知ろうと思えば俺の知らない事なんていくらでも出てくる。俺よりも長い時間を共に過ごしてきた城戸先輩なんてそれこそ花恋さんの過去を大量に知っている。


 そんな自分を卑下しているのが分かったのか、城戸先輩が俺の頭頂部に手のひらをポンと軽く叩くように置いてきた。


「私は花恋のすべてを受け入れた霜月兄のことを認めている、だから信用している。それは妹も同じだけどね、花恋の恋人にふさわしいのはあんただけだよ」

「今後、俺みたいな人が現われたら?」

「そんなのロリコン確定じゃん、嫌よ。だから見た目だけでなく内面を見ていたあんたがいいのよ」


 そんな会話をしていると、花恋さんの部屋まではあっという間だった。城戸先輩は隣の部屋だからそのまま部屋に帰るのかと思ったが、どこかに出かけるらしい。


「ノックとか中への呼びかけはいらないよ、花恋は分かっているから、そのまま中に入りなよ。それと私はしばらく外に出ているから、ちなみに上と下も今日は留守。最後に“借り”の二つ目だけど、今日、私は花恋に何も入れ知恵はしてないから、急かさずに最後まで待ってあげてね、それじゃあ、頑張ってね、王子様」


 俺は王子なんて大層な存在ではない。留守にしている情報はなんで教えてくれたのからないし、呼びかけもノックもしなくていいと言われていても、俺は念のため扉をノックする。


 城戸先輩が見えなくなってからドアをノックしても反応がない。声をかけても同じ。


「花恋さん? 入りますよ」


 もう一度声をかけてドアノブに触れると、鍵は掛かっていない。靴を脱いで上がると、ベッドの上に白い何かが……。


 それは白い毛布にくるまれていて、まあ正体は分かっているわけだが、それはもぞもぞと小刻みに動いている。


「えと、……花恋さん?」


 声をかけても返事がないからそっとゆっくり毛布を剥がすと、そこにはさらに白と一部ピンクで構成されたゴスロリ衣装を纏って赤いリボンに幾重にも巻かれた花恋さんがいた。頭から足の先までぐるぐると螺旋状に巻かれていて、身動きは取れそうにない。


「か、花恋さん!? どうしたんですか!?」

「んー! んー!」


 口元をリボンで塞がれて唸ることしかできない花恋さん。とりあえず口元のリボンをずらしてあげると、「ぷはっ」と久しぶりの酸素を口から取り入れていた。


 俺が初めて見る、甘ロリというだろうか? ほとんどが白いゴスロリはスカートの裾が捲れて際どい位置まで太腿が見えているため、角度によってはその奥の神秘が見えてしまいそうだった。天使の羽みたいにふんわりとした淡いピンクのフリルは想像しただけで触り心地がよさそうだ。胸元に蝶結びで留められた細いリボン、胸元を護っているそれの端を引っ張れば、男としての夢が広がること間違いなし。


 花恋さんの身体に巻かれた赤いリボンは、花恋さんの手を後ろで縛り、両足もまとめてぐるぐると螺旋状に巻かれている。まともに動くことも出来ず、ベッドの上で毛布を掛けられていたみたいだ。


「何があったんですか?」

「えっと……、舞衣子が先ほどこのリボンを持ってきてわたくしをぐるぐるに巻いていったのよ、そのぉ……わたくしがプレゼント?」


 かなり迷走しているみたいだ。もうこうなってはやけだとばかりに誤魔化している。


「とりあえず解きますよ……」

「まって!」


 俺がリボンを解こうと花恋さんの上体を起こそうとすると、花恋さんは俺を止めた。ベッドに横たわりながら、少し目の端に涙をちらつかせながらも俺のことを何か求めるように上目遣いで見つめていた。


「わたくしは一切の抵抗が出来ないの……、こんなわたくしに、一颯は手を出してはくれないのかしら……?」

「……それが花恋さんのお願いであるというのなら、俺は不純異性交遊にならない程度に襲い掛かりますよ?」


 花恋さんのお願いを急かしてしまっただろうか? 花恋さんの心から願うことを俺は叶えてやりたい。だからこれが本当に花恋さんの求めていたことであれば、俺は躊躇わず花恋さんを襲う。


 壁時計のカチコチと鳴る針の音が何度も繰り返され、花恋さんは迷ったように何も答えない。口を小さく金魚のようにパクパクさせて、頬と耳を真っ赤に染めながらもじもじと自身の身体を揺らしている。


 ……じれったい。


 そう思った俺は花恋さんの返答を待たず、ベッドを弾ませながら膝を着いて乗り、花恋さんの後ろに回った。


「一颯? ど、どうしたの? まさか、このまま!?」

「可能な範囲で花恋さんのお願いなら何でも聞いてあげますよ」

「――ん!? 一颯、そんな、横になったまま後ろから抱きしめるなんて……」


 俺も横になって花恋さんを後ろから優しく抱きしめる。前は花恋さんから抱き着かせようとしてきたのに、何をいまさら。……そんなこと今の花恋さんは知っているはずもないのにね、俺は意地悪だ。


 せっかく手を出して欲しいと願ってくれたから、俺はそれに従って本能のまま花恋さんを弄ぶことにする。


 たしか、花恋さんはお腹を撫でられるのが弱かったよな? どうせ俺の性癖は城戸先輩に暴露されていることだし、好き勝手やらせてもらおうかな。


「あ、お腹……、撫でないで……、わたくし、そこ弱いの……」

「知っています。教えてくれましたから」


 消え入りそうな弱々しい声と共に熱を持った吐息が漏れているようだが、そんなことお構いなしに花恋さんの長い髪に鼻を埋めて匂いを嗅ぐ。女の子を後ろ手に縛って抱き着き、襲い掛かる男子高校生。こんなのどこからどう見ても完全に変態だ、下手したら手錠を掛けられる可能性も? そうなってしまっては言い訳のしようもないな。でも今は変態と罵られてでもこうしていたい。


 城戸先輩は本当に俺の性癖を理解している。どこでどんな観察をされているのかは怖くて聞けないが、俺が脳内で描いた非現実的な妄想が目の前に再現されているのだから今だけは文句はない。むしろ感謝する。


 撫でるのはお腹と頭、それとたまに首筋を指先でなぞる。それ以外は一線を越えてしまうから懸命に我慢する。スカートが捲れてむき出し状態の太腿に触れるなんてとんでもない。脚フェチは唯人の範囲だ。だけど俺は全身を花恋さんに密着出来るように膝を曲げて足先までも押し付ける。


「いぶきぃ……、ふあっ、おなか、きもちいいの」


 脳味噌をかき混ぜるような甘い声と匂いに包まれて、最高の触り心地なお腹に触れ続けているうちに花恋さんは完全に出来上がってしまったようだ。ちょっと今回のルートで俺はいろいろやりすぎている。


 でも完全に無抵抗な花恋さんを苛めるのが楽しくて仕方ない。こちらが少し責めたらこのように見た目相応に弱々しくなるのがいけないんだ。これは俺の嗜虐心を大いにくすぐる。……これが寝込みを襲うということだろうか? ……違うけど似たようなものだろう。


 心春相手だと抱き合ったりしても別に変ったことはないのだが、花恋さん相手だとなぜか一方的に苛めたくなる。俺の性癖面の欲望を満足に満たせる相手が花恋さんというか、ものすごく如何わしくなるが、俺はやっぱりそういう性癖をお持ちのようだ。


「ねえ、いぶき、……キス……して?」


 俺の腕の中で花恋さんが舌足らずにそんな可愛らしいお願いを申した。これには少々迷ってしまい手の動きを止めた。


 花恋さんの身体を俺と対面にする。顔を間近で見つめ合い、その吸い込まれてしまいそうな黒い宝石みたいに綺麗な瞳を覗き込む。


 本当に花恋さんが望むのなら俺はそれを叶える。花恋さんが無意識に呟いたことであれば一度冷静にさせる必要があるが、どうやら本気で口にしたらしい。これくらい元から決めていたこととばかりに目がキスを求めていた。


 そんなことを考えているうちに、一瞬で顔を寄せてきた花恋さんに唇を奪われた。……時間にして三秒も繋がっていない、そんな短時間でも今の花恋さんは目を回してしまうほどに満足したみたいだ。


「……花恋さん、そろそろリボン、解きますよ?」


 くらくらとして俺のことがまともに見えていない花恋さんの手首にある結び目をするすると解いていく。腕からは上半身に続いて巻かれているから花恋さんの上体を起こして解いていく。


 ……さて、こしまで解いたはいいが、これから先は下半身に移るわけだ。あとは花恋さんに自分で解いてもらおうと思ったが、手を猫のように軽く丸めて恥ずかしそうに口元に当てている。何かを期待するような、それでいて不安気でもある目で俺のことをちらちら見ていて、俺が声をかけても動いてくれなかった。


「じゃあ、少しだけ、腰を上げてください」


 花恋さんはこくんと小さく頷くと、ぱたりとベッドに背中を倒してから俺の言う通りほんの少しだけ腰を上げてくれて、瞬時にお尻部分のリボンを解く。ここまでくれば後は足だけだ、問題ない。……そう思っていた。


 ロリータファッションのスカートがどのような構造をしているのか分からないが、フリルにリボンが引っかかっていたらしい。早く終わらせようと焦っていたものだから、引っかかったまま俺は上にリボンを持ち上げた。


 フリルが引っ張られてスカートも一緒にぱさっと持ち上がる。


「あっ……」

「〜〜〜〜〜っ!」


 花恋さんは茹でだこのように真っ赤になった顔を両手で隠す。俺はふわりと持ち上がったスカートの奥に釘付けとなった。


「黒薔薇……?」


 黒い薔薇が咲いていると思ったが、それは細かく刺繍されたランジェリーの柄で、かろうじて大事な部分は隠れている。普通はドロワーズというものを穿いているのではないかとか考えるよりも、目の前の黒薔薇の花畑があまりにも美しくて、俺の中の余計な良心は捨て去られた。


 柄の隙間から窺える奥に、際どいぎりぎりの位置にまで余計なものは一切なくて、見えるはずもない太腿の付け根はあまりにも白くて綺麗に浅く降り積もった雪原、または新雪のように美しい。


 視界の中央には以前に俺が選んだ黒、その事実が押し寄せてくる。理性を崩壊させる止めの一撃。


 つまり、俺は何が言いたいかというと……。


 ――そこに、楽園が広がっていた。







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