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いつか選択肢に辿り着くために  作者: 七香まど
三章 聖羅ルート攻略シナリオ
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89聖羅ルート 乙女回路

 お化け屋敷講習会から一夜明けて、そしてまた夜になると、俺の携帯が着信を知らせた。


 タイミング的に唯人かなと思って画面を見ると、そこには珍しく聖羅の名前が表示されていた。


「なあ心春、昨日から今にかけて聖羅から連絡がきたことはあったか?」


 電話に応答する前に、当たり前のように俺の部屋で漫画を読んでいる心春に問いかけると、顔を上げて首を横に振った。


「ううん、ないよ。電話かかってきているけど、聖羅ちゃんから?」

「ああ、だからおかしいんだよな、“深夜の相談事”については心春に連絡がいく設定だったのに」


 改めて脳内のシナリオと設定を見直しても、唯人は俺に、聖羅は心春に相談を持ち掛けるとある。何か手違いでも起きたのか?


 とりあえず通話画面をタップして耳に当てる。


「もしもし? 聖羅が俺に掛けてくるとは珍しいな、なんだ? 心春にも聞かせられない事か?」


 聖羅が何を目的として俺に電話してきたのか真意を探る。


『えっと、近くに心春はいない?』


 いないかどうか聞くということは俺にだけ話したいと判断する。だから、手だけで心春に合図して部屋を出て行ってもらう。


「ああ、いないよ、部屋には俺だけだ」

『そうなんだ、えっとね……一颯に恋愛相談をしたくて電話したんだ』

「……どうして俺なんだ? 心春の方が女の子同士話しやすいだろ?」

『そ、そうなの? ごめん、あたしそういうのに詳しくなくて……、一颯なら話しやすいかなって思ったから……』


 陽菜ルートではデートのことでいろいろアドバイスをくれたのに、付き合う前のことについてはてんで駄目なようだ。今からでも心春に代わってもらった方がいいかな?


「今からでも心春を呼ぶか?」

『い、いいよ! 大丈夫、あたしが一颯に電話したのは唯人について聞きたかったからだし』


 なるほど、迷走しつつも情報を集めようとした結果だったか。なら、せめて聖羅が唯人に告白するきっかけを作れるように俺が情報提供するまでだ。


 今思えば、ここまで長い月日だったな。何を聞かれても答えられるだけの自信があるよ。


「それで、唯人の何が聞きたい? この際、好きなだけ聞いてくれ、この俺が何でも答えてやる」


 聖羅ルートにおいては聖羅の方が唯人に詳しいなんて野暮なことは言わない。


『えっと、……唯人って好きな料理ってあるのかな? あたしみたいなギャルじゃなくて、家庭的なお淑やかな女の子の方が好きだったりするのかな?』


 声がかなり不安がっている。俺の答え一つで失恋とまでいきそうな震えた声だ。だから俺はその不安を払拭するために自信に満ちた声で答えてあげる。


「唯人の好きな料理は主に肉料理だな、あの体格だしボリュームがあると特に喜ぶぞ。聖羅が作った料理の中で、最初に食べた親子丼がまた食いたいって言っていた、あいつは鶏肉が好きだからな」


 これは陽菜ルートと聖羅ルートの間に遭ったノーマルエンドで俺が出来る限り調べ上げた唯人の情報だ。聖羅の印象等を聞いているから質問にも余裕で答えられる。


「別にお淑やかでなくても趣味が合うとか、話しやすい相手の方が気が楽とは言っていた。その分、聖羅は相性がいいんじゃないか?」

『そ、そう? えへへ、よかった。あと、教えづらいと思うけど、好きな服とか、……なんなら何フェチとか……、ダメ?』

「何でも答えてやると言ったろ、任せろ。実はな? 唯人はミニスカートが大好きなんだ。背が高いからあまり近くで見られない女子の素足にロマンがあるんだとさ、あまりこういうことに詳しくないあいつの口からまさか“絶対領域”という特定の言葉が飛び出すとは思わなかったぞ」

『うっ……、あたし、いつもルーズソックスかアンクルなんだけど、ニーハイとかの方がいいかな?』


 なかなか男の俺には難しい質問が飛んでくるが、ここは心春から教えてもらった知識でなんとか俺の思い描く唯人の性癖を伝える。


「私服ならスカートにこだわる必要はないぞ。あいつはミニスカートも好きだが、足が見えるならそっちを優先する。ショートパンツなんかどうだ? そこら辺のファッションは聖羅の方が詳しいだろ」

『ショートパンツにニーハイとかニーソなら唯人の視線を引けるかな……? ちょっと今度唯人の部屋に遊びに行くときに試してみる。あとは……、唯人の好きな色って何かな?』


 ここにきてシンプルというか、先ほどの質問から難易度が急に下がったなと思いつつ、聖羅ならヘアピンの色とか関係あるかなと予想して答える。


「あいつがいつも持っているのは白系統が多いな。とにかく純粋な色が好きと聞いたことがある。赤とか青とか、……だとしたらやっぱり白が好きかもしれない」

『く、黒はどうかな?』


 聖羅の髪との相性もあるし、似合わないのに着けていても気に入ってはもらえないだろうからな、どう答えよう。

「どうだろう……、黒にするくらいだったらピンクとか女の子らしい色の方が良くないか?」

『唯人って、……黒じゃ欲情してくれないのかな……?』

「……ごめん、聖羅のその色は何を目的に使われるんだ?」

『その、し……下着の……色……かな。あと紐が好きとかそういうのも知りたい……』


 非常に困った。流石にこの質問は俺には答えられない。どんなにむっつりスケベなあいつの事でも好きな下着の色までは聞いていない。……くっ、あまり使いたくない手だけど、“あの人に”頼るしかないか?


「聖羅、唯人については俺がいくらでも答えられる自信はあるんだけどな、その先にすすんだ恋愛となると専門家に聞いた方がいいと思う」

『専門家って?』

「聖羅も知っている女子寮の副寮長だよ。城戸舞衣子先輩だ」

『え? でもあの人って事務所の関係で恋愛NGじゃないの?』


 そういえばそんなことも言っていたっけ? 部活大好きでイベント事には時間を空けて必ず顔を出す人だから有名人だってことを忘れがちだなんだよな。


「恋愛NGでも相談に乗るのは問題ない。正直あの人にお願いするのは気が乗らないけど、聖羅の為だ、城戸先輩に連絡しておく。あの人は視点が鋭いから、聖羅みたいな話にも十分相談に乗ってくれるよ」

『ありがとう、ありがとう一颯!』

「あとは唯人が聖羅のことをどう思っているのかさりげなく聞いておく。明日か明後日に連絡するよ」


 本当は唯人も聖羅のことを気になっていると、自身を持たせてあげたかったが、どうしても前日の唯人の態度が気になって、それをこの目で確認せねばならない。


 聖羅との通話を終え、俺は深呼吸を一つしてから祈るように城戸先輩にメールを送る。


 ほどなくして帰ってきたメールにはこう書かれていた。


『貸し二つ』


 俺から頼みごとをする身ではあるが、さすが城戸先輩、図々しいな。


 こちらのお願いの内容を文面に起こそうとすると、もう一つメールが入る。


『先払い 一つ、この中から霜月兄の好きなものを選んで“正直”に応えること』


 そのメールには三枚の写真が添付されていて、なんだろうと思ってそれらを開いた瞬間、俺は頭痛に苛まれた。頭を抱えて眉間に皺を寄せる。


 そこにはそれぞれ、赤、黒、白の三枚の煽情的な下着の写真が添付されていた。比較はないが、サイズ的には少しばかり城戸先輩にしては小さいように思えた。女性ってこんなもんなのか?


 ……いや、俺が城戸先輩の何かを知っているわけではないが、だからといってそれ以上思考を回転させるのも危機感を覚えた。


 しかし、……どうしたものか、正直に答えて弱みを握られるのも……、いや、ここは聖羅が無事に唯人とカップルになるため、俺が一肌脱ごう!


「こうなりゃやけだ!」


 俺はフィーリングで……、いや、嘘です。完全なる好みで選択した色をメールで返した。







章を付けてみました。よく分かっていないので何か間違っていましたらご指摘ください。


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