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いつか選択肢に辿り着くために  作者: 七香まど
三章 聖羅ルート攻略シナリオ
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82聖羅ルート 夏休み前の日常

 翌日にはもう帰ってきた期末テストの結果は、案の定、唯人は頭を抱える結果となった。


 俺は今回も点数が良くて先生に訝し気な視線を貰ったが、前回のようにほとんどを寝ていたのではなく、同じ共通ルートということで余裕ができた分授業を受けることが出来たからお小言もない。これにはさすがの先生も努力を認める他あるまいな。


「課題をほったらかしていたからプラマイゼロだぞ」

「……はい、完全に忘れてました」


 やらなくてもいいだろと、一度でもそう思ってしまったら今日まで課題の問題集は日の目を見ることはなかった。


 心春も聖羅も課題が出された傍から解いていったらしく、家でやるところを見なかったからなおさら忘れていた。


 聖羅に呆れられて、唯人は仲間を見つけたとばかりにきらきらとした笑顔をぶつけてきたが、俺は赤点を回避できるから仲間ではない。唯人の授業態度が先生に認められて赤点を免れるよう尽力はしているみたいだけど。


 クラスが一喜一憂に騒々しさが増す中、俺は心春にテスト結果はどうだったかメールで聞いてみれば、ピースサイン一つだけで返事がきた。無事今回もいい点数が取れたみたいだな。


 そういえば、前はここで花恋さんから朗報があると連絡がきたのだが、今回のそれは通過点に過ぎないため、事前に情報を共有して作戦を練っているところだ。柔道部の練習稽古、そこに唯人を引き合わせるかどうかはまだ検討中で今日、明日には決断をしておきたい。


 ――夏休みまでの一週間はこれからのことを考えての休息と捉え、唯人と聖羅に手出しするようなことはしなかった。


 シナリオが存在しない為、どこが聖羅ルートの終着点なのかも不明だ。決まったイベントに尽力すれば失敗するようなこともないだろう。愛陽が提示した謎を唯人が解けるように仕向ければそれで終着点は見えるようになっていると陽菜ルートで学んでいる。


 クラスのほとんどがやる気を見せない秋学期からの授業を机に突っ伏して聞き、課題が終わっていない奴らは成績が確定する前に滑り込みでペンを走らせている。


 そういえば、今回は聖羅が反省文を書かされるということはないみたいだ。何か特定の行動が必要だったのか、陽菜ルート限定だったのかは不明だが、こういう小さなところで変化が起きているのは飽きが来ないようにする配慮だと俺は勝手に解釈する。


 これのせいで重要なシナリオを見逃すことがないようにしないといけないが、せめてこれくらいは楽しめるよう努めなければこれからもやってられない。


 何も急ぐことはない一週間はゆったりと時が流れ、今日は演劇部の舞台発表の日だ。体育館には生徒、教職員等がパイプ椅子に座ってひしめき合い、いざ舞台が始まると、流石他校にも人気があるだけあって誰もが舞台に注目した。


 今回は心春が舞台に立つ必要はなく、俺のパートナーとして二人で裏方の仕事に精を出す。なんだかんだ裏方の二年をまとめるリーダーだったりする俺は、てきぱきと台本を手にキャスト陣を舞台に送り出すための指示を出す。


 暗幕を下ろしたり照明の指示を出したり、セットの入れ替えなど目まぐるしく次の仕事がやってくるが、リーダーの俺が音を上げるわけにはいかない。心春が舞台に立った前のルートでは俺の代わりに仕事を引き受けてくれたから、そのお返しも兼ねて完璧な仕事をこなす。


 表舞台に立つ城戸先輩や柊木先輩たちが存分に輝けるように一致団結できるこの裏方の仕事が、俺は好きだ。


 拍手喝采の中、無事に幕を下ろすことができた俺たちが汗だくとなって床に座り込む。裏方が着る黒のポロシャツで汗を拭き、俺はみなに声をかける。


「最後のあいさつだ、笑って拍手に応えようぜ!」


 三年のリーダーと肩を組みながら下ろした幕の前に立って演劇部全員で頭を下げると、先ほど以上の拍手が俺たちを包み込んだ。遠くに立って大きく拍手を送ってくれている唯人は背が高いから頭一つ飛び出て見つけやすい。俺たちは各々好きに手を振って舞台袖へと戻っていくのだった。


 ――片づけが終了次第、花恋さんのお言葉と、柊木先輩の締まらない音頭によってささやかな舞台成功のパーティが開かれる。


「そういえば一颯、今度の柔道部の合同稽古には来るのかしら?」

「開始時間は把握しているので、稽古開始前に可能なら唯人を引き合わせてみます。失敗したらそのまま遊びに行く体で誤魔化す感じです」

「分かったわ、タイミングを合わせる必要はあるかしら? 必要ならインカムを渡しておくけども」

「特に必要はないと思います。引き合わせるのは簡単ですし、俺たちの出番はないので」


 花恋さんは今回の作戦を聞いて小さく笑う。たしかに俺の考えた作戦は安易で少し考えれば誰でも思いつく案だから、不思議と俺も笑いがこみ上げてくる。


「お化け屋敷講習会の日程って決まってますか? 花恋さんの行動に支障のないよう動けるようにしたいですし、あの二人をお化け屋敷に誘導して驚かすためにも俺が二人とはぐれるタイミングも図らないといけませんし」

「顧問と最終の確認をして夏休み前の最後の活動日に予定表を渡すわ、細かい時間についてはまた心春を交えて話し合いましょう」


 あまり俺たちがこそこそと話していることが不審に思われないよう、花恋さんは城戸先輩と柊木先輩を労いに向かった。


 花恋さんだって舞台で活躍したキャストの一人だというのに、今更ながら花恋さんのことを褒めればよかったなと、後悔しつつ、役目を終えてなお輝き続ける花恋さんの小さな背中を遠巻きに見ていた。







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