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いつか選択肢に辿り着くために  作者: 七香まど
三章 聖羅ルート攻略シナリオ

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67チュートリアル 選択肢……2

「ええ……、椎崎唯人です。急な都合でこっちに引っ越してきたのでこの土地のことは何も知りません。仲良くしてくれたらうれしいです」

「それじゃあ、椎崎は後ろの空いている席に座ってくれ、隣の霜月にはお前の学校案内を頼んであるから分からないことは何でも聞くといい」


 翌日、唯人はいつも通り転校してきた。これといって変化があったわけでもなく、加賀美先生は生徒たちにブーイングの嵐を受けながら、唯人はでかい図体を委縮させて自己紹介を済ませる。


 隣に来れば軽く自己紹介を済まし、一限の授業まではクラスどころか学年の主役としてもみくちゃにされていた。


 押し寄せる人波を制御しようなんて俺一人で出来るものではないからこの状況を作った聖羅に全て押し付けて俺は一人で廊下に出た。


「一颯の裏切り者―!」


 怨念の籠った聖羅の叫びに付き合わず、人波に押されて目を回していた心春に手を差し伸べる。


「大丈夫か? 昼休みに時間は取ってあるから無理はするな」

「あ、ありがとう、一颯くんはこうなることが分かってたの?」

「先に伝えておけばよかったな。聖羅の連絡網のせいで他クラスからもこうして唯人の元へ押し寄せてくるんだ。それに心春が潰されかけて目を回すから助けに来た」


 心春の腕を引いて廊下の手すりまで誘導する。まだまだ増え続ける同学年たち、聖羅の情報網を甘く見ていた。しっかり観察するのは初めてだが、まさかここまで押し寄せているとは思ってもいなかった。これを俺と聖羅で制御しようなんて、……馬鹿のすることだな。


 聖羅の自業自得に付き合う気にはならず、その後の聖羅は精気の抜けた表情で午前の授業を受けていた。


 ――昼休みになれば心春がやってきて、唯人を三人で囲った。


 俺たちは唯人に自己紹介をし、シナリオに沿って質問をする。


「唯人、すでにだれか気になったやつはいたか?」

「え? 気になった人……」


 これには心春や聖羅も興味津々なようで、唯人は誰を脳内に思い描くのか。唯人は顎に指を添えて一瞬だけ考え込む。


「…………」

「なになに? あたしのことがきになったの? もう、出会って一日で惚れるとか女慣れしてないのかよ」


 俺が出るまでもなく聖羅が反応してくれた。唯人の視線は分かりやすいほど聖羅の方を向いていて、前のルートの反省もあって視線に気を配っていたから余計に分かりやすかった。


「なんだよ、聖羅のようなギャルがお好みか?」

「あ、いや、俺の地元じゃ絶滅危惧種だったから」

「なんだって!? あたしが古い人種とでもいいたいのか!」


 聖羅が面倒くさいおっさんの絡みをしているおかげで俺は安堵の溜息を吐くことが出来る。心春にはこれがチュートリアルということを伝えてあるから俺の行動の意味も理解してもらっているはずだ。今回も心春は唯人が選択肢によって誰を意識したか分かったみたいで、俺が事前に説明したことに納得したのかうんうん頷いていた。


「なんとなく一颯くんが説明してくれたギャルゲーの選択肢について分かってきたよ。見逃すと大変そうだね」

「そうなんだよ、時には強引に選択肢を変更することもあるから心春の手伝いが不可欠なんだ。それに今回のルートからは前みたいにシナリオが有るわけじゃないから大変なんだよ」


 昼休みはこのまま聖羅が唯人にしつこく絡み続けて時間が迫る。俺と心春が二人の世界を作っていたとしてもなんらおかしくはないから聖羅は俺たちのことを無視して唯人にギャルムーブをお見舞いしていた。


 そのおかげもあってか、唯人は短時間で聖羅という人物をそれなりに理解したようで、女性に対してもそれなりに慣れたみたいだ。最後には豪快に笑いながら聖羅と肩を組んでいた。


 昔から……、いや一週目の時からそうだったのだが、聖羅と唯人の相性はおそらくヒロインの中では抜群にいいと思う。まだ三好さんと小鳥遊先輩との唯人を見ていないからはっきりとは言い切れないが、気兼ねなくはっちゃけられる相手というのは聖羅だけなのではないか?


 唯人は心春に対してはよそよそしいところを最後まで何度か見せていたが、聖羅に対してだけは男同士のような関係で遊んでいた。


 たしか俺と心春は二人が近いうちに付き合うのではなかろうかと密かに応援していたっけか? 卒業して進学して、いつの間にかできているなんて想像できるくらいには仲が良かった。


 そういえば唯人のトラウマもそれなりに回復していたのではなかろうか? 聖羅に触れることに躊躇いはなかったし、聖羅という存在は案外唯人にとって最も傍にいるべき人物なのではなかろうか。


 このことも含め、今日は家に帰ったら心春と相談しよう。聖羅のことについては俺よりも心春の方が詳しいからサポートをお願いしたい。きっと上手く聖羅を誘導してくれるはずだ。逆に俺は唯人に詳しいから隙あらば聖羅に特攻させてみたい。


 午後の授業まで残りわずかのタイミングで俺は思い出したことを唯人に尋ねる。


「唯人、校内の案内はどうする?」

「ぜひ頼む、でも今日は日用品を揃えないと面倒だからそっちを優先させてくれ。明日にお願いしていいか?」

「ああ、構わないぞ」


 唯人の部屋は段ボールで埋め尽くされているから、その中から日用品を見つけるのに骨が折れるのか。……前は寄る所があるとかで校内案内は翌日となったが、まさか唯人の片付け下手はここまで影響が出ていたとはな。







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