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いつか選択肢に辿り着くために  作者: 七香まど
二章 陽菜ルート攻略シナリオ
64/226

64陽菜ルート エピローグ

 唯人は今頃何をしているだろうか?


 合同稽古を終え、新しい仲間と打ち上げか月宮さんと二人きりか。……それとも世界は凍結され、長い眠りに就いているかもしれない。


 周囲の情報を集めることが許されない謎の空間に放り出され、意識や時間の感覚も把握することは叶わなかった。


 ここに来るのは二度目、前の時はこの空間にいること自体気付けなくて、目を覚ました時には教室で授業を受けていた。


 俺は無事に陽菜ルートを完遂したと考えていいのか? 本編のシナリオはほとんどをなぞるように終わらせたし、あの神もさすがにアフターストーリーとかいう十年後のシナリオまで付き合わせることはなかったみたいだ。そこには二人が家庭を築いて月宮さんのお腹の中に新しい命が芽生えている。俺はきっと二人を祝福するために会いに行くだろう。……これ以上は考えるのが怖くなって思考を闇に葬った。それが出来るのがこの場所なのだから。焼却場ならぬ、忘却場とでも呼べばいいだろうか?


 ――思考を闇に忘却する。


 唯人は合同稽古を終わらしてからのシナリオはないから俺が勝手に推測すると、唯人と月宮さんは体を重ねているのではなかろうか。


 ……俺が求めているわけではないぞ? ただ、この世界は十八歳未満御法度のゲームだから顧客のニーズに応えるためにも可能性としては十分すぎると俺は言いたいだけだ。それに、今日までそれらしいことをしている気配は微塵も感じられなかったからな。


 ……あれ? そうだとしたら世界は続いていると考えていいのだろうか? この世界はゲームだから、終わりは必ず存在する。だからこうして俺が次のルートへと転移させられているわけで、でも唯人たちは顧客の為に俺がいなくても動き続けている。


 可能性は微々たるもの。俺の知らない所ですでに、ということも十分にありえる。でも、もし俺の淡い期待に世界の真実が応えてくれれば、心春と花恋さんもそのままでいるかもしれない。俺のいない世界に取り残してしまったのかもしれない。


「…………」


 ダメだ、二人のことを考えたら未練がましく前の世界に縋ろうとしてしまう。


 ――思考を闇に忘却する。


 次に唯人を誰とくっ付けてみようか? 早めに難解そうな小鳥遊先輩のルートに持ってこようか、それとも身近な聖羅か。何にせよ、一番楽そうな三好さんは最後に残しておきたい。


 やるなら最も安全を期したい。情報が一番集まっているヒロインは誰だろうか……、うん、聖羅だな。あいつなら唯人のことを無下に扱うことはないし、恋愛に興味がないわけではなさそうだった。部活を引退、もしくは卒業してからと本人は言っていたが、恋人が出来る分には困ることはないだろう。


 だとしたら俺に出来ることは何がある? 聖羅とは高校に入って最も長く遊んできた友人の一人だ、言葉を口にしなくても伝わることは多い。聖羅は唯人のことを弟か何かのように見ていた節があったからそれには注意しなければなるまい。


「…………」


 ――思考を闇に忘却する。


 ……俺は今、何を忘れた? 何を考えていたか全く思い出せない。


 情報とは恐ろしいものだ。綺麗に消去したら復元できないのだから、思考放棄はほどほどにしなくては余計なものまで忘却してしまいそうだ。


 俺をこんな目に遭わせたあの野郎はエンジニアか何かの天才なのだろうか? あいつは俺たちの生きる世界を一つ創造して見せた。俺たちの時代では到底考えられない神の偉業を達成してみせている。あいつの生きる時代ではこれくらい当然なのかもしれない。俺と同じ目に遭っている人が多数存在するのかもしれない。


 ……もしあいつがゲーム制作に関して素人、他のゲーム会社と変わらないプログラミングをしているのなら、その時代の人間は人の心が分からない冷徹なやつばかりだと俺は見下そう。


「…………」


 ――思考を闇に忘却する。


 余計なことは考えなくていい。次はすぐそこだ。


 忘れてはいけない事さえ覚えていれば、余計な考えは俺の思考を邪魔するだけ。同じことの繰り返しに俺は何を見出せるか、その次のルートに何を活かせるかを考え続けて、一刻も早くゲームリスタートから脱却しなければ、俺は目の前の選択肢に辿り着くことはできないのだ。


 いつか……最後の選択肢に辿り着いた時、その選択肢は何を導いてくれる?


 一筋の光が俺という情報の塊を包み込んだ。


 数字だけで構成された俺の身体をばらばらに分解し、非現実的な魂だけが取り残された。もう目も見えていない。手足も分解されて、こうして物思いに耽ることしか許されない俺はやがて見覚えのある数字に固定される。


 思考や感情が強引に全てリセットされたような感覚に立ち眩みに似た感覚に襲われる。


「いや、もうゲームは始まっていたか……」


 六月十五日、見慣れた教室。俺の隣には席すら無くて、……俺はゲームのスタート地点に立たされた。









サブタイトルは変更するにしても単純なものになります。凝ったタイトルは時間が足りないので、三章の準備と並行で少しずつやっていく予定です。

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