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いつか選択肢に辿り着くために  作者: 七香まど
二章 陽菜ルート攻略シナリオ
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49陽菜ルート 納得の結果

 期末テストの実施日はあっという間にやってきた。いつもの四人の中で余裕があるのは俺と聖羅。心春と唯人はちょっと苦手分野で頭を悩ませているようだった。


 唯人には勉強のできる月宮さんが付き添っているおかげで恋も勉強も順調そうに思えたが、どうも化学で躓いているようだ。


 心春には俺が付き添っているとはいえ、そもそも俺自身、勉強が得意ではない。いわゆるチートを使っているような状態だから誇れるようなことは何もない。本来は罪悪感に苛まれている方が正しいのかもしれないがそんなことをしている余裕はなかった。


 心春と俺は揃って現国が苦手だ。漢字とかは覚えて書くだけだから支障はないが、物語を読んで主人公の気持ちを答えなさいとか、ここに入るべき文章は何かとか、さっぱり分からない。答えを知っている俺がなんとなくここら辺が怪しいよと心春と唯人を誘導する不審人物となり、四人で赤点は回避しようと勉学に励んだ。


 その甲斐あってかテストの自己採点では余裕で平均点を超えるくらいには手ごたえがあった。


 唯人は緊張した面持ちで額を拭っているが、その実、回答は全部埋められたらしい。聖羅に採点をお願いしたら、少なくとも赤点になることはないだろうとお墨付きをもらっていた。


 そんな聖羅は髪を後ろに緑色のシュシュでまとめるほどの気合いの入りよう。普段はコンタクトのところを黒縁の眼鏡に変え、化粧も薄くして三色のヘアピンも赤三つで統一されていた。不真面目に生きることを生業にしている聖羅とは思えないほど問題用紙にはメモやら書き込みがあった。


 放課後にやってきた心春はというと、手ごたえがあったとばかりにウインクと共にビシッとピースをくれた。


 ――翌日にはもうテスト返しが始まり、クラスは神妙な空気に包まれる。


 テスト日程と同じ時間割で返されるテストに一喜一憂するクラスメイト達、出席番号順だから俺の番はすぐにやって来る。


「霜月、カンニングはしてないだろうな? 今回はやけに点数が高いぞ」

「し、してませんよ、ちゃんと勉強頑張りましたから」

「その割には授業中寝ている頻度が高い気がしたけどな」

「その分、家とか図書館で頑張ったんですよ、生徒の裏の努力を認めてください」


 寝ていたのがばれたのは想定外だが、ちゃんと勉強した証拠があるから問い詰められても大丈夫。先生も冗談半分だったため簡単に納得して次の生徒の名前を呼んでいた。


 聖羅には遠く及ばないが、俺にとっては最高点数で乱舞したいほどだ。唯人と点数を比べてみれば俺が若干上で勝ってはいるものの、お互いに最高点数ということで優劣はつけず、唯人と華麗にパーン! とハイタッチを決める。勝負したら本当は俺が負けている可能性があるのは内緒。


 テスト返し中はなんだかんだ自由な時間がほとんどで、誰もが点数を誰かと比べている。月宮さんですら唯人の席にやって来て点数を窺っていたほどだ。勉強を教えていた身としては教え子の点数はやっぱり気になるところなのだろう。月宮さんはケアレスミスが無ければこのテストは満点で、平均点当たりで喜べる俺たちとは次元が違う。


 そのほかのテストも同じようなものだった。際立って高い点数の科目も無ければ、逆に赤点になりそうな科目もない。平均点を越えていることで両親にもびくつくことなく結果を報告できる。


 最後にテストを見直して採点の間違いがないか確認し、何もなければそれで点数は確定。俺たちの期末テストはこれで終わった。


 心春のテスト結果はどうだったのか気になり、こっそりメールで聞いてみた。しばらくするとマナーモードの携帯が震え、画面には心春の名前が表示されている。


『悪くなかったよ! 先生に頑張ったなって褒められた!』


 よかった、心春も勉強の成果は出たみたいだ。なんで俺はカンニングを疑われて心春は褒められるのかはまあ普段からの授業態度としか言いようがないだろうな。


 俺たちの結果も心春にメールで伝えて携帯をポケットに仕舞えばすぐにまた震えた。心春からかと思ったが、差出人は花恋さんだった。


『朗報があるわ、放課後に部室に来て頂戴。それとテストの結果はどうだったかしら?』


 俺にとって朗報と言えばシナリオに関わることだとすぐに考えが至る。今すぐにでも聞き出したいがさすがに授業中にメールだけで詳細を送ってもらうのは申し訳ない。


『点数は悪くなかったです。放課後に部室へ伺います』とだけ返信して携帯をズボンのポケットに入れた。


 基本俺はクラスの馬鹿どもの一人であることに変わりない。他の奴らと点数を見せ合っては罵ったり悔しがったりして最後には笑い合う。唯人は月宮さんの近くに行って雑談している。テスト用紙を見せているから解説を受けているのかもしれない。


「なあ、聖羅って好きな男とかいないのか?」

「お、なに? 嫌味か? あたしが心春からあんたを奪っていいのか?」

「俺の心を奪えると思っているのか?」

「ううん、無理、心春からあんたを取るとか命知らずかよ。だったら心春を取る」


 心春ってそんなに怖い存在じゃないはずなんだけどな。逆に俺が心春に近づく者を片っ端から撃退した過去があるからかな?


「あれ見ろよ、唯人が月宮さんといい感じだろ、だから聖羅にはああいう青春はないのかなって」

「あたしは部活で精一杯よ。少なくとも引退するまでは誰とも付き合う気はないかな、でもその後は受験だし、進学先で彼氏でも見つけるつもりよ」

「部活で青春を謳歌してんだな」

「あたしは三年を退けての班長よ、不真面目な姿は晒せないね」


 一度決めたことには一直線の聖羅は、好きなことに忠実に、そして誰からも頼られる姉御のような存在になりたいと前に聞いたことがある。


 これは聖羅が専門学校に進むと告白した時に聞かされた時のことで、ちょっと寂しくなるからこれ以上に思い出を掘り返すのはやめよう。


「今回のテストで夏休みにやるべき課題が各々見つかったと思う。進学を考えている奴はこの二年の夏から勝負は始まっているぞ。就職組も企業に目を付けるにあたって三年も二年もないからな、企業の情報はしっかり調べておけ。あと神楽坂、反省文の提出は終業式前日までだ。遅れたら容赦なく成績に反映させてやるからな」


 聖羅……、まだ提出してなかったのか。最近やけに部活が忙しいと口にすると思ったら、言い逃れの理由をアピールしていたのか。そういえばそれを口にするのも先生が近くにいた時ばかりだったな。


「そんなの聞いてないですよ! ちょっと出歩いていたくらい別に――」

「“鬼仕様”がいいか?」

「頑張って書きます! 明日には提出できる予定です!」


 この前書いていたやつを紛失してから書く気力が無くなって、そのまま放置していたそうな。


 不真面目な姿は晒せないと力説していたあの時の聖羅は偽物だったのか? こんな姿を見られたら後輩に笑われるぞ。








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