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いつか選択肢に辿り着くために  作者: 七香まど
四章 真奈美ルート攻略シナリオ
112/226

112真奈美ルート 唯人の初挑戦

 愛陽として唯人たちに謎を提示したその日の夜、心春とゲームをするくらいしかやることがなくて暇を持て余していた時に、俺の携帯が着信を知らせた。


 聖羅か唯人か、さてどちらだろうかと予想する。


 画面には唯人の名前が書いてあることから聖羅だろう。


「もしもし、聖羅か?」

『残念ながらオレだ。聖羅は部屋にいるけど漫画に耽っている』


 二択を外した。地味に悔しい。この世界では選択肢は常に逆が選択されるようにできているのか?


「そんで、なんの用だ?」

『女子の家に行くための心構えを教えて欲しい』

「何があった? 彼女の家に挨拶か?」


 知っているけどさ、ここで俺が知っているのはおかしいわけよ。唯人が小鳥遊先輩の家に遊びに行くが初めてのことでどうすればいいか分かっていない。


『ちがう、ちがう! 実はちょっと先輩に誘われて勉強を見てもらうことになったんだ。でもオレは今まで女子の家に行ったことなんてないからどうすればいいか分からなくて……』

「そんな身構えるほどのことはないぞ。下手に緊張するよりは自然体でいけば問題ないさ」

『それが出来たら苦労しないんだよ! なあ、心春ちゃんとよく遊んでいるんだろ? 何か覚えておくべきこととかないのか?』

「聖羅に聞いてみればいいだろ。どういう男子なら家に上げてもいいと思うか、聞いてみればいい」

『恥ずかしくて聞けるかよ、一颯に話す事さえもかなり恥を忍んでいるんだから』


 うーん……、少々面倒くさい。俺と心春は幼馴染だったからアポなしで遊びに行く、それどころか親に一言聞くだけでお泊りまで普通の事だったからな、あまり参考にならないかもしれない。


 唯人が聖羅に聞けないなら俺が聞くか……。


「ちょっと聖羅に代わってくれ、俺じゃちょっと参考にならなさそうだし、俺も気になるから聖羅に聞いてみるよ」

『あ、ああ、……そういうことなら』


 聖羅と小鳥遊先輩とは性格が真反対だから参考になるかは分からないが、男共が無い知恵を絞るよりはヒントが見えてこよう。


 唯人が聖羅を呼べば「んー?」と生返事が聞こえて、しばらくして聖羅が電話に出た。


『どしたん? 心春のことを夜這いしたくなった?』

「いきなり何を言っているんだよ。……ちょっと気になったことがあってな、家に男子を呼ぶとして、どんな奴なら許せる?」

『なに? 唯人ったらそんなことで悩んでいたのかよ。うぶじゃん、可愛いな、おい』


 まあ筒抜けよな。小声で話していたとはいえ、俺が聖羅にこんなことを聞いたことで答えが出たようなものだ。


『あたしの場合は本命だけオッケーかな、あたしが男子を招くってなると誤解が生まれそうだし、そうしてる。部活の後輩に誰でもウェルカムなんて子がいるけど、基本、誠実で立場を弁えているなら問題ないんじゃないかな? 唯人なら呼ばれたところで何か問題を起こす、なんてことは考えられないかもね』

「最後については同感だ。ちなみに唯人の相手は無口な先輩で、ちょっと勉強会にお呼ばれしているくらいだ。それでも呼ぶときは呼ぶのか?」


 聖羅に隠したところで情報通の彼女ならすぐにばれる。誤解を与えないか心配だったが聖羅はこちらと唯人の気持ちを汲んでくれて、声音は茶化さないことを誓ってくれていた。


『分かってるよ、変な勘違いはしないでおくから安心してね。それと無口な先輩と言われて何人か思い当たる人がいるけど、……まあそれはさておき、仲がいいのであれば一度くらい招くくらいはあると思うよ。男女二人ずつ以上、グループでがほとんどだとは思うけど、まあ相手のことを信用しているなら一対一で招くくらいはあるよ。あとは人の家に行くんだから男女問わずマナーさえ守っておけば大丈夫でしょ』


 ぶっちゃけ最後の部分を詳しく知りたかったのだが、唯人には自分で調べてもらおう。聖羅に聞けば教えてくれるというし、そこら辺で躓くようなイベントにはならないだろう。


 漫画の続きが読みたいという聖羅は唯人に携帯を戻し、聞こえてきた唯人の声は焦りに満ちていた。


『ど、どうして聖羅に話したんだよ! オレが女子の家に行くってばれたじゃないか!』

「すぐにばれることだし、高校生なんだからこれくらいで狼狽するな。女子の家に遊びに行く高校男児は何も世界で唯人一人だけじゃないだろ」

『いや、極論的にはそうだろうけどさ! は、恥ずかしいだろ? 女子の家に男一人で遊びに行くって……』

「おいおい、俺は恥ずかしい奴かよ、酷いな。……まあ相手から誘ってくれたなら言い訳もできるだろ。せっかくだ、心機一転、青春でも体験してこいよ」

『そんな下心は無いからな、ただ誘われたけどどうすればいいか知りたいだけなのに』

「正しい答えなんてないさ、いつもの真面目なお前でいればいい。大丈夫、お相手も高校生相手に完璧なマナーなんて求めてないさ」


 そんなもんか? と唯人の溜息が聞こえたところで、俺の部屋に心春がやってきた。


 風呂上がりで顔から蒸気を立ち昇らせながら、手にはドライヤー、いつも俺が乾かしてあげているからだ。


「あ、一颯くん、電話だったんだ。じゃあ今日は自分でやろうかな」

「心春、すぐ切るから俺がやるよ。ということで、じゃあな、唯人、頑張れよ」

『俺より心春ちゃんが優先か、一颯らしい。それじゃあな』


 ぷつっと通話が切れて、画面は真っ暗に染まる。


 さて、むさくるしい男の会話よりも、心春の髪を乾かしてあげる方が心は静まる。


 風呂上がりのシャンプーの匂いを嗅いでも怒られないしね。


 ……こんなだから城戸先輩には俺の性癖がばれているんだろうな。







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