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ユウは王様と話す


∇ ∇ ∇


 ヤンカに抱かれドラゴンに乗っていた、ドラゴンからの景色は夜でも綺麗と感じていた。


「ふわぁぁぁ!!」


 そんな綺麗な景色を見ながら目を輝かせて声に出ていた。


「そんなに身を乗り出したら危ないですよユウ様」


 ヤンカははしゃいでいるのを見て微笑んでいた、さっきまで拉致しようとしていた顔はどこかにいってしまったようだ。


「もうすぐ夜明けです」


 ドラゴンを従えている騎士に言われ、さっきまで暗かった空は少し明るくなってくる、少し飛んでいると何かが見えてきた。


「ユウ様下をご覧ください」


 ヤンカに言われ下を覗いた。


「あそこが王都ユグドラでございます」


 既に店の外に出て商品を陳列している人がいた、他にも朝早くに起きた子供達が外を走り回っているのが見える。


「すごいですね、こんなに朝早くから働いている人がいるなんて」


「そうですね、それであちらが王家の方達が住まわれている王宮でございます」


 ヤンカが指差した方向を見つめた、王宮の壁は少し壊されているのが見えた、するとドラゴンが揺れて懐にしまっていた短剣が落ちてしまった。


「あっ!」


 すぐに気づきヤンカに頼むと。


「分かりました、他の騎士に連絡して落ちた方向を探してもらいましょう」


 どうやら取りに行かせてもらえないらしい、ヤンカに抱かれたままドラゴンから降ろされる。


 ドラゴンが降り立った場所には鎧騎士が数名出迎えていた。


「よくぞいらっしゃったユウマルシェルナシー殿」


 数人の騎士が、その場で跪きヤンカはゆっくりと歩き始める。


 騎士達が立ち上がるとドゴンと音がした。


「少々お待ちを、すぐに別の騎士が王の下に案内されるので」


 数人の騎士は音がした方向へと走り出した。


 少し待っていると一人の騎士が歩いて来ていた、普通とは違い仮面を外しており素顔であった。


「どうぞ王の間へと案内します」


 ヤンカに抱かれ騎士の案内で王の間へと行くのだった、そこには扉が無く。


王様が座っているのが見えた。


「よくぞ来たなユウマルシェルナシー」


 案内してくれた鎧騎士は王様の隣に立った。


「えっと初めまして私はユウマルシェルナシーでございます」


「堅苦しい挨拶はよい、ヤンカよ下がってよいぞ」


「はっ」


 ヤンカに降ろしてもらうと、そのまま王の間から出て行ってしまう。


王様と隣に立った男性の騎士しか残っていない。


「君はマーミヤと同い年だったな」


 王様の口が開く、緊張してコクコクと頷くしか出来なかった。


「緊張しているのか」


 王様が問いかけてくるが、頷くしかできない。


「そんな緊張なんてしなくてよい、こうして会うのは初めてだが気楽にしてくれ」


 すぐに騎士達が現れ椅子と机を持ってきた、そこに座らせられると紅茶とクッキーを置かれた。


「まあ少し話をしよう、君について教えてくれ」


「えっと」


 自分についてなど分からず、考えていると、慌てた騎士が王の間に入ってきて玉座にまで走っていく。

 

 王様に耳打ちをすると、隣の男性に耳打ちをして隣の男性はゆっくりと歩き出ていく。


「気にしなくてよいぞ、それで君についてだが」


 分かる範囲で王様の質問に答えた。


「まあ姉が六人もいては大変だろう、君も苦労をしているのだな」


「王様もそうなんですか?」


「ああ、俺にも姉が三人いてな、まあこの城にはもういないがな、よく外に連れ回された」


 王様は昔話を話始めた、王様の昔話を聞いていると涙を流し始めた。


「それは……辛いですね……」


「おいおい、泣かないでくれよ」


 王様は立ち上がり、近づいてくる、机に置いてあった紙の束から一枚取り渡してくれた。


「ありがとう……ございます……」


 ズビーと鼻をかむと、もう一枚紙を取り涙を拭いた。


「落ち着いたか?」


「はい」


「ならそろそろ本題に入ろうか」


「シル姉さんの事ですね」


「ああ、実はなシルマルシェルナシーは牢屋から逃げ出したんだ」


「そうだったんですか!?」


「そうなんだ、今は竜騎士の憲兵を追わせているが、君に聞くぞシルマルシェルナシーを殺しても構わんか」


「ダメです!! シル姉さんを殺しちゃ!」


 椅子から立ち上がる、立ち上がった衝撃で倒れたが気にしない。


「そうか、実は君に会うまで迷っていたんだ、シルマルシェルナシーを殺すか殺さないかで」


「やっぱりマーミヤさんの件ですよね」


「そうだな、だが君から姉達の事を聞いて分かったよいつも守られているんだな」


 王様に頭をポンポンと優しく叩かれる。


「ここですかユウ様がいるのは!!」


 すると突然ラヴァが入ってきた、王様と一緒に驚く。


「貴様! ユウ様に何をしている!!」


 ラヴァは頭を叩く王様に気づくと、近づく。


「ああ、待った、待った、この子は返してやる」


 王様は背中を押し、ラヴァに返すと言った。


「返すだと」


ラヴァの声はまだ怒っているようだった。


「王よその者は危険です!!」


 また入ってくる者が、さっき王様の隣に立っていた男性だ、鎧はボロボロになり持っている剣の先は溶けていた。


「何だ、まだ立てたのか、てっきり焼け死んだと思っていたのに」


 ラヴァは入ってきた男性を睨むと、王様に近づいて、剣を構え守る体勢に入る。


「私の目的はユウ様だけだ、返してもらうぞ」


 ラヴァに抱き上げられる。


「お前天恵の剣ラヴァだな?」


「それがどうした、私はユウ様の命令を守っているだけだ」


「まあいい帰ったらシルマルシェルナシーに伝えろ、魔種狩りに戻れと」


 ラヴァはゆっくりと出ていく肩から覗き込むと、男性は倒れそうになるが王様が支えた。


「王よありがとうございます」


 男性は気を失ってしまった、王様は倒れた椅子を立てて男性を座らせる。


「俺も甘くなったか」


 王様が呟く言葉は聞こえない。


∇ ∇ ∇


 王宮に生えていた草は燃えて、騎士達はそれを消火しようと必死で水を撒き散らしていた、それをラヴァは見つめていた、壊れた壁を通ると。


「あっ戻ってきた」


 ラヴァに気づき走ってくる。


「そういえばいたんだったな」


 ラヴァはこの子をどうしようか考えていた。


「どうかしたのか」


 ラヴァは少し警戒をして、隠そうとしたが、アリミの顔を見た瞬間抱いていた、ラヴァから降りて近づくのだった。


「アリミ!!」


「えっ私の名前はアリミと言うんですか?」


アリミが言うと分かってしまった。


「ラヴァまさか」


「ユウ様、この者は記憶を失っているようなんです」


「そんな、ほら君はアリミだよ!」


「アリミ聞き覚えはありますが、思い出せません」


「ユウ様、ここは危険です、一応この者も連れてここから離れましょう」


「うん」


 ラヴァに抱かれ王宮から走り出す、アリミもすぐに付いていく。


 王都を走っていた時だった、ラヴァは突然止まった、アリミはそのまま止まる事が出来ずに背中に当たってしまう。


「ラヴァ急に止まってどうしたの?」


「いや、あれが気になりまして」


「なんですかあれ?」


 ラヴァに指差された方向をアリミが見る、そこには店が並んでおり、色んな物が売っていた。


「分からない、だが美味そうな匂いがするな」


「あれは屋台トラックだよ、運転して食べ物を売ってるんだよ


 ラヴァは鼻をクンクンとして匂いを嗅いでいた、ゆっくり歩き、止まる、そこには屋台からいい匂いがした。


「貴様、ここの店主か?」


「うわぁ、なんだ嬢ちゃん驚かさないでくれよ」


「これはなんだ?」


「クレープだよ、食べるか」


「一つもらおう、ユウ様はどうしますか?」


「俺はいいよ、ラヴァ買ったらアリミと合流しないと」


「分かっております」


 いつの間にかアリミとはぐれてしまい、ラヴァに言う、店主はクレープを作り出していた、店主が見つめてくる。


「その子供どこかで見覚えがあるな」


「もしかして、ユウ様のお知り合いですか?」


「えっと」


「どこだったかは思い出せないがな、ほらよ」


「ありがとう」


 ラヴァは店主からクレープを受け取り一口食べた。


「うん、美味い、ユウ様も一口どうですか?」


「あっ、ちょっとこんな所にいたんですね!!」


ラヴァにクレープを一口食べさせられる所をアリミが見つけた。


「おっなんだ嬢ちゃんの妹さんかい」


 店主は笑顔で聞くが、ラヴァは首を横に振った。


「違うのかい、まあ知り合いなんだろう、君も食べるかい」


「いいえ私は結構です」


 アリミは断る、ラヴァはクレープを全て食べると店主に銀貨を一枚渡した。


「ありがとう、それじゃあまた食べたい時は食べに来てもいいからな」


 店主は手を振る、ラヴァはアリミと一緒にゆっくりと王都を歩き出していた。


 ラヴァとアリミは王都を抜けて、そのまま家まで徒歩で帰って行こうとしたが、上から声が聞こえてきた。


「ユウー!!」


 ラヴァは空を見上げ、飛び降りてきている者がいることに気づくが、遅かった、ラヴァから急に現れたシル姉さんに抱かれた。


「何者だ貴様は!!」


「私はユウの姉だよ、あなたこそ何者?」


 シル姉さんに頬をすりすりされる微笑んでいたがラヴァに呼ばれ、すぐに答えたがアリミの存在に気づいたようだ。


「あれ、アリミ、あなたもいたんだね」


「私を知っているのですか?」


「変だね私の事忘れちゃったの?」


「シル姉さん、アリミは記憶を失っているみたいで」


「そうなんだ、まあ話はゆっくり家に帰ってからかな」


 そう言ってすりすりしていたのを止め、翼を生やす。


「なっ、なんで人間が天使の翼スキルを」


「いいからアリミ、あの時の翼は生やせるの?」


 アリミは言われた通り、頑張ると、背中から黒い翼が生えた。


「私は先にユウと一緒に帰るから」


 そう言って翼を羽ばたかせて飛び去っていく、アリミはラヴァの体を掴んで飛ぶ。


「えっと付いていけばいいんでしょうかね?」


「そうだな、あいつは本当にユウ様の姉なのか?」


 ラヴァは気になっていた、だが今は付いていくしかないと思い無言でアリミと飛んでいた。

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