ラヴァはユウを守る
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マルシェ家の灯りが消えると王家から連絡を受けた騎士団のヤンカが足音を立てずに扉を開け中に入る。
そのまま先に進み部屋の扉を開けた、ベッドにはユウマルシェルナシーが一人で寝ていた、横には剣が立て掛けられている。
「すーすー」
寝息をたてているユウマルシェルナシーの顔に紙袋を被せようと近づいた瞬間。
ヤンカの周りが異様に熱くなってきた、体は汗だくになっている。
「ユウ様に近づく貴様は何者だ!!」
そんな言葉が聞こえ振り返ると、さっきまであった扉は溶け出し、赤髪の女が姿を現す。
「私は団長に頼まれ、ここの管理兼警備を任されているヤンカだ」
「私は知らないな、それで貴様が持っているその紙袋一体何に使うつもりだ?」
ラヴァは溶けた扉からヤンカに近づく、体の汗は止まらず、ラヴァが近づくと紙袋は燃え始める。
「ひぁっ」
ヤンカは燃え始めていた紙袋を投げ捨てすぐに足で踏む。
紙袋を踏んでいると燃えくずになっていた。
「いいか、ユウ様に手を出してみろ、今すぐに体を燃やして今の紙袋みたいに消し炭にしてやるからな!!」
ラヴァはヤンカに伝えると隠し持っていた槍を前で構える。
「そんな槍なんか私には効かないからな」
ラヴァはヤンカに答えると応戦出来るようにしたかったが寝ているユウマルシェルナシーがいるのであまり炎は使えなかった。
ラヴァはユウマルシェルナシーの方を気にするが。
突然ヤンカが槍を突き出す。
ラヴァはギリギリで躱す。
すぐに体勢を整えてユウマルシェルナシーを抱き上げる。
「ユウ様が寝ていらっしゃるのだ、気を付けろ!!」
ラヴァはヤンカの事を睨むが。
ヤンカはもう一度ラヴァの体に槍を突き出す。
するとユウマルシェルナシーの頬に突き出した槍が擦ってしまい。
頬から赤い血が流れ落ちた、ラヴァはユウマルシェルナシーの血を手で拭き取る。
「貴様、ユウ様を傷つけたな!!!」
「ひぃっ!!」
ヤンカはラヴァの顔を見た瞬間に怖じ気づいてしまった。
一歩後ろに下がり窓から逃げようしたが、さっきまでいなかった女が立ち塞がっていた。
「どこ行くんだよ」
ヤンカは逃げ場を失ったと思ったが、途端にユウマルシェルナシーが目を擦り起きた。
「あれ、何やってるのラヴァ、バケノ?」
「こいつがユウ様に何かしようとしていたのです」
「ん、あっヤンカさん、どうかしたんですか?」
ユウマルシェルナシーはラヴァが指差していた方向を見るとヤンカがいる事に気づいた。
「私は王よりユウ様を王都に連れてくるよう連絡を受けています、最初は拉致のように連れていこうとしていたのですが、どうやら無理なようですね」
「王都、シル姉さんが捕まっている所ですね」
「ええ、どうやらそこの方達は私を逃がしてはくださらないでしょうね」
「当たり前だユウ様を傷つけた貴様を逃がすと思っているのか!!」
「俺は別に戦いたいだけだからな」
「あの待ってもらっていいかなラヴァ、バケノ」
ユウマルシェルナシーはラヴァとバケノを呼び止めた、二人は止まり、ヤンカを見つめる。
「えっと、王都に行けばシル姉さんに会わせてくれるんですよね?」
「はい、呼んだのはシルマルシェルナシーなので王も会わせると思いますが」
「それなら連れていってください王都まで」
「ユウ様危険です!!」
ヤンカはラヴァの一瞬の隙をついて。
部屋を煙まみれにした。
部屋は煙で視界が奪われた、ラヴァはそのままユウマルシェルナシーを抱いて離れようとしたが、誰かにぶつかってしまった。
だがユウマルシェルナシーを抱いている感触はあるので、そのまま部屋から離れると、視界がよくなった。
「ユウ様平気ですか!!」
もしかしたらユウマルシェルナシーが煙を吸っているかもと思い心配して確認するが、ラヴァが抱いていたのはくまだった、一瞬手放すとそれが人形であることが分かった。
「ユウ様はどこに!?」
ラヴァはすぐに周りを確認するがユウマルシェルナシーの姿はない。
「まさか、さっきぶつかったのは」
部屋に戻ると、バケノは倒れていた、だがユウマルシェルナシーの姿はない。
「あの女も消えている」
すると近くから咆哮が聞こえてきた、ラヴァは窓を開けそこから飛び降りると、ドラゴンが飛び去っていくのが見えた。
ドラゴンには騎士とさっきの女がユウマルシェルナシーを抱いて乗っていた。
「早く追わないと」
だがラヴァにはシルマルシェルナシーやバケノのように背中には翼を生やせない、ラヴァは走り出しドラゴンを追った。
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ドラゴンを追って数時間経つと、ゆっくりと降り始めたのだ、ラヴァの体は汗が一滴もかいてなく、息も上がっていない。
ラヴァはドラゴンが降りた方向をじっと見ていた。
「ここから乗り込んでユウ様を助けるのは簡単だが」
ラヴァはユウマルシェルナシーを助ける事を考えていた。
「私一人でやるしかないか」
そんな事を思い、王宮に入ろうとした瞬間誰かがラヴァの肩を掴む。
ラヴァは反応して離れた。
「何者だ貴様は!!」
「わた、わた、私は何者なんでしょうか?」
「はぁっ、一体何を言っているのだ」
ラヴァは問いかけるが、どうやらその子は自分が何者か分かってないようだ。
「気がついたらこんな所に放り出されていて、目の前にあなたがいました」
「そうなのか、だが私は今から人を助けなくてはならないからな、さっさっとここから離れるんだ」
ラヴァは王宮の壁側まで行き、どうやって登ろうか考えていた、さっきの子はトテトテと後を追ってくる。
「ん? 言ったろさっさっとここから離れるんだ」
ラヴァが気づき、その子の背中を押して、離れさせた。
「貴様、悪転なのか?」
ラヴァが背中を押した瞬間にその子の体から禍々しい闇を感じたようだ。
「悪転とはなんですか?」
首を傾げてラヴァに問いかける。
「記憶を失っているのか、仕方ない、ここで待っていろ私が戻ってきたら貴様も一緒に連れていってやる」
ラヴァは伝えると王宮の壁側の一部を破壊した。
ラヴァは登るのを諦めて壁を破壊して王宮に侵入した。




