父親の計画とは
「それでユウ・マルシェルナシーに決定したんだな」
「はいお父様、お母様もこの名前を気に入っており、もう皆で呼びあっているんですよ」
「そうか、そうか、ユウかこれからは色々教えていかなければいけないな、家の事情について」
「まあ、お父様ったらユウはまだ一昨日産まれたばかりなのですから、そんな事分からないですよ」
「そんな事ないよなユウ、お前はもう立派な貴族だもんな」
そんな声と一緒に高く抱き上げた父親は顔を近づけてきたので、すぐにクラ姉さんに助けを求めた。
「たぁや」
「お父様ユウが嫌がってるので、そんなに顔を近づかせないで下さい」
「そんな、もしかしてもう嫌われたのか、そうじゃないよなユウ」
「うぅぅ」
「ああ、分かった、分かった、クラどうすればいいんだ」
「何を言っているんですかお父様、私達を育てたのはお父様とお母様でしょ、自分でなんとかして下さい」
「そんな」
父親の試行錯誤するのを見ていると、昔の事を思い出した、確か小さい頃にも姉が悩んでいるのを見たことがあった、姉さんは元気なのだろうか、まあ俺の事なんて、もう忘れてると思うけど。
「そう言えばお父様、そろそろ祭の準備をしなくてもよろしいのですか?」
「もうやっているぞ、明日はユウを街の皆に初めて見せるからな、皆気になっているらしいぞ」
「そうですか、それでは私そろそろ用事があるので、後は任せますよお父様」
「おい、これから一体どうすればいいんだクラ」
「もう少ししたらご飯の時間なので、ミルクをあげたらすぐに眠くなりますよ」
父親とクラ姉さんが部屋から出ていくのを見ると、父親は近くにあった哺乳瓶を手に取った。
「もう作ってくれていたのか、さすが私の事が分かっているなクラ」
「あ、あ、あ」
「飲みたいのか仕方ないな、ほらゆっくり飲むんだぞ」
哺乳瓶を口に咥えて、ゴクゴクと中にあったミルクを飲みきった。
「それにしてもユアはどこに行ったんだ、クラに聞いても知らないの一言だったし、そんなに一気に飲むんじゃない」
哺乳瓶を取り上げられると、部屋のドアがノックされた。
「誰だ?」
「俺です」
「お前か計画は明日の筈だろう、何故ここに来た?」
「確認をと思いまして、明日はあなたが子供を抱いて壇上に登られるんですよね?」
「そうだ、その時がチャンスだ、いいか絶対に失敗するんじゃないぞ、失敗してしまったら、全てが水の泡なんだからな」
「それでは失礼します」
「全くこんな場所に来るなんて、まあ一人だったおかげで、計画はバレずに済んだがな」
一人じゃないんだがな、さっきの話を聞く限り、この父親は明日何かの計画を企てているらしい、それが良くない計画なのは明らかだった。
「なんだユウそんなに暗い顔になって、もっと明るい顔をしろ、明日はお前の為に祭りを開くんだからな」
そんな事を言われても、あんな事を聞いたら明るい顔なんて出来るわけない、プイッと顔を上に向けた、すると天井からブラン姉さんの顔が見えた、ブラン姉さんもこっちに気づくと、人差し指を鼻に当てていた。
「ん? 何か上にいるのか?」
父親も上を見ようとしたが、ブラン姉さんは消えた後だった、その後ミルクを飲み終えると、クラ姉さんの言った通り眠くなってきた、すると丁度母親が部屋に戻ってきた。
「おいユア、ユウを放って今までどこに行ってたんだ」
「別に私がどこに行こうとあなたには関係ないでしょ!」
「ふん、それより私はそろそろ家に戻って祭の準備がどうか聞いてくる、お前も明日は祭に出られるようにしておくんだぞ」
父親は怒りながら部屋から出ていった、そんな時に窓の方から誰かがこちらを見ている事に気づいて、窓に目を向けると、そこには白服の仮面を被った奴が窓に張り付いていた、すぐに母親にも気づかせようとしたが、母親はベッドの方まで一直線に行き、窓に張り付いた奴などに気づかなかった。
「ごめんね今日は一緒にいてあげられなくって、明日はクラ達と一緒に祭を楽しむ予定だから、早く寝た方がいいわね」
窓を見ると、さっきの白服の奴は消えてしまい、夕方の夕陽だけが見えていた。




