服が欲しい4
ブラン姉さんの案内によって連れてきてもらった場所はドレス等を扱うお店であった。
「最近パーティで着ようと考えていてね、ユウはどんなのが似合うと思う」
そう言ってブラン姉さんは店に置いてある、赤いドレスを身体に当てて鏡の前で確認していた。
「あの、俺が言いたかったのはミグリに合いそうな服であって、こんなドレスなんかじゃ」
「だけどミグリも嬉しそうに選んでるよ」
ブラン姉さんが指さした方向にはミグリがショーケースに入った銀のドレスをずっと見ていた。
「えっとミグリもしかして、このドレスが欲しいの」
「いえ、欲しいわけじゃなく綺麗だなと思いまして」
「確かにミグリに似合いそうだね」
どうやら綺麗な理由で見ていたらしい、一応値段を見ようとしたが値札らしき物は無い、ショーケースの下を見ると値段が張り出された、するととんでもない金額が張り出されていた。
「ユウ、これなんてどうかな」
ブラン姉さんに呼ばれたので、行くとブラン姉さんは黒のドレスを試着していた。
「うーん、ブラン姉さんはもっと明るい方がいいと思うよ、さっきの赤よりも黄のドレスとか」
「黄のドレスか、ユウあるか聞いてきてくれる、私はこれを脱いでおくから」
「それはいいんだけど、ブラン姉さん金貨百五十枚とか持ってないよね」
さっきのミグリが見ていたドレスの値段が金貨百五十枚だったので、いくらミカロ姉さんが渡してくれた金貨でも遥かに足りなかったのだ。
「持ってるよ」
ブラン姉さんはポケットからある袋を取り出した、そこには金貨を数えるのがめんどくさい位の金貨が入っているのだ。
「えっとそれって貸してくれたりとか」
「いいよ、それに返さなくても平気だよ」
まさかの貸してくれるようだ、しかも返さなくてもいいらしい。
「その代わり、明日は私もユウに同席するからね」
明日と言うとマーミヤさんとのお茶にだろうか。
「もしかして、マーミヤさんとのお茶に付いて来る気」
「うん、そうじゃないと貸してあげないよ」
これは困ったミグリに喜んでもらおうと考えたのだが、流石にブラン姉さんを連れてくってのもマーミヤさんに悪いだろうし。
「他じゃダメなの」
「ダメ、私が付いて行くのが、金貨を貸す条件」
「二人ともどうかしたのですか」
するとミグリが見飽きたのか近づいてきた、本当なら普通の服をプレゼントしようとしたのだが、こんなドレスを見たら、不評になってしまうだろう、だったらここはブラン姉さんに貸してもらった方がよいだろう
「分かったよ、付いて来てもいいけど、マーミヤさんに許可を取らないと」
「そんなんじゃ貸せないよ」
耳うちで言ったがダメらしい、これならマーミヤさんに説明してブラン姉さんが付いてこれないと思ったのだが、ブラン姉さんも分かっているようだ。
「いいよ、明日は付いて来ても、その代わり何もしないのが俺の条件だよ」
「えー、別に何もしないよう」
何かしらの条件を付けないとブラン姉さんが何かしてくる危険があるので、だったらこっちも条件を付けた。
「まあいいか、付いて行ってもいいって言ってくれたし、はい、この袋持っていっていいよ」
「ありがとう」
ブラン姉さんから袋を受け取る、あんなに一杯入っているのに、袋は軽すぎた。
「ユウマルシェルナシー様どちらに行かれるのですか」
「ああ待ってミグリ、ミグリには脱ぐのを手伝ってほしいんだけど」
ブラン姉さんの気遣いでミグリには呼び止められずにすんだ、すぐに店員に頼み、ドレスをショーケースから出してもらった。
「本当にこちらでよろしいのですか」
店員はブラン姉さんと入ってきたのを見ているので、そんなに失礼じゃ無かったが、こんな子供が金貨百五十枚を持っているのかと怪しまれていた。
「そう、それです、後黄のドレスってあります」
「ええ、ございますが」
「なら、それをブラン姉さんに届けて下さい」
「かしこまりました、先にこちらのドレスの、金貨百五十枚だけ頂いてもよろしいですか」
先に代金だけ頼まれたので、ブラン姉さんから受け取った袋の中から金貨百五十枚を店員に渡した。
「それでは商品は後程マルシェ家に届ければよろしいのですね」
「はい、それで構いません」
ここで受け取ったらミグリにバレてしまうかもしれないので、ここでは受け取らず家に届けてもらう事にしたのだ。
「それでは黄のドレスを持ってまいりますので少々お待ちください」
店員は頭を下げ、黄のドレスを探しに行った、すぐにブラン姉さんとミグリの所に戻ると、ブラン姉さんは赤のドレスを脱いでいた。
「ユウマルシェルナシー様どこに行ってらしたのですか」
「ちょっとブラン姉さんに頼まれて店員に黄のドレスを持ってきてくるように頼んだんだよ」
するとさっきの店員が黄のドレスを持ってきてくれた、すぐにブラン姉さんは試着した。
「どうかな」
試着を終えたブラン姉さんは、黄のドレスを着ていた。
「うん、似合ってるよブラン姉さん」
「そう、ユウが言うんだったら、このドレスにしようかな」
ブラン姉さんはドレスを気に入って、そのまま買う事にした。




