転生先はマルシェ家
「ここは天国か?」
意識が戻るとそんな事を呟いていた。
だってさっきまで姉さんがいたはずの所からこんな雲みたいな所にいたら、そんな事を呟くに決まってるじゃないか。
「あはは天国って、まさかの天国って」
そんな笑い声を聞くと、上を見た、するとそこにはどこかで会ったことのある金髪の女性が、宙に浮いていた。
「やあ、まさか私から会いに行こうとしてたら、死んじゃうなんて思ってなかったよ人間君」
「あんたは確かあの時家の前までつけてきていた」
「そんなつけてきていたなんて人聞きの悪い、私は君に話があったのに、君から逃げたんじゃないか」
「そんな事すれば逃げるのは当たり前だろ、それよりここはどこなんだよ」
「ここは天界の門、まあ死んじゃった人達が通る道だよ」
「やっぱりここは天国なのか」
「そう君は小さな子供を救い、天国に行ける訳なんだけれども」
天国に行けると聞き浮かれそうになったが、金髪の女性から言われた事に驚いた。
「君、異世界転生に興味あるよね」
「異世界転生! まさか異世界転生が出来るのか!」
「落ち着いて、まあ今回の件でね、上の人も悪い事したと思ってるんじゃないかな」
「上の人ってもしかして神様とか?」
「ああ、まあそんな感じだよ、それよりどうなの異世界転生してみたい」
「そりゃ出来るならしてみたいけどさ」
何か隠しているのを感じたが、異世界転生に興味津々だったので、そんな事にも気づかなかった。
「だったら話は別、こんな天界の門さっさと閉めちゃおう」
そう言うと、天界の門が消えてしまった、もしかして今天国に行けそうだったの、異世界転生で消えちゃったのか。
「はあはあ、やっぱりこれ閉める時って、大変なんだよね」
金髪の女性の息遣いが荒くなっている事に気づくと慌てて止めに入った。
「あのもしかしてですけど、今ので天国に行くのは?」
「えっ無くなっちゃったけど?」
「そうですよね、普通はそうなりますよね」
小さく呟く、少し残念になって床に膝をついた、ついた瞬間体が浮いてしまった。
「もう、まだ慣れてないんだから、そんな事したら浮くに決まってるでしょ」
すぐに浮くのを止められ、さっきの所まで連れていかれた。
「まあ異世界転生するなら自己紹介しとかないとね、私の名前はネトル、君達が言う神様よりは下だけど、一応はここの門番をしてるんだよ」
「へー門番って、普通は出かけちゃだめと思うんだけどな」
「あの時の事は内緒にしてって、こんな事頼まなくてもいいか今から君異世界に行くんだし」
「そう異世界だよ異世界、一体どんな所なんだ」
つい興奮してしまい、少し口調が荒くなってしまうのに気づくと、少し落ち着いた。
「そうだね言ってみれば、君達人間には憧れな所だよ、魔法もあって、モンスターもいる」
「おおさすが異世界! それで転生先は選べるんですよね?」
「そんなの選べるわけないでしょ、ラノベの読みすぎだよ」
「何故ラノベを知ってるかは、この際問い詰めないでおきます」
まさかの門番にまでラノベを知られているとは、もしかしてこの人同種なのかと一旦考えたが、ネトルと名乗った女性が話を再開したので聞いていた。
「まあ転生先はもう既に決まってるんだよね、はいこれ」
そう言われ手渡されたのは、よく見かけるハガキらしき物だった、裏の名前を読むと神様からだった。
「ええ今時ハガキってそんなのありかよ」
「まあ普段死んじゃった人は、すぐに天界の門を通って天国に行くから神様からのハガキを渡したのって、初めてなんだよね」
「もしかしてここって普通の日本なのでは?」
「失礼な、ここは正真正銘天国ではないけれども、それでも天国に一番近いとされている所なんだからね」
「そんな威張られても、まあ日本じゃないことはすぐに分かりましたけどね、この床で」
こんな雲みたいな床に加え浮くなんて事は、地球のどこでもないというのは明らかだった。
「それよりも早くハガキの内容読んで見てよ、神様に言われてまだ見てないんだから」
「そんな急かさないで下さいよ、えっと拝啓三浦悠殿、なんか堅苦しい始まりだな、そなたが異世界転生を選ぶことは既に分かっていた事である」
まさかの神様から選ぶことが分かっていたなんて言われると怖い気もするが続きを読み始めた。
「そなたの転生先はネトルに選ばせたが、どの赤ん坊に生まれるかは儂の判断で決めさせて貰った、そなたが生まれるのはマルシェ家の男の子だ、健闘を祈るぞ」
「マルシェ家ですね、良かったですね、そこは貴族の屋敷みたいですよ」
「貴族か……あんまり社交性とか考えた事無かったけど大丈夫だろうか?」
神様からの手紙を読み終えると、既にネトルがどの家なのか、調べていてくれたらしい。
「じゃあ最後にしてもらうのは、スキル選びなんですけど、どうしますか」
「先ずどんな物があるか知りたいんだけど」
「えっとですね、あなたが選べそうなスキルはこの七つの内の三つ位ですかね」
そう言われ、今度はスマホみたいな、スライド式の画面だった。
「えっと身体強化、魔法強化、召喚魔法、アイテム作成、暴走、魅惑、超越ですかね」
言われた通りの順番にスキルを見ていくと、暴走と超越のスキルだけは説明が無かった。
「あの、この暴走と超越ってどんなスキルなんですか」
「そうですねどんなスキルかと言われると、難しいですね」
少し選ぶのが怖くなり、その二つのスキルは後回しにして、他のスキルで悩んだ末三つのスキルを選んだ。
「本当にこれでいいんですね?」
ネトルに言われると、はいと返事をした。
「それじゃあ異世界に送り出しますね」
ネトルから言われると体が光出していた、遂に異世界に行けるんだ、あの憧れた異世界に。
「最後に言いますけど、異世界で死んでしまったら地獄行きなんで、頑張って生きて下さいね!」
「マジかよ!!」
そんな最後の言葉と同時に、ネトルの姿が消えた。
「陰ながら観てますからね、悠くん」