最後の仕事
「もしかしてサーセの知り合いなのか?」
サーセの方を向き知り合いかどうか聞くが、サーセは首を振っていた。
「もしかして人違い?」
「人違いなんかじゃありません、私は覚えてますよ、あなたに奴隷闘技場で負けたのを、しかもあなたはずっと勝ち続け、私は勝つこともできずに、奴隷として売りに出された」
「うーん? 思い出せません」
「あなたは自分より弱い奴の顔は覚えない性格のようですね」
「いや、奴隷闘技場の方なら仲良くしてた方が多いので覚えてますけど、あなたどれくらい勝ってました?」
「九割は勝ってますよ!! それにあなたとも何度も顔を合わせてますよ!!」
「九割? 九割? 名前、もしかしたら名前を聞いたら思い出すかもしれません」
「私の名前はナギ・ルーザ・フラー」
「名前にも聞き覚えがありません、本当にあなた奴隷でしたか?」
「そんな顔も名前も覚えてないなんて、あの時の恨み今ここで晴らします」
「はい、そこまで」
患者がいまにもサーセに突っ込もうとしたところを止めたのはシー・サイアス・タイツだった、患者の腕を掴み、足を引っかけベッドに仰向けの状態にした。
「全く、もう少しで退院だっていうのに、無理すると余計に傷が拡がるのは分かってるよね、君達も私が頼んだのは清掃だよ、誰も患者と会話しろなんて言った覚えはないけど」
「別に私とご主人様は悪くないはずです、その女の魔族が急に突っかかってきただけです」
「まあいい、もう全部の部屋の清掃は終わったのかい?」
「まだ隣の部屋二つは終わってません」
「なら早く終わらせて、君達には次の仕事が待ってるから」
「覚えてなさい、サーセ・アイデ・フルエ今度会った時にはこの恨みを晴らします、それとあなた、あなたがサーセ・アイデ・フルエのご主人のようですね、あなたも覚えてなさい」
何故か指を指され覚えていろと言われた、隣の部屋へと移動し、部屋の掃除が終わった頃にシー・サイアス・タイツが姿を現した。
「最後の仕事だがこの患者を知ってるか?」
「あなたに渡されたファイルで読みました、魔族の子供ですね」
「ああ、一昨日産まれたばかりのまだ赤ん坊だ、だがもう殺すしかない」
「なんで!?」
サーセが声を荒らげる。
「ファイルを読んだんだろ、もう昨日から息をしてない、大丈夫もう親から殺す許可を得てる、君達の最後の仕事はこの子を殺す事だ、それで全て終わりだ」
シー・サイアス・タイツから赤ん坊を殺せと言われた、サーセと顔を合わせる。
「大丈夫です、私がやります、ご主人様は見ないように目を閉じててください」
サーセは平気とばかりに赤ん坊に近づくが、手だけは震えていた、サーセが近くにあったメスを取り赤ん坊の心臓に刺そうとした時に呼び止める。
「サーセ待て!!」
サーセは手を止め、俺を見る、サーセの目は涙目だ、サーセからメスを取り上げ、シー・サイアス・タイツに近づく、メスをシー・サイアス・タイツの首めがけて刺しにいく、簡単に避けられてしまう。
「魔族の赤ん坊を殺すなんてできない、それにファイルを読んだが、ここに完治したと小さい文字で書かれているだろ」
「よく判断したね」
赤ん坊のファイルをシー・サイアス・タイツに渡すするとどこからか、声が聞こえ拍手される、この声には聞き覚えがある。
魔王アイル・ツー・サイドの声だ、だが声が聞こえた方向にはあの赤ん坊とサーセしかいない、すると赤ん坊が浮く、赤ん坊の姿はみるみる変わりあの時会った魔王アイル・ツー・サイドが現れる。
「もういいから下がってていいよ」
魔王アイル・ツー・サイドはシー・サイアス・タイツを下がらせる、シー・サイアス・タイツがいなくなると、魔王アイル・ツー・サイドは近づいてくる。
「普通の魔族ならあそこで殺してた、だが君達は躊躇った、それを踏まえると君は人間だって事」
魔王アイル・ツー・サイドに人間だって事がバレて被っていたフードを外される。
「どうやら当たりのようだね」
魔王アイル・ツー・サイドはふふっと微笑む、いつの間にかサーセが魔王アイル・ツー・サイドに近づき、魔王アイル・ツー・サイドの顔に蹴りをいれ、魔王アイル・ツー・サイドは倒れる。
「ここから逃げましょうご主人様」




