終わりと始まり
ある小国による兵器の使用を引き金にして、その他数ヵ国も遅れを取らないために兵器を使用した。
人類が決して生存できないとわかるその空間を、なぜかわからないが上空から見ている。
しかし体を動かそうにも感覚もなく、視界を変えようとしても同じ空間しか見ることができない。何の音を拾うこともできず、声をだすことも何もできない。
狂うことも許されない永遠とも思える永い時間が過ぎ、それは始まった。
「人類の絶滅を確認…」
久しぶりに聞こえた音を理解するのにしばしの時を必要としたが、かろうじて久しぶりに思考を始めることができた。
思考することはできても体を動かすどころか感覚もない今、他にできることもない。
いくら考えても何もわからず、何が起こるか想像つかない現状、変化を待つことしかできなかった。
「創造主に代わって説明を始める。この世界を作ったモノとしてこの失敗を踏まえて、新しい世界を作る。この世界が終わるきっかけに立ち会った人類には罰として人類が絶滅するまでその光景を見せた…」
様々な疑問が浮かぶが質問することもできず、ただその説明とやらを聞くことしかできない。
「新しい世界を円滑に始めるための処置として、創造主としての力の一端と指針を示す…」
視界に映っていた、死が蔓延する景色が突如消え、新たな青い球体が浮かんでいる。
太陽と思われる天体も視界には入らないが存在しているようだ。
青い球体に茶色い円形ができあがり、その円を中心に等間隔に更に茶色い楕円形に近い5つが囲った。その5つは楕円形の先端の円形に近い側は尖っているが反対側は逆にへこんでいて円形よりも遥かに大きいる。
その円形も5つの楕円形も緑に変わっていった。
「新しい世界で禁止することは世界を滅ぼそうとする行為と創造主に対しての反抗。新しい陸地は6つを合わせて桜禍と呼ぶこととする。周りの5つの大陸から優れたもののみを中央へ移す。あとはどの大陸に降りるか決めるのみ…しかし、滅びるきっかけになった者とそれに連なる者は必要ない…」
未だに見ることと聞くこと以外は考えることしかできないが、いくら考えても以前自分の住んでいた国の名前どころか地図すらが思い出せない…永い時間が経過したから忘れたとかではなく、そこだけ記憶から消えていると感じる…
他の家族や仲間がいたとしても、滅びたという話と新しい世界の話の通りなら心配しても意味がない上に同じ大陸になるかすらわからない…すべては理解できずとも受け入れるしかないらしい。
「海に囲まれた武力を持たない傀儡なる者たちは5つすべてに散らす。そして、それぞれの地で傀儡のまま道具となるか踏み台にするか己で示せ。武力によって正義を振りかざしていた者たち、凍える大地から暗躍をし続けた者たち、財に群がり最も増え続けた者たち、優れた身体能力を残したままの黒き者たち…それぞれ大陸1つずつを与える。ほかの者たちはこれら4つに属すか残り1つにて抗うか選ぶこととする…」
その言葉を最後に視界から光が消え、再び視界に映ったものは文明などなにもない緑豊かな大地だった。そして、視界を動かせることに気付き、肉体があることを知覚した…
視界から光が消えてから緑の景色が見えるまでの間に、情報として伝えられていた。
5つの大陸は、上はジュドーとスァイを頂点にして左がビャン、右がミンツァ、下がノールという国として、中心の地ユースティアを目指すため…5つの国ごとに唯一ある高い山にてユースティアへ向かうのに必要なことが行われること、それを拒むことができないこと。
その場にて行われるのは…
衣服以外の武器、防具、食料などは一切持ち込めないこと。
自ら望む者、自ら望んだ者の選んだ者、その他の多数の者から選ばれた者の順に優先される定数50人が揃わない場合、ランダムに選ばれること。
定数が揃い次第、あるものを食べること。
最後の一人になるまで終わらないこと。
最後の一人になるとユースティアに向かい、他国の者と競い、最も優れた者一人になるまで終わらないこと。
また、それぞれの国ごとに最も優れたものが決まった際には、その者はある二択の褒美があること。
ユースティアにて、さらに最も優れたものになんでも一つだけ願いが叶うこと。しかし、誰一人として元の場所には戻ってはこれない。
ユースティアにて唯一の者を出した国には、その回数に応じた恩恵が出身国自体に得られること。
自分のいる国と、ユースティアにて行われることは全て見ることが可能になること。
参加した者が勝ち抜いた者も、敗れた者も…どうなるかすら全くわからない…しかし、望もうが望むまいが逃れられない業として背負っていくしかないみたいだ…