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物量は最強の武器です

 少なくとも、それはある程度予想されていたことであり、予想外の事でもあった。村を奪取してからも盗賊家業は続けていたため、噂が流れて軍やなんかの偵察が入るところまでは予想済みだった。予想外だったのは……完全装備の騎兵隊を含めた騎士団による威力偵察が行われたという事だ。


 前哨基地は完全に消滅。本隊に敵がなだれ込んでくるのに数日は必要としないだろう。できる限りの防御を行ったところで、蹂躙されるのは目に見えている。お頭はすぐさま脱出を決意。全員で可能か限りの物品をもってこの場所を離れることにした。


「いくら何でも……たかが山賊団一つに本気出しすぎだろ!?」

「いやー、当然じゃないっすかね?実際村一つ落として軍が出張るくらいには商人襲いまくったわけですし」

「生活安定したからってはしゃぎすぎたか」

「てか、お頭はそーなると守りに入る性格だと思ってたんですがね」


 意外でした、と続ける手下に苦笑を返すと、お頭は道の先を見据える。手下の半分は、場合によっては山賊家業が減っていき、地に足付けた生活になるだろう、と踏んでいたりした訳だ。


「この冬を超えられたらな、考えてたさ」


 お頭自身、余裕ができたならその方向にシフトしようと思っていたのだろう。事実、水車小屋や鍛冶場の修理も始めていたのだ。畑を耕す準備さえできれば、春からは山賊家業ではなく畑仕事で皆を養い、余裕を作っていこう、そうとも思っていた。バレさえしなければそれくらいの時間は稼げたはずだ、籠城の準備はできるはずだったのだ。


「まぁ、いい」


 前を向いたまま、お頭は続ける。


「逃げ切ることだ、オレが居て、お前らが居れば……次こそは、うまく行く」

「お頭!」


 多くの部下たちがお頭を称える。この人についていこう、命を預けるには十分な……この人こそが、俺たちの王だ。そう思わせるに十分な声だった。


***


 逃走は、山賊の皆さんが思っている以上にうまく行かなかったようだ。何度かフル装備をした騎士たちのきれいなまでに乱れのない突撃を喰らい、山賊団はすでに散り散りになり始めている様相を見せていた。


「ひィ……はァ……」

「乗れ!新入り!!」

「ひ!ヒイィィィィ!!」


 デブが山賊の皆さんにひっぱりあげられて、馬車での撤退を始める。俺の体はというと、与えられた命令に従い襲ってきた騎士たちを迎撃中だ。で、現在戦闘中な訳だが……。なに俺の体超強い。

 剣を抜いて襲い掛かってくる歩兵隊を突進の一撃で薙ぎ払い、騎兵とすれ違う時には乗っている馬の前足を切り落として転落させ、槍が手に入った時は槍を使って騎士だけを叩き落し。挙句今は、奪った騎士槍と馬でランスチャージを慣行中だ。歩兵の群れを蹂躙し、ホプライト兵が槍衾を形成しようとしているのを横から薙ぎ払い、正面から向かってきた騎士を突撃戦で正面から突き殺す。体に矢が刺さろうが、斬られようが槍で胸のど真ん中を突かれようが起き上がり、傷が一瞬で癒えて再び軍の皆さんに襲い掛かる。

 近年話題の全力ダッシュするゾンビがどれだけ恐ろしいか、という事を俺は身をもって知った。


***


 結局騎士団の陣形が崩れたところにデブ謹製のゾンビ軍団が投入され、俺によって突き崩されていた防衛網から内部をある程度食い破られた騎士団は一時戦線を後退させたようだ。

 それを追い、襲い掛かるアンデッドの群れ。押し返され、前線を縮小しながら、騎士団が体制を立て直していく。重装の盾持ちが方陣を組み、出来上がった壁の向こうから弓兵隊が火矢による攻撃を開始した。そう、開始してしまった。腹の中にたんまりと油を貯めこんだゾンビの群れに。火矢を受け、激しく燃え盛りながら、それでもゾンビたちは騎士たちに襲い掛かる。人の焼ける臭いと、悲鳴、馬の嘶き……状況は混迷を極め、ついに騎士たちは盗賊団の追撃を断念した。

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