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見える範囲の世界

世界設定(主人公の予測できる範囲)です

 慣れというのは怖いもので、この世界に転生した直後に死亡し、アンデッドにされた上ホモデブの性処理道具として使われるようになって……正直、ヤられるのも慣れてきた。いやヤなもんはヤだし見たくも聞きたくもないが、ホモビデオの掘られ役のVR視点映像を強制的に見せられているような現状、目の前の映像と音を無視して思考に逃げる余裕ができてきた、と思うべきだろうか。どっちにしてもイヤな状況なのに変わりないが。

 ちなみに人を抑え込んで必死に腰を振っているデブは自分と違う趣味の山賊達や世の女性に対する呪詛じみた文句を言いながらヌいていた。アホの境地だ。



 さて、思考を必要な事に戻そう。少なくとも、現状が俺を転生させた神々の想定内の事なのか想定外の事なのかは吐血するほどどうでもいい。今の俺は見ていることしかできないのだから。

 この地獄のような状況でも、唯一救いがあるとすれば俺は「傍観者に過ぎない」という事かもしれない。俺の体は当事者の一つだが、俺自身は見ていることしかできないが故に、傍観者以外になりようがない、というのが正しいか。


「あぁ……麗しき愛しの君よ……お前ほど美しく、整い、優しさと憂いを感じさせる者などこの世には存在しませぬぞ……やはり美しきものは美しきものと惹かれあう運命なのです……」


 ことが終わったのか、俺の体を抱き寄せてデブがうっとりと何かを語っている。お前が抱いてるのただの死体だからな?傷みやすい内臓抜いてるとはいえ、ここまで腐敗の様子の一つも見せないというのは魔法のすごさを感じさせるが。……にしたって業が深すぎるだろ、ネクロフィリアのホモとか。


 さて、しばらく周囲を観察して判ったことは。この世界がゲーム的な中世ファンタジーっぽい世界だ、という事だ。文明レベルはルネッサンス期くらいで、最大の特徴として魔法とステータスが存在する。その人の持つ先天的な技能……スキルというものも存在している。そんな所か。このスキルというのが、いかにもゲーム的なあれで、レアであるほど、レベルが高いほど強いというモノらしい。



***


 村の奪取に成功して夜が明けた。山賊の皆さんは明け方から思うままに村の中を動き回っていた。

畑の様子を見て必要なところに手を加える者、鍛冶場の惨状に頭を抱えるもの、家畜の頭数を確認しリストと照らし合わせるもの……水車小屋の崩壊具合に膝から崩れ落ちるものなど、様々だ。

 この世界で初めて、活版印刷による印刷物を見た。村の田舎っぷりから技術レベルはそうでもないと思っていたが、考えを改める必要がありそうだ。というか、ごく当たり前にある農家だと思ったけど、どの家にも剣が置いてあったりする。実は徴兵制もあるのかもしれない。そこまでしなくてもセルフディフェンスの概念がすでにあるか、芽生え始めているのだろう。


「おい、新入り、どうだ?」

「おぉ、これはお頭様!お喜びください!先日の死体から良いアンデッドがまたいくつか出来上がりましたぞ!我が愛しの君に比べれば目劣りしますが、どれも実用には十分なものでございますれば!」

「いやお前に実用とか言われるとキモい。それはともかく……使い捨ての壁には十分な性能みたいだな」


 心底平坦な言葉でデブのねっとりしたセリフをスルーして、お頭がステータスを調べる魔法を使う。いくつかの項目を確認して……「やっぱアレが異常なだけか」と呟く。それはどこか安堵したようにも見えた。まぁ実際、与えられたチートがあり得ないレベルなのは何となく判るような気がする。


「ネクロマンサーが居る最大の利点は、相手を殺すほどこっちの前衛を増やせる事だ、それ故防御軽視になりやすいのは玉に瑕だが」


 村人の死体をベースに作り出されたアンデッド達を前に、お頭は改めて呟き……俺を見る。


「……この辺りの連中も、大体ステータスやスキルは常識の範囲内だった……じゃあこいつはなんだ?」


 もし敵だったら……お頭は口の中でそう呟いたようだった。そして軽く頭を振るとすぐにデブの小屋を離れた。死体と内臓まみれ、血の匂いが消えない小屋に長く居たいという人はそうは居ないだろう。正しい判断だった。


 そして、その報告は1か月後の昼頃になされた。



 領主の治安維持部隊が、この辺りを探っている、と。

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