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制圧

ハーレム作成は基本ですよね

 すでに山賊団のことは周辺で話題になり始めていた。防衛のことを考えても、攻守どちらも隠れやすい場所は常に奇襲を考えなければならず、今後来るであろう討伐隊との戦いを考えればやや不利、という印象は否めない。それに、大人数を維持するのに採取生活はあまりにも効率が悪すぎた。

 それ故に近くの村を占領し、そこを山賊団の拠点とする。生きていくにはそれは必要な事だった。幹部を中心になんども話し合いが行われ、それと並行して下っ端たちの訓練も厳しくなっていった。


「……さて、一応攻めて奪い取るのが基本路線だが、こっちも数を減らさずに済むならそれに越したことはねぇ」


 相変わらずの髭面で、お頭が腕を組み呟く。車座に座るのは、幹部の皆さま。碌な防備もしていない村一つ、と侮る様子は見られない……誰もが、自分たちの生活が荒らされそうになれば死ぬ気で襲ってくる、と知っているからだ。


「新入り……それと何人かで村のお偉方に選ばせてやれ、服従か死かってな、絶対に村の腕自慢か雇われが突っかかってくるから、痛い目見せてやれ。腕の一本くらいは良いが、徹底的に痛めつけた上で殺すな。それと、もし雇われが複数いるようなら裏で何としてでも懐柔しろ」

「……皆殺しにしねぇでよろしいので?」

「最後の手段だ、辺境の村一つ、国は大して気にしねぇだろうが、領主の方はな……」

「あぁ……メンツ気にして奪還にかかりますな」


 戦力は少しでも多いほうが良い……道理だ。


「よし、次に荒事になった時だな」


 改めてお頭が車座に座った幹部たちを見回す。


「今回表に立つのは俺の他に……ジョニー、レイモンド、ゴンザレス、アレクだ」


 名を呼ばれた幹部たちが神妙に頷く。それを見て、お頭はさらに続ける。


「全力で行く、さっき名前を上げた奴らは10人ずつ手下を引き連れての行動となる、朝までに手札を選んでおけ、ほかの連中はいつも通りだ、先乗りした連中は荒事になった時そのまま遊撃に入れ」

「……新入りはともかく、あのゾンビも遊ばせとくんですかい?」

「頼りきりは良くねぇ、それに、酷使しすぎていざという時使えません、では事だ」


***


 数時間後、俺を魔法で動かすデブと下っ端数名、そして幹部の一人が近くの村に乗り込んだ。村の入り口で当然のように押しとどめられ、それを一撃でたたき伏せる。村の広場に着くと、そこには何人かのガタイの良い男たちを引き連れた初老の男が立っていた。


「お前が村長か?」

「だったら?」


 横から口をはさんだ男は無視して、幹部が村長を睨みつける。


「犬の躾がなってねぇな」

「あぁっ!?」

「……新入り、ヤれ」


 デブが何か口の中で唱えると、俺の体が先ほどから口をはさんでいる男の側に向かい……腰に佩いている長剣を抜いて……男の腕を胴体から切り落とした。それを間近で見た村長は真っ青な顔で悲鳴を噛み殺し、後ずさる。場に響く悲鳴、それを聞きながら幹部はにやりと笑みを浮かべる。


「これでちったぁ、大人しくしてることも覚えるだろ」

「てめっ……!」

「まて!」


 激昂しかけたもう一人を、村長が抑える。


「耐えるんだ、お前まで失う訳にはいかない」

「しかし!」

「……ともあれ、だ……この村には盗人が喜ぶようなものなど何もない、見ての通りの寒村だからな」


 村長の言葉に、幹部はやれやれ、と肩をすくめて見せる。


「あぁ、急に吠えられたんで説明してなかったな。俺らが欲しいのは……この村そのものさ」

「なっ!?」


 今度こそ、村長の顔に驚愕の色が浮かぶ。


「何、難しいことじゃねぇ、明日の朝、お前がお頭に忠誠を誓い服従を認める、それだけしてくれりゃぁ俺らは何の文句もねぇ」

「なにを……!」

「一晩、ゆっくり考えるんだな」


 そう会話を切ると、幹部は連れてきた手下に「引き上げだ!」と声をかける。俺たちは、指定された待機場所まで後退した。


***


「どう思いやす?」

「ありゃ、抵抗するだろうな」


 焚火に当たりながら、幹部と手下たちがぼそぼそと話す。


「……」

「……気分、ノらねぇか?」


 何か言いたげな手下Aは、一瞬言うのをためらってから……


「あの村、子供もいたんス」

「そりゃ、ガキの一匹や二匹いるだろ……気が乗らないのも判る、だが、禍根を残せば、次に死ぬのは俺たちだ」

「うす……」


 それからは、何も言わずに火の番をしていた。子供は成長する。村を焼かれた、その恨みを抱きながら。そしていつか、彼ら自身を殺しに来る。それを因果応報ではない、とは言わない。むしろ当然の罰だろう。


「……殺らなきゃ、死ぬのは俺らだ」


 幹部は、最後に自分に言い聞かせるようにそう言った。

 翌朝、お頭率いる本隊と合流し。俺は遊撃隊として村の裏手に回ることとなった。交渉は案の定決裂し、戦闘とは名ばかりの虐殺と略奪が始まる。村の男と老人は悉く殺され、女たちは捕らえられ、足の健を切って逃げられなくした上で村長の家に閉じ込められた。

 戦いが終わり、村長やその親類の死体が村の広場に吊るされ、山賊達は村長の家に集まり、勝利の宴を楽しんでいた。下品な笑い声と、年頃の少女たちの悲鳴が響いている。それに何の興味も示さず、デブは命令された通りに俺を動かして、生き残りや、隠れている者が居ないか家々を丁寧に見て回っていた。


「本当に……生きている人間など、しかも女などなにが良いのやら……やはり愛を語らうなら新鮮な、死んだばかりの美男子に限りますでしょうに……」


 山賊の皆さんが生きた女を抱いている、というのが酷く気に食わないようだ。本当にネクロフィリアのホモというのは救いがない。いや、俺の元の世界だったら男は劣等!死ね!くたばれ!この世から消えろ!すべての女性の奴隷になれ!と喚き散らしてるフェミニストな方々が全力で泣いて喜ぶ素晴らしい人材なのか?気分悪くなってきた、吐きそう。てか気分悪すぎて死にそう。死んでるけど。


「む……?」


 不意に、デブが動きを止め、建物の一つに俺を進ませる。扉を開け、不自然に蓋をされた暖炉をこじ開けると……そこには、金髪の美少女が居た。すらりとした、しかし女性らしさをしっかりと感じさせるスタイルに、可愛らしいと綺麗の中間と言える、顔。本来は愛らしい笑顔を浮かべていただろう表情は、今は恐怖しか感じられない。


「はぁ……女ですか、可愛らしい男の子であれば……とも考えましたが……いえ、生きてる時点で無いですな」


 心底どうでも良さそうにデブがつぶやく。「連れて行きなさい」と俺に命令すると、俺の体は勝手に彼女の腕をねじり上げ、無理やり村長の家に連れて行こうとする。当然彼女は悲鳴を上げて暴れるが……相手が身動き取れない少女だからか、あるいは単純に女性だからか、デブが渾身の張り手を頬にくらわす


「うるせぇメス豚、てめぇはピィピィ喚いてないでナニを咥えてケツ振ってりゃ良いんだよ」


 言いながら、彼女の着ている服を破る。麻の貫頭衣はナイフで簡単に切り裂かれ、彼女はさらに悲鳴を上げる。


「あぁ煩い……本当になんでこんなモノが良いのやら……下品すぎて全く理解できませんぞ……」


 暴れられないように手足を縛りあげてから俺に彼女を担ぎ上げるよう指示すると、デブは改めて彼女を村長宅に連れていく。近づくごとにはっきりと聞こえてくる女の子たちの悲鳴に、彼女はますます暴れるが、その程度で解けてくれるほど、拘束は緩くなかった。デブが扉をあけると、内部の惨状が目に飛び込み、女の子は恐怖で動けなくなる。


「お頭様ぁ、隠れてたのが居ましたので連れてきましたぞ」

「ほぅ……相当な美人じゃねぇか!連れてこい」


 デブが俺から女の子を下ろし、力づくで彼女をお頭の所に連れていく。

扉が閉まったので、俺にはその後の惨状は判らない。すぐに、逃げてくるようにデブがドアから出てきて、道端でげぇげぇと嘔吐し、「やはり生きている人間の、しかも女相手などあり得ませんぞ!気色悪い、胸が悪い!なんて趣味が悪いんだ!最悪だ!」と文句を言い続けている。

 村長の家から聞こえてくる女の子たちの悲鳴が、一つ増えた。

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