再会
久々のヒーロー登場です。
どうして、その疑問がミーニャの頭を埋め尽くした。
驚愕に両目は見開かれ、手は口元を覆っている。
そんなミーニャのただならぬ様子を無視して彼はその美しい黒髪を風になびかせてミーニャに一気に近づいた。
そして獣人男性の求愛行動そのままに、ミーニャの足元に片膝を折った。
黄金色の瞳がミーニャを捉え、ミーニャの黒い瞳を真っ直ぐに覗き込んだ。
「僕の番。ずっと・・・ずっと探していました」
ローウェルの声が甘く響いた。黄金色の瞳は歓喜に満ちキラキラと輝いている。
しかし、混乱するミーニャには何も耳に入っていなかった。
どうして?なんで?彼が、ローウェルがここにいるの?待って待って、会ってしまった。番だと認識されてしまった!嫌だ。拒否されたくない。
そんな言葉がミーニャの頭の中にこだまする。
「違います!わ、私は・・・番じゃありません!」
やっとの事で絞り出した言葉がそれだった。
その言葉に今度はローウェルが驚いたように目を見開いた。
ミーニャはローウェルが驚いて固まっている横を勢いよく駆け抜けると、そのまま外に飛び出した。
未だに混乱する頭でミーニャは当ても無く走った。
「ーーおい!おい!ローウェル!気を確かに持て」
肩を揺すぶられて、ローウェルはようやく友人ライゼンの呼びかけに正気を取り戻した。
「ライゼン?」
「おお、そうだよ。大丈夫か?」
心配そうにライゼンの金色の瞳が揺れる。
「僕の番は?」
そう問われるとライゼンは首を振った。
「外に飛び出して行っちまったよ。何があったんだ?」
何が?それはローウェルこそ誰かに教えて欲しいことだ。
十八から九年余り探して探して焦がれて焦がれてきた『番』にやっと出会えたのに、『番』であることを否定された挙句に逃げられた。
理由はわからない。わからないが、『番』は自分を見てもまったく嬉しそうではなかった。
それどころか少し怯えるような目をしていなかっただろうか。
随分と小柄だったのでまだ十八を迎えていないのかもしれない。
顔立ちは大人びていて二十くらいに見えたが、あれで十六くらいなのかもしれない。
突然、大人の獣人に『番』などと言われて驚きのあまりあんなことを言ったのかもしれない。
それにしても十も歳の離れた『番』などあまり聞いたことがないが、それであればローウェルが『番』を十年近くも見つけられなかった理由も頷ける。
「天下のローウェル様がまさか『番』に逃げられるとはねぇ。で、どうするんだ?」
答えは決まっている。ローウェルは肉食獣人だ。逃げられるなら追いかけるまでだ。
そう決意したローウェルの瞳は捕食者そのもので、今しがた彼女か出てきた邸宅を睨みつけた。