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灰色鼠と漆黒の豹  作者: 和狸 はる
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妹の結婚

ミーニャは自分宛に送られてきた手紙と同封されていた招待状を眺めながらため息をついた。


先月、年の離れた妹がついに『番』と出会ったのだ。二人はすでに十八の成人に達しており、『番探し』で出会って一目で互いを『番』だと認識出来たのだという。


『番』を見つけた獣人は互いが十八を迎えていれば即婚約し、結婚の準備に入る。通常三ヶ月ほどかかるそれの後に二人は晴れて夫婦となる。


再来月には妹の結婚式が執り行われることが決まっており、姉であるミーニャは当然参加しなければならない。


その為には結婚式が行われる王都に戻らねばならなかった。

王都に戻るのは出来るだけ避けているミーニャだが、可愛い妹の為ならば戻るしかない。

しかし、めでたいはずの妹の結婚であるにもかかわらず、どこかもやもやした心地になるのは二十八にもなって未だにミーニャが独り身のせいだろうか。

いや、妹の結婚相手がミーニャの『番』と同じ衛士の青年だと言うのも無関係ではないだろう。


熊獣人だと言う妹の婚約者は王宮に勤める衛士になったばかりの青年で、十九の妹より一つ年上なのだと言う。

ミーニャの『番』も同じ衛士である。幸か不幸かミーニャの『番』は有名人で、あの日聞いた名前からすぐに彼の情報は手に入った。


代々国王の信頼厚い衛士の家に産まれたローウェルは、黒豹獣人で士官学校を卒業後、メキメキと頭角をあらわして若干二十七歳にして第三衛士隊副隊長の地位にある。

その秀麗な容姿と数々の輝かしい実績、誠実で真面目という評判から、老若男女問わず人気が高い。

ローウェルの人気ぶりは描かれた絵姿が飛ぶように売れたことからもわかる。


そんなローウェルから、『大嫌い』と言われた自分は本当にダメな『番』だ。

あの日、特に彼の気分を害することは言っていないはずだ。だとしたら、ローウェルが気に入らなかったのはミーニャ自身だろう、とミーニャは結論を出していた。

部屋の端に置かれた鏡を覗き込むと、灰色の髪に黒い瞳の陰鬱とした女が映った。

美しいローウェルから見ると自分はなんて醜いのだろう。

せめてこの髪が別の色だったらミーニャはローウェルにあんな態度を取られることはなかったのだろうか。

もしかしたら、今頃ローウェルの妻として・・・そこまで考えてミーニャは首を振った。

そんな可能性を考えても虚しいことだ。ローウェルはミーニャが大嫌いなのだから『番』だなんて知らない方がいい。

そして、ミーニャは布を鏡に被せてから招待状に参加の旨を記入した。

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