エピローグ
ローウェルとミーニャは十年を埋めるようにお互いのことを語り合った。
最初は嫌われないかと辿々しかったミーニャも、次第に気づけば夢中で話し込んでいた。
「ミーニャは僕がミーニャを嫌うのが怖いって言うけど、僕も同じだよ。僕はミーニャに逃げられること、失うことがとても怖い」
ギュッと繋いだ手に力が込められる。
ミーニャにはこの強く美しい『番』が恐れを抱くことに驚いた。
脆弱な鼠獣人とは違い彼は強い黒豹獣人だ。彼から本気で逃げていた自分が言うのもなんだが、社会的地位も高い彼から逃げ切ることは不可能だっただろう。
「もう逃げませんよ」
「次に逃げたら、二度と部屋からは出られないようにするから」
爽やかな笑顔でサラリと恐ろしいことを言われた気がする。
しかし、ミーニャがローウェルと同じ立場なら同じことをするかもしれない。獣人の『番』への執着は並大抵のものではないことをミーニャ自身もわかっていた。
ミーニャの場合、変な方向にねじ曲がってしまっているだけだ。
ローウェルは両家両親に今までのことを含めて相談した。
ミーニャの両親ーー特に父親からは殴られる覚悟だったが、引き金となった小説に影響された女性達に怒りを覚えたらしく、逆に慰められた。
ローウェルの父からは思いっきり殴られた。
ローウェルと同じ黒豹獣人の父は力も強く、鍛えているローウェルでさえ小さくない怪我を負った。
ローウェルの母は白い鹿の獣人でローウェルに面差しがよく似ていた。
酷く頭を下げられたので、ミーニャはさらに恐縮してしまった。
春を待って二人は晴れて夫婦となった。
仕事を辞めるミーニャの後任がなかなか決まらず延び延びになってしまった。
その度に不機嫌になるローウェルを宥めながら、ミーニャは幸せを噛み締めていた。
そして、雲一つない晴天の日、ミーニャはローウェルと夫婦になった。
二人の腕には揃いの腕輪が輝いていた。
これで完結です。
読んで頂きありがとうございました。




