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優しさ

お読み頂き、ありがとうございます。








ホールではたくさんの人々がダンスを思い思いに楽しんでいた。


「リズ、誕生日迄にアラン殿の心はつかめそう?」


優雅に躍りながらアルフレッド殿下が不意に聞いてきた。


「えっ?…っ、申し訳ありません!」


思いもよらない事を聞かれて動揺してしまった。


どうしましょう?思いっきり足を踏んでしまいましたわ。

ヒールで足を踏まれるのはとても痛い筈ですわ。


思わずアルフレッド殿下を見上げるとにやりと笑った顔が目に入った。


「その反応ということはまだアラン殿とは仲の良い兄弟止まり止まりと言ったところ、かな?」


にやりと笑っている表情とは裏腹にアルフレッド殿下の声は何処までも優しい。


「そんなに悲しそうな顔をしないで、リズ。私は前にも話したとおりリズの笑っている顔が見たいんだ…たとえリズが自分のものにならなくても、ね。」


寂しそうに微笑むアルフレッド殿下にどちらが本当の殿下だか分からなくなってしまった。











「バルコニーに少し涼みにいこうか?」


ダンスを踊った後に誘われ、バルコニーへとやって来たリズ達だが、そこには先客がいた。




エリックお兄様とアランお兄様だわ。



何となく声をかけられなかった。











影に身を隠しているとエリックお兄様が真剣な眼でアランお兄様に問いかけた。


「アルはリズの事をどう思っているんだ?」


「それはどういう意味だい?」


飄々とした様子でアランはエリックの視線を受け止めた。


「俺は真剣に聞いているんだ。もしリズの事を妹としか見ていないならもうこれ以上リズを甘やかさないでくれ。リズの傷が深くなるだけだ。例えアルでもリズを傷つけるのは許さない」


「…リズは俺達の可愛い可愛い妹だ。昔も今もそれは変わらない。そうだろう?エリック」


穏やかに微笑んでアランはそう答えた。






アランの言葉にリズはその場にいるのが耐えられなくて逃げ出してしまう。




アルお兄様か私の事を妹としか思ってないことなんて、わかってましたわ。

でも、もしかしたらアルお兄様が振り向いてくれるんじゃないかと心のどこかで思っていた。











涙で視界がぼやける。

涙が後から後から流れて頬を伝う。




どこをどう走ったのか、ふと気がつくと中庭の庭園にたどり着いていた。


リズは庭園の片隅に備え付けられたベンチに腰を降ろした。




月明かりに照らされた庭園のバラはとても綺麗で、

ぐちゃぐちゃだったリズの感情を落ち着かせてくれるようだ。

















「探したよ。こんなところにいたんだね。」


穏やかな声に顔をあげると困ったような顔をしたアルフレッド殿下が目の前に立っていた。



来る筈がないと解っていても、アルお兄様が追いかけてきてくれるのではないかという淡い期待は脆くも崩れ去った。







目の前にしゃがみこんで私の両手を優し包み込むアルフレッド殿下の温かい手。


「前に話したよね?私はリズの笑っている顔が一番だと。私はそれがアラン殿の傍であるとずっと思っていた。それならば自分の想いを押し殺してでも身を引くべきだと、そう思っていたんだ。でもどうだ?本当にアラン殿の傍でリズは笑っている?…こんなに悲しそうな顔をして泣いているじゃないか」




「…アルフレッド殿下」


知らぬ内にまた涙が止めどなく流れる。


「リズ、私を利用してくれて構わない。どうか私の傍にいてはくれないか?」




今の私にはこの手を振り払うことは出来なかった。


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