週末のダンスパーティで
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その週末、私はミントグリーンのドレスに髪を結い上げ、アクセントに金で縁取られた紺色のリボンを着けていた。
「リズ、俺のお姫様は今日も可愛いね。ファーストダンスを踊る権利を俺に頂けますか?」
アルお兄様が芝居がかった仕草で私の手を取ると手袋越しに手の甲に口付けを落とした。
周りの令嬢達はそんなアルお兄様の仕草に頬を染めている。
「まったく…アルは本当にリズに甘いな」
溜め息をつきながらエリックお兄様がシェリル様を連れて私達のところへとやって来た。
「何だいエリック、リズの騎士役を俺に盗られたからって拗ねているのかい?」
からかうようにアルお兄様がエリックお兄様を見やる。
「いや、誰かさんと違って妹離れは出来ているからね。むしろお前の方が心配だよ」
エリックお兄様は意味深に微笑んだ。
「何の事やら…可愛い可愛いお姫様のお願いならどんな事でも叶えてあげなきゃだろう?」
完璧な笑顔でエリックお兄様にそう告げた後私に微笑んだ。
「あら、エリックこそ妹離れが出来てらっしゃらないわ。
こうやってアラン様とリズを気にしてるのが良い証拠だと思いませんこと?」
エリックお兄様とご一緒にいらしたシェリル様が私ににっこりと微笑んだ。
「ごきげんよう、シェリル様」
「ごきげんよう、リズ。いつものようにお姉様と呼んでは下さらないの?」
アルフレッド殿下と同じ翡翠色の瞳で金髪の王女様が子首をかしげながら言った。
「シェリルお姉様、私は…」
困ったように眉を下げるとシェリル様は何かに気づいたように言葉を付け足した。
「あら?別に暗にアルフレッドとの結婚の事を言ってる訳ではなくてよ?あなたがアルフレッドと結婚しなければ私とエリックが結婚するだけですもの。」
私に話しかけていた筈なのにシェリルお姉様の視線はいつの間にかエリックお兄様へと向いている。
ふたりは見つめ合い微笑みあった。
え?どういうことですの?
シェリルお姉様の真意が分からなくてエリックお兄様とシェリルお姉様の方を見ると信じられない事を伝えられた。
「元々この婚約はシルヴィア様と王妃様とがお互い子供が生まれたら結婚させて縁続きになりたいとお話されていた事が始まりなの。だから必ずしもリズとアルフレッドである必要はありませんのよ。」
エリックお兄様がシェリルお姉様の肩を抱き寄せる。
周りのあまり興味を示さなかったアルフレッドが珍しくリズに興味を示したものだからお母様が張り切ってしまわれましたの。
ですから私とエリックの話はリズ達は知らなくてもおかしくありませんわ。
「エリックと私はお互いの事を想い合っておりますしリズはそんなに深刻に考えなくても大丈夫ですわ。」
まぁ、アルフレッドは私達が一緒になろうがなるまいがリズを欲する事は変わりはないでしょうけれど。
そんな話をしているとホールに音楽が流れ出した。
「愛しい人、僕と踊って頂けますか?」
エリックお兄様がシェリルお姉様の手を取るとそっと口付けた。
「えぇ、喜んで。」
嬉しそうに微笑んだシェリルお姉様の手を引くとエリックお兄様はホールの中央へと消えていった。
「リズ、俺達も踊ろうか?」
目の前に差し出されたアルお兄様の手に自らの手を重ねるとアルお兄様のエスコートに身を任せた。
まるで私を愛しいと思ってくれているようなアルお兄様の視線に顔が赤くなってしまう。
これは可愛い妹へ…そう解っていてもこの手を離す事が出来ない。
優しげに微笑むアルお兄様と見つめ合っているといつの間にか曲が終わってしまっていた。
何か飲み物で喉を潤そうと給仕からシャンパンを受け取り、アルお兄様と一緒に壁際へと移動した。
音楽に合わせて踊る人々を眺めているとアルフレッド殿下がこちらに近づいてきた。
「エリザベス嬢、一曲私と踊って頂けますか?」
キラキラとしたオーラを纏いながらアルフレッド殿下がにっこりと微笑んだ。
私が戸惑っていると隣のアルお兄様がにこやかに笑ってこう言った。
「リズ、せっかくこういって下さってるのだしアルフレッド殿下と踊ってきたらどうかな?」
アルフレッド殿下と婚約していると思っているアルお兄様はそんな風に勧めてきた。
私を気遣っているであろう言葉が私の心を容赦なくえぐる。
「いこうか、リズ」
アルフレッド殿下は私の手を取るとをホールへと促した。
ー私の心をその場に残したまま。




