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倒しても闇は晴れず


「間もなくこの世界は終わる」


 ――その男らしき人間は私の前に立ってそんなことを言い放った。


 世界が終わる……それは皆が言っている、マナがなくなるということなのだろうか。


「それがどうした?」


 だけど、そんな事は関係ない、私は私のためだけに戦っている。


 他人のために戦うなどバカらしい、この世界とはそういうものだ。


「そうは言うが君が魔族ために立ち上がるのは決まっていることなのだよ」


「……不愉快だ、疾くと去れ」


 この目障りの男は何もかもわかったつもりでいて、


 私に命令しているような言い方で不愉快極まりがなかった。


 私は誰にも指示されないし、私の意思で生きている。


 そう思っていた。



「なあ、大震よ、運命を信じるか?」


「どういうことですか?」


「私が魔王になるのも、お前が私に仕えるのも決められた事だったのか?」


 大人になった時に私の周りには、数々の魔族が集まっていた。


 四天王と呼ばれる者の他にも多くの者が私を慕っていた。


 誰もが滅びかけたこの世界を救ってほしいと願っている。


 あの、男は言った、こうなるのは運命だと、


 ならば、この現状は決められていた結末でしかない、


 そして、私の目に写るのは……


「魔王、貴方の野望はここで潰える!」


 1人の女だ、聖剣を持ち、その気丈な振る舞いで私を敵と見なす、


 これが歴代の魔王が負けてきた勇者なのであろう。


 だが、そんな勇者も私の力の前には崩れゆく、


 私が立ち上がれば勝利は確実、そんな結末しか待っていないはずだったのだ。


「だが、この光景を見ろ、やはり、私の道は私が選んでいるのだ!」


 魔王の眼に映るは、


 1人の男が、命を燃やしてまで魔王を倒そうとする光景。


 魔王が視た、光景とは違うものだ。


 そう、ソーマは魔王の視た運命には映らない、


 例外的存在であった。


 だからこそ、イレギュラーが起こり追いつめられたのだが、


 魔王にとってそのイレギュラーは心地が良い。


 誰にも操られずに、生きているという実感を得ているのだ。


「だが、負けん!」


 魔王は拮抗している闇の隕石にさらに魔力を込める。


「ぐ……!」


 ソーマはうめき声をあげる、押し付けられプレッシャーがさらに上がり、


 全ての重力は自分に向かってくるような重さを感じたのだ。


 身体がペシャンコに潰れそうになり、脚がガクガクと震えて、


 その場に立っているのも許されない。


 だけど、それでもソーマは倒れるわけにはいかない。


 ソーマは見てきた、旅をする途中でこの世界を包む闇を、


 だから、そんな闇を取り除きたい、俺が勝てば世界は光に照らされる、


 そんな思いで命を賭けて戦っているのだ。


「切り裂け!」


 最後の力を込める、これがソーマの最後の輝きだ、


 その瞬間こそ限界を超えて、魔力を発揮させていたであろう。


 ソーマの創り出した光の大剣は闇の魔力を切り裂き、


 魔力は消滅して、隕石は破壊され、


 魔王はまさかという表情を見せている。


 その瞬間こそ、ソーマは限界を突破していた、


 限界を超えた反動か、身体から力が抜けていくが、


 ソーマはまだ止まるわけにはいかない。


「光よ!」


 ソーマは光を身にまとって、魔王に突撃する。


「これは!?」


 魔王の驚愕、ソーマが飛ぶ残照に光の結晶を残しながらも、


 魔神の四肢に向かって突撃する。


 その高速の動きに魔神はついていけず、


 四肢を貫き光の結晶が魔神を封じ込め拘束する。


「くっ!」


「終わりだ!」


 そして、ソーマは一度距離をとって魔王に向かって剣先を向ける。


 刃は光に包まれる。


 それを見た魔王はやばいと思うが、


 封じられた魔神の力、そして高速なソーマの動き、


 それに対処できずに、接近を許るすことになる。


 ソーマは覚悟を決めて、突撃をする。


 光の剣先が魔王の防御結界とぶつかる、


 すると、光が剣から溢れ出してソーマと魔王を包み、


 外から見ていた3人は眩しくて直視できなくなった。


「貫け!」


 光の中ではソーマの光と魔王の闇がぶつかっていた。


 といっても均衡していたのは一瞬で、


 聖剣が魔王の結界を破り、剣は魔王に突き刺さる。


「ぐっ……がっ!」


 魔王はその瞬間、理解した。


 これが今まで与えてきた絶望、死なのだと、


 まさか自分が体験することになるとはと思いながらも、


 その表情はどちらかというと憑き物が落ちたような表情であった。


「例え私を倒してもこの世界は何も変わらない、新たな闇が生まれるだけだ」


「……それでも人は歩いていける強さを持っているはずだ」


 魔王の最後の言葉、


 それを聞いて、ソーマの意識は途切れ、


 次に目覚めたのはベッドの上であった。




「そこで俺は死ぬはずだったが、こうして生き残ってしまったというわけだ」


 場面は再び、戦いが行われた後の主なき玉座の間に移り変わる。


 ローザはソーマの語った戦いを静かに聞いていた。


 聞いている最中は真剣に固い表情で聞いていたが、


 聞き終わった今、


 ローザもどこか憑き物が取れたようなさっぱりとした表情であった。


「本当に恨んでいないのか? 俺が勝ったことで闇の世界は滅ぶかもしれないんだぞ?」


「ううん、それは大丈夫だと思う、だって勇者と魔王の戦いは歴史上で何度も繰り広げられたもの、その度に闇の世界は、光の世界からマナが流れ込んで寿命を長引かせてきたから」


 勇者と魔王の戦いは歴史上、何度も行われる終わらない戦いである。


 過去も勇者側……つまりは光の世界が勝利を収めてきたが、闇の世界としても門を開けて熾烈な戦争によりマナを闇の世界に取り込むのが目的としている。


 光の世界を手中に収めて、世界の主導権を握るのが1番いいかもしてないが、


 そう、うまくいかないのが戦いというもの。


「おかしな話だな、2つの世界はこうもいびつな関係になっている、まるで誰かが戦わせたそうにしているようだ」


 闇の世界は定期的にマナ不足に陥り、


 そのためには光の世界と戦争をしなければならない。


 闇の世界と光の世界に繋がる門が開く時、マナは闇の世界に流れるからだ、


 そして、長く開けば開くほど次のマナ不足への時間は長くなり、


 一時的だが、世界の寿命を長引かせることが出来る。


 そして、闇の世界側も願わくば、光の世界を手に入れてこの問題を解決しようとする。

 

 光の世界はそれほどに魅力的な環境なのだ。


「だからこそ俺は戦う、こんな間違った世界を変えるために」


 ソーマのその覚悟を聞いて、ローザは最後にあった魔王の様子を思い出した。


 それは、獄炎によるクロムベルト襲撃作戦が失敗して、


 魔王側の勢いが徐々なくなってきた時だ、


 残る四天王は、疾風のローザに、氷刃と大震だけだ。


 大震は最後まで魔王と戦う所存であったが、ローザと氷刃は迷っていた。


 そんな中で氷刃が離脱したとの報告が入り、残るはローザと大震だけになる。


「ローザか、生きて帰ってきたようだな」


 ローザは魔王城に訪れていた。


 離脱するか迷っていたが四天王としての責務を果たそうとして、


 ソーマ率いる、勇者のパーティに挑んだが、返り討ちになってしまった。


 だが、ローザは生きていた、ソーマが見逃したのだ。


「……ごめんなさい」


「いや、生きていて嬉しいよ」


「そうではありません……私はもう戦えません」


 身体はボロボロであるが、休めば元通りになる。


 だが、ローザが言っているのは心の問題であった。


「……そうか」


 その時の魔王の言葉は、


 悲しそうでありながらも優しく、


 ローザが初めて聞いた声であった。


 責めれられると思っていたが、魔王はそれをやんわりと許容したのだ。


「怒らないのですか?」


「自分で決めた道だ、私はそれを嬉しく思うが、非難することなどない」


 魔王はこういう性格だ、


 人の意思を尊重する、それが他者ではなく自分で決めた道ならば何も言うことはない。

 

 戦うことを無理強いするつもりはなかったのだ。


「この世界は残酷だが、その中でも生きようとするローザの意思は尊重する、安心しろこの世界を手に入れれば、戦いのない世界を造ってみせる」


 それが魔王の本音であった。


 闇の世界で頂点に君臨した魔王、


 誰の助けもいらずにただ孤独に君臨していたわけではなく、


 そこには魔王についてくる仲間があり、そして別れもある。


 なまじ身体が強いから周りが死んでいく生き残ってしまう魔王、


 そんな中で魔王は、なぜこの世界はこんなにも争うと考えるようになり、


 誰かがその流れを断ち切らないといけないと思い、立ち上がることにした。


「だが、ローザ、1つだけ頼まれてくれないか?」


「え、何をですか?」


「私が失敗した時の保険だ」


 それにローザは驚いた表情を見せる。


 魔王様が失敗、そんなイメージは思い描けないが、


 それは冗談ではなく、真剣な表情だ。


 ローザはゴクリと唾を飲み込む、そして魔王から語られた言葉とは……



「この玉座の下に私の秘密を隠す」


「それは?」


「魔王様が私に託した言葉、いつか必要な時が来るって」


 常に魔王が座っていた玉座、その主が居なくなった時に秘密は暴かれる。


 魔王の言葉、そこにソーマが求めるものがあるのか不明だが、


 行ってみるしかなかった。

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