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水の国は今

 アクアティリス。


 今となっては世界の敵だが、


 5大国の内の1つには変わりはない。


 八岐山脈に囲まれている、地形。


 険しい山脈は来るものを消耗させる、


 自然の防御壁となっている。


 そして後方には、大きな大海が存在して、


 比較的に荒れているその海は、


 海から攻め入るに危険すぎるため、進行を阻む。


 まさに、自然の防御であり、


 守りに入ったのならば、最も強固な国であろう。


 特産物は勿論、海鮮。


 魚はもちろん、海藻、真珠など、


 海で取れるものならなんでもござれだ。


 逆に海が占める割合が多いので、


 農作物や、鉱石といった資源は、


 他の国と比べて少ない。


 といっても、鉱石などの資源は、


 ないではなく、掘っていないだけなので、


 埋蔵されている量は多く、直ちに影響がある問題ではない。


「とりあえずは食料か」


「では、山を切り開くのはどうですか?」


 ソーマとリリーは、アクアティリスの宮殿に居る。


 ソーマは3日前にこの国に来ていた。


 メルアが他国との戦争の宣言をして、


 一時は混乱に陥ったが、


 今では落ち着いている。


 その理由が、勇者が貶められていたからである。


 ソーマはこの国では、自国以上に人気者であった。


 なぜならば、海竜を討伐した伝説を作ったからだ。


 海竜とは恐れられてる、恐怖の伝説である。


 世界が大きく動く時……つまりは魔王が出現の時。


 現れては、アクアティリスの海を荒らして、


 とてつもない被害を長期的に及ぼす、


 最強の災害なのである。


 そして、ソーマの代。


 もし、今、海竜が現れたら、


 アクアティリスは滅びるかもしれない、


 それほどまでに国の力が劣っていたのだ。


 メルアもそれは知っていた。


 その代の巫女として、命を捨ててでも海竜を収めようと覚悟をしていた。


 そんな時に現れたのがソーマなのである。


 勇者は巫女と共に海竜退治にいった。


 そして、絶望な戦況、


 巫女のメルア様は命をかけて海竜と対峙する。


 そして、海竜の驚異的なブレスが巫女を襲いかかる。


 その時、勇者のソーマ様は最後の力を振り絞り、


 メルア様を守ろうとブレスの前に立ちふさがり、


 そのまま海竜を退治したのだとさ。


 それが民衆の知る、海竜退治の流れである。


 それに嘘偽りはない。


 国を救った、ソーマ。


 民衆からの人気度が高いメルアを救った勇者。


 そんな物語が実際に行われた。


 まさに姫とそれを守る王子様。


 英雄視されるのも無理はない。


 魔王という遠い物語ではなく、身近の物語だ。


 海は穏やかになってきて、実際に国が救われたのを実感したのだ。


 だから、メルアの口から語られた真実に、


 民衆は他国に対して怒りを抱いた。


 アクアティリスの民はソーマの味方であった。


「いえ、いけません、八岐の山は恐れられています」


 そして今は食料の問題を解決しようとしていた。


 海から近い、アクアティリスでは農作物は難しい。


 ならばと、八岐山脈を切り開いてみてはと、


 リリーの提案だがそれは却下される。


「確か、八岐の大蛇の伝説?」


「はい」


 遥か昔、


 アクアティリスの建国期である。


 今と比べて、まだまだ小規模だった時代。


 海と山脈の川の氾濫に悩まされていた。


 海では海竜、山では八岐の大蛇。


 2つの巨大な龍が暴れていたのだ。


 海竜は津波を起こして、八岐は川を氾濫させる。


 こんな所で国なんて無理だ。


 人々は諦めて絶望していた。


 皆は、戦いに嫌になって逃げてきた人達だ。


 帰る場所は既になくなっている。


 だからと言って、ここに居てもいつかは死ぬ、


 そんな時である、1人の女性が訪れたのは。


「お困りのようですね、私にお任せください」


 そう言って、彼女は小舟で荒れている海に旅立つ。


 人々は止めた、自殺行為だと。


 だが、大丈夫だと言って、彼女は海にでたのだ。


 しばらくすると、海は穏やかになり、彼女は戻ってきたのだ。


「海はこれで大丈夫です、後は山だけです」


 そう言って彼女は山に向かったのだ。


 そこから先はまさに大災害。


 天候は荒れて、雷は落ち、川は常に荒れている。


 そして、3日目の夜、ついに天候は落ち着いた。


 人々は山に向かった。


 山は削れており、1つの川が8つに別れていたのだ。


 地形が変わるほどの壮絶な戦い、


 それがここでおこなわれていたのだ。


 そして、その中心点で彼女は眠っていた。


 その後の彼女は、巨悪を倒すための旅立ってしまう。


 だが、その後、生きて戻ってきて、アクアティリスの長となった。


 晩年に次の巫女を育てあげたら、従者に契約があると言って、


 フラッとどこかに消えてしまい、二度と帰ってこなかったのだ。


「その契約が、巫女の宿命なのです」


 巫女の宿命。


 初代巫女は海と契約して、水の力を得た。


 それで海竜や八岐を倒したのだが、


 死ぬ時にその身を捧げる、契約をしたのだ。


 もし、それが果たされなかった時は災厄が訪れる。


 そう、言われている。


「なるほどな……神など恐れるに足らずだが、国民の感情を考えると今はやめておいたほうがいいな」


 ソーマのその言葉にメルアは流石だと思い、目を輝かせる。


 ソーマは神を恐れていない。


 なぜなら、魔王や人間の方が恐れてしかるべきだと思っているからだ。


 神でも勝てない魔王、集団ならば神を上回る人間。


 ソーマはどちらも味わっている。


「メルア様、大変です!」


 そんな中、従者がメルアの元に走ってよってくる。


 そして、メルアに耳打ちするように、情報を伝える。


「分かりました、下がりなさい」


 そう言うと従者は下がって、部屋からでていく。


「どうしましたか?」


「……クロムベルトに動きがあったようです」


 リリーとメルアはそれを聞いて、神妙な表情になる。


 だが、ソーマだけは嘲笑するような表情だ。


「ここまで愚かだとな、それとも俺の力を甘く見ているか」


 ソーマは笑う。


 もはや故郷だとしても何の情も浮かばない。


 最初に叩き潰す国が決まったのだ。

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