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最後のぶつかり合い

 戦いはすでにソーマが支配している。


 闇魔法による、魔力の吸収。


 それは活性化の魔法に強く刺さっている。


 活性化は余り、魔力を食わない魔法だ。


 外に放出する魔法と違い、


 体内に内在する魔法だからだ。


 外に出ていかずに内に留まる、


 使い捨ての魔力ではない。


 だが吸収されれば、それを補うために魔力を回さなければならない。


 このままだとジリ貧で魔力切れによる敗北は確実であった。


「近接戦闘に持ち込めれば!」


 レンジ外での戦闘に勝ちの目はない。


 先程まではソーマが詰める側だったが、


 今度はリナトが詰める側であった。


 だが、それには幾つもの闇魔法をくぐり抜けなければならない。


「なるほど、ではこれでどうだ?」


 ソーマは魔法をピタリとやめる。


 リナトに襲いかかっていた、無数の闇は消えてしまったのだ。


 それにリナトは怒りの表情を浮かべる。


「どういうつもりだ!」


 確かにこれは好機だ。


 遠距離攻撃がなくなれば、接近するのは容易い。


 だが、それは余りにも侮辱であった。


 倒せる手段があるのに、それを封印する。


 ナメられていると言ってもいいであろう。


 リナトにとってそれは許せない事であった。


「確かにこのままいけば勝利は確実だ、だがこれはあくまでリハビリのようなもの、剣で勝たせてもらう」


「抜かせ……後悔させてやる!」


 お互いに剣と槍を構える。


 突撃するのはリナトだ。


 ここまでナメられて、黙ってはられない性格。


 押し切ろうと突撃する。


 だが押しきれない。


 ソーマは後ろに下がらない。


 受けて立とうと、迎撃する。


「大分、目も慣れて、体が動くようになってきた」


 ベストコンディション。


 それには遠い状態であった。


 慣れない、闇の魔力。


 病み上がりの体。


 長く強敵と戦ってこなかった、故の感の衰え。


 だが、リナトという強敵の存在で、


 ソーマは徐々にそれらを取り戻しつつある。


 厳しい環境に置けば、徐々に適応していく。


 ソーマはようやく極寒の地の厳しさを思い出して、適応した。


 そういったところか。


 強化状態のリナトについていけなかったが、


 今のソーマはすでに近接戦闘でもそれを上回っている。


 リナトに生傷が増える。


 ソーマの剣が、


 槍の有利距離の結界を越えて、リナトにかすり始めた。


 剣の距離で戦われているのだ。


「この!」


 リナトは拳を突き出す。


 とりあえずは距離を離そうと、剛掌を放ったのだ。


 だが、そのような見え見えの一手、食らうソーマではない。


 その突き出された、拳、腕を手で払う。


 その勢いのまま一回転、


 そして回し蹴り。


 蹴りはクリーンヒットして、リナトは逆に吹き飛ぶ。


 ソーマは余裕であった。


「ここまでだな、次は斬って終わらせる」


 戦いの感は取り戻している。


 そう確信して、この戦いでもう得るものはないと、


 終わらせようとする。


 ここまでの戦力差、絶望的だが、


 リナトの顔に怯えはない。


 冷や汗も既に流しては居ない。


 まっすぐとソーマを見ていた。


 リナトはゆっくりと立ち上がる。


 まだ戦う心は折れていない。


 いや、折れることなどない。


 なぜなら、彼は戦うことしか出来ない。


 いつだって評価されてきたのはそこだ。


 自身が戦うのをやめた時、それこそが敗北なのだと、


 リナトは知っている。


「……なあ、お前は俺を一芸だけだと言ったな」


「ああ、お前の強みは近接戦闘だけだ」


 近接戦闘だけ。


 それだけでも、強ければ並の敵は相手にならない。


 だが、もし強者と当たった時、


 そして、全てが高水準であった時、


 それだと勝てる敵ではない。


「確かに俺はこの槍で突くことしか出来ない、体術も付け焼き刃なもんだ」


 槍を持って、突く。


 至極当然のことだ。


 そして、リナトも結局はそれだけにたどり着く。


 だがそれだけを極めてきた、


 それは時に何事にも負けない、強さに変わる。


「一芸も極めれば、必殺の一撃に変わるんだぜ」


 リナトから赤いオーラが溢れ出す。


 全身から魔力を放出しているのだ。


 魔力は全身を包み、槍にも流れ出す。


「なるほど、確かに極めた、究極の一というのは厄介だな」


 1つを極めた先にある究極の一。


 それは必殺技と言うのに相応しい。


「……いくぜ」


 リナトは飛び立つ。


 その赤いオーラを纏った、一撃。


 それは空中から、地上にめがけての降下。


 赤いオーラは炎に変わり、


 地上を焼き尽くすべく襲いかかる。


「受けて立つ」


 ソーマの体から黒いオーラが溢れ出す。


 全身から魔力を放出して、


 前面に敵の攻撃を防ぐべく、障壁をつくりだす。


 ソーマも自身の力の使い方は分かりつつある。


 見えない力は具現化されて、どこまでも深い闇となる。


 そこが見えないという点では、未知の力である。


 そして、その闇は前面に展開されて、


 ソーマを守る盾となる。


「おもしれえ! 食らいな、炎王の一撃を!」


 ソーマの闇とリナトの炎が接触する。


 槍は止められていた。


 その闇に阻まれており、突き刺すことは出来ない。


 だが、完全に止められていたわけではない。


 未だにリナトは進行している。


 闇の結界を突き破ろうと進み続ける。


 そして、先に限界がきたのはソーマのほうであった。


 闇の結界にヒビが入る。


 それを見た、リナトはいけると思い、ニヤリと笑う。


 だが、それはすぐに驚愕の表情に変わる。


 パリンと結界が割れて、その先に居る、ソーマ。


「俺の勝ちだ」


 闇の結界を破ったその先にはソーマが剣を構えている。


 リナトに勢いはもうない、


 結界を破った、それがリナトの限界であった。


 やばい。


 そう思ったときにはソーマの剣撃は既に放たれている。


 黒い衝撃はリナトの体を引き裂こうと襲いかかる。


 空中でそれを回避することは出来ない、


 リナトはその斬撃に切り裂かれることになった。

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