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実力の差は歴然


 人通りが少ない裏道。


 そこにソーマはたどり着いた。


「この辺ならいいだろ」


「ああ、人目はつかないな」


 ソーマは振り返る。


 その圧倒感にアベルは思わず魔王を連想する。


 今すぐにも逃げたいが、これは避けれれない現実。


 ソーマが生きていた。


 そして復讐しにやってきた。


 最悪な現実だが、直視しなければならない。


「本当に戦うのか」


「覚悟は済ましている」


 そう言ったソーマの瞳は漆黒が支配している。


 仲間であった時、その意志が敵に向けられている時。


 その時はどれほど心強かったか思い知らされる事となる。


 まさに絶望、向けられた意志は絶望だ。


「いい加減にしなさい、こっちは2人なのよ!」


「だからどうした? ああ、ここにジュリアンを連れてきてもいいぞ」


「なっ!?」


 戦力は2対1、圧倒的にエリーゼとアベルが有利だ。


 だがそれでもソーマは余裕の笑みを崩さない。


 フラフラしていて血色が悪そうな男がだ。


「舐められたものだな、流石に病み上がりのお前に負けねえよ」


「よく言うな、魔王を前にして背を向けた腰抜けが」


 その言葉に、アベルはムッとした表情になる。


「はっ、なに怒ってんだ、事実だろ」


「くっ、ふざけるな!」


 エリーゼは火球を放つ、それはソーマの横を通過して、髪の毛を少し焦がす。


「……次は当てるわよ」


 その魔法はわざと外したものだ。


 だが次は当てると警告する。


「なら、次は当てろ、どちらにせよ俺はお前らを敵として倒す」


 それにソーマは挑発で返す。


 アベルは剣を抜く。


 相手は丸腰だが、魔王と戦った人外。


 手を抜いたらやられるのはこちらだと確信していた。


「お前は後方支援だ」


「わ、分かったわ」


 そして陣形を組む。


 といっても前列に剣士(アベル)後列に魔法使い(エリーゼ)


 陣形とも呼べない、基本中の基本。


 だが、基本が故に効果的。


 魔法使いのスキを剣士が補うのだ。


「行くぞ、ソーマ!」


 ――アベルは走り出す。


 相手は元仲間の勇者。


 魔王と戦った、本物の勇者。


 対して俺は魔王から逃げた剣士。


 だが仕方がない。


 誰があれを相手に戦えるのだろうか。


 戦えるのは、恐れをしらない者と同じ存在の人外だけだ。


 だが、どうもソーマはその2つの素養があったらしい。


 おかしいのはあいつだ、俺じゃない。


 だから普通の人の集団である国から疎外されるんだ。


 異質なのはあいつ。


「お前は死ななければならないんだ!」


 あいつは女神から、使えば死ぬ力を受け取っていた。


 それを使って、魔王に向かっていき相打ちに持ち込んだ。


 その時はホッとしたものだ。


 魔王だけではなく、ソーマも死んだと思ったからだ。


 だが、あいつは生きていた。


 ゾッとしたさ、やはりあいつも人外だと確信した。


 そして魔王と同じ恐怖を抱いたのもそこからだ。


 おかしな話だ、同じ仲間で向けられる事もない剣。


 そして、ボロボロの体、なのにあいつが生きている事に恐怖した。


 まるでこの世のものではない者のように見ていた。


 だが同時に強すぎる力はこれほどの恐怖を生むものだと実感した。


 だからこそ、今、あいつが病み上がりのチャンスを狙って、殺さなければならない。



 ――振り下ろされる剣。


 ソーマが扱っていた聖剣に比べては格落ちだが一級品の剣。


 そして扱うの者は勇者のパーティの剣士。


 容易く防げるものではない。


 そこらの冒険者、騎士が受けれきれるレベルを超えている。


 その一撃を


「ば、バカな!」


 ソーマは棒立ちで受け止める。


 皮膚を切り裂く予定だった刃は、直前で止まっている。


 ソーマから発生された、闇の魔力が鎧となって止めていたのだ。


 そしてこの状況、アベルはデジャヴを感じていた。


 それは魔王との決戦。


 一番槍で攻撃したアベルだが。


 刃は同じように魔力によって止められていた。


 まさにこの状況と同じ。


「……やっぱり、こんなもんか」


 ソーマは予想通りといった表情で拳を叩き込む。


 その一撃でアベルは大きく顔を歪ませて、吹き飛ぶ。


「アベル、この!」


 エリーゼは溜まった魔力を開放する。


 ファイアストーム、1番得意な魔法だ。


 火の嵐がソーマを包み込み、燃やし尽くす。


 それを見て、ニヤリと顔を歪ませるが、すぐに落胆した表情を見せる事となる。


「それが通じたか? 魔王に」


 まるでそよ風の如く、ソーマは火の嵐を追い払う。


 それを見た、エリーゼは絶望の表情を見せる。


 だが、同時にある覚悟を決めることとなる。


 エリーゼは走る。


 倒れている、アベルの元に。


「ご、ごほっ、エリーゼ何を……」


「逃げるわよ!」


 こんな化物に勝てるわけがない。


 エリーゼが出した結論だった。


「おいおい、俺が転移魔法を唱えるまで許すわけ……」


 魔法でも高度なものは発動まで時間がかかる。


 転移魔法は戦闘中に唱えられるほど余裕はないものだ。


 だがそれはエリーゼだって分かっている。


 だからこそ転移魔法以外で転移を行う手段を実行する。


「消えた? ……神鳥の羽か」


 それはエリーゼとアベルが消える瞬間に取り出した、白い羽毛。


 神鳥の羽と呼ばれる、それは転移を一瞬で可能にする。


 そしてその行き先は決められたものであり、ソーマもその場所は知っていた。


「ちょうどいいな、聞きたいこともあるし」


 ソーマは向かう、あの2人が転移した場所に。

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