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会議の中で


「ん?」


「む?」


 5大国会議の会議場への道。


 その途中で2人は出会ってしまう。


「ケテルのじじい、まだ引退していなかったのか」


 ケテンベルク。


 それを略してケテル、そう言われることは少なくはない。


「ふん、生憎、後続が中々に育たんのでな」


 オットーの不遜な態度。


 それに対してゲンナディはものともせずに言い返す。


「しかしよ、じじいが参加するとは思わなかったぜ」


 例え、未だに条約があろうと、


 ケテルは参加しない。


 オットーはそう思っていた。


 なにせ、ゲンナディはクロムベルトを


 しいては王のオーランドをよく思っていない。


「確かにこの件に若造が関わっていなかったら参加はしなかったな」


「若造? ああ、ソーマか、まあ、同感だな」


 2人とも関心はクロムベルトでも、会議でもない。


 ソーマ、それだけである。


 ゲンナディのソーマの評価は、


 生意気な若造。


 そして誰よりも見どころがある。


 クロムベルトに所属するのは惜しい。


 オットーも、面白い友人。


 最も興味深い男。


 2人からの評価は高い。


「信じるか? あいつの裏切りを?」


 オットーは真面目な表情になる。


 口調もいつものおちゃらけたのはなくなり、


 至って真面目だ。


 それに対して、ゲンナディは不敵な笑みを浮かべる。


「神話にも劣る、信憑性のない話、信じるわけなかろう」


「……だよな」


 2人はどちらもソーマの裏切りを信じていない。


 それだけ裏切る可能性が0なのだ。




 会議場。


 それは塔の最上階である。


 ここは中立地帯。


 仕切るのは、光の民と呼ばれた、民族だ。


「では、これより会議を開始する」


 彼らはこの塔を建造した、始めの民族だ。


 神話を語り継ぐのを役割と思っており、


 世界が崩壊するのを防ぐのが役目だ。


 力のコントロール。


 それらが彼らのこの時代の役割だ。


 国同士の戦争には介入しない。


 魔王と言った世界の危機のみに介入する。


 故に戦いの仕切り役として最適なのだ。


「あー、本日は集まって頂き、感謝の意を……」


 オーランドは決められた文を読み上げる。


 それは休憩中に従者が書き上げた文章だ。


 そして、その読み始め。


 会議場の机をバンと叩く音が響く。


「なっ!」


 それはオットーだ。


 彼は真面目な表情で全体を見渡した。


「まず俺達が聞きたいのは、真偽だ」


「真偽だと?」


「ソーマは本当に裏切ったのか、それを答えろ」


 脅すようにオーランドを睨む。


 それに対して彼はオドオドとし始める。


 そこで側に控えていた、フィリップスが口を開く。


「私が代わりに答弁をしましょうか?」


 その言葉にオーランドはカチンと来る。


「ええい、いらぬは! ソーマは裏切っていなどいない!」


 その言葉。


 オットーとローゼリアは明らかに不機嫌になり。


 ゲンナディはやはりと言ったように笑い始める。


 そしてメルアの表情は不気味なほどに変化はない。


「貴様! では、ソーマの裏切ったといった情報はなんなのだ!」


「そ、それは……」


 ローゼリアは立ち上がり、怒りの表情をぶつける。


 今にも斬りかかりそうな形相である。


 流石のこれにはオーランドもすくみあがる。


 だが、側にたつフィリップスは笑みを崩さない。


「私が代わりにお答えします、我が王は保身のためにソーマを裏切り者に仕立て上げたのです、勇者の人気は絶大、それも国家が覆るほどに、故に反乱といった旗印にされるかもしれない、それに恐れたのです」


 自身の国が不利なこと。


 フィリップスはそれをペラペラと話す。


 それを聞いた、オットーは呆れ顔だった。


「なんと、まあくだらない事だ」


「保身のためか、せめて飼い殺しにすればいいものを……まあ、その王としての技量もないか」


 ゲンナディは見下すように笑みを浮かべる。


「世界を救った、勇者にそのような扱いとは、一国の王が聞いて呆れる!」


 ローゼリアは失望したように怒りをぶつける。


「最低ですね」


 メルアはごみを見るような目で淡々と発言する。


「ええい、問題は過去ではない、今だ! あやつは我が国を裏切り第2の魔王となろうとしている」


「自業自得であろう」


 そんな国、裏切られてもしょうがない。


 それが皆の意見であった。


「思った以上に無駄な時間だったな」


「オットー、どこに行く!」


「肉を食って帰る!」


 苛立ったようにオットーは会議場を去ろうとしていた。




「なあ、屋上の警備とかいるのか?」


「昔は鳥の魔物とかを警戒していたんだ」


「いまじゃ、そんなもん来ねえだろ」


 塔の屋上、そこは建設途中のまま止まっている。


 といっても高高度。


 普通はここから侵入はできない。


 だが昔は飛べる魔物も居たので警戒しなければなかった。


 その名残で兵士が配置されていたのだ。


 そして兵士は文句を言いながらも監視するのであった。


「なっ、た、隊長!」


「どうした?」


「ひ、人が跳んでいます!」


「馬鹿なことをいうな!」


 隊長は双眼鏡を奪い取る。


 そして、指差す方を見ていた。


 だが、そこには確かに人が跳んでいた。


 見えない足場を蹴るようにしてジャンプする。


 そんな男が写っている。


「矢を放て!」


「は、はっ!」


 だがそこは隊長。


 すぐに対処する。


「弾かれます!」


「そんな馬鹿な!」


 だが放たれた矢は、全て弾かれる。


 鋼鉄でもない、その生身だけの男にだ。


 そして男は塔にたどりく。


 屋上に来た、異端な男に思わず、兵士たちは引いてしまう。


「始めまして、この会議に参加しにきました」


「貴様、裏切り者の勇者!」


 隊長は剣を抜く。


 それに対してソーマも剣を抜いて答える。


「おっと」


 そして斬りかかってきた男。


 それを軽くあしらって、気絶させる。


「ここで殺しはまずいのでね」


「貴様!」


 兵士は全員、剣を抜く。


 面倒だが全て殺さずに相手にしなければなかった。




「ん?」


 オットーは懐かしいようなそうでないような、


 そんな気配を上から感じ取る。


「どうしました?」


 ローゼリアはそれに気づいていない。


 この場ではオットーだけが気づいていた。


「いや、まさかな……」


 そして聞こえるコツコツとゆっくりと会議場に近寄る足音。


 皆は息を飲んで見守る。


 何者かが来る。


 武器をいつでも抜けるように身構えるのだ。


「なっ、貴様は!」


 会議場のドアは開く。


 オーランドはその男に驚いていた。


「ほう」


「あ、貴方は……」


「やはりか」


 3人は驚いていた。


 そして感心、驚愕、確信。


 そんな表情をする。


「……ソーマさまっ!」


 メルアだけは喜びの表情になっていた。


「会議に参加しにきました」


 ソーマは5大国会議に乗り込む。


 そしてソーマは一通り見回した後、


 心の中で覚悟を決める。


 ――俺は世界に問を示した。


 そして、ここには世界の代表が集まっている。


 ならばこそ、今こそ世界の答えを聞くときだ。

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