第1話 出会い
2018年 08月08日 20時55分 本文を一部修正しました。
2018年 09月24日 18時55分 サブタイトルを一部修正しました。
「……あれ?」
ここは、どこだ?
森?山?とにかく、建物の中ではない。
でも、今まで俺が外にいたか?いや、いない。だってさっきまで俺は……。
「さっきまで……俺は…一体、何を、してたんだっけ…か?」
…全くもって思い出せない、今の今まで何をしてたのか…。
記憶喪失?いや、でも自分の名前は分かる。つい最近までの記憶が無いのか?
訳の分からない現象に戸惑っていたせいで、自分の手の中にある物体に今更気付いた。
「これは…カメラ…?何故カメラが…」
俺は知らぬうちに、この少し重めの一眼レフカメラを持っていたのか…?
このカメラ…見覚え…はあるにはあるが、詳細は分からない。
とにかく、何なんだ一体…?つい最近の記憶はないし、手にはカメラ、そしてここはどこだ…?何が何だか全然わからん……。
「あのー…」
「え?」
声がした。女性の声。後ろを振り向くと案の定、女性がそこにいた。
「ここで何してるんですか?」
黒髪ショート、赤い瞳。服装はフリル付きの黒スカートに白い半袖シャツ。頭には山伏風の赤い帽子、そして赤い下駄を履いている。
恥ずかしながら、俺はこの女性に見とれてしまった。彼女の瞳から目が離せられない。
「あの、聞いてます?」
「え?あ!え…あ、えっと…なんか、道に迷ってしまったみたいで…」
いや何言ってんだ俺は!いくら見とれてたからといっても動揺し過ぎだろ!?な〜にが『道に迷った』だ!道に迷うどころの問題ではないんだぞ!?
とりあえず、ここが何処なのかを訊いてみ…
「道に迷った?なら、私が案内してあげましょうか?」
「え」
「ん?」
あ、案内…だと?この山に詳しいのだろうか?まぁ何にせよ、案内してくれるのならそれはそれでありがたい話だ。
「あ、じゃあお願いします」
「はい、ではご案内しま〜す。ちゃんと私に着いてきて下さいね〜」
……か、可愛い。
いや馬鹿か俺は!?アホなのか!?初めて会ったばかりの女性に対して『可愛い』だなんて…。
「あのー」
「へ?おわぁ!?」
さっきまで前方を歩いていた彼女が、いつのまにか俺の左隣に移動していた。一体いつ移動したんだ?
「し!静かにして下さい…夜は何かと危険なんですよ、この山」
「え、あ、すいません…でも、それだと君にとっても危ないんじゃ?」
「あぁ、私は平気なんです」
「あ、そうなんですか…」
…なんか納得した感じになってしまったが、本当は納得していない。『私は』平気?なんで彼女だけ平気なんだ?
「そのカメラ」
「え?」
「そのカメラ、普通のカメラとは違うようですね」
「え?あ、まぁそこらのデジカメよりは、かなり優れているよ…あ、優れていますよ」
「別に敬語で話さなくても良いですよ。私もカメラ持ってるんですが、私のに比べてだいぶ大きいんですね〜」
「へぇ、君もカメラ持ってるの?」
「はい、まぁ私の商売道具みたいなものですね〜。あ、着きましたよ」
「え、もう着いた!?」
良かった〜やっと着いたか…。これで家に帰れ………………
ん?
…つい最近の記憶が無くなったとはいえ、さすがにこれは分かる。
ここは、俺の家ではない。
「え?あの、ここって…俺の家じゃ…ない…よね…?」
「え?当たり前じゃないですか〜。私がいつ『あなたの家まで』案内すると言ったんですか?」
「そ、そういえば確かに…。で、でもだな、俺は今遭難して…」
「そんなこと言わず、お茶でもしてって下さいよー」
「お、お茶って…」
「さぁさぁ、上がって下さい!」
「え、ちょ、手引っ張らないで…」
なんでこんなことに…。
ここは彼女の家だろうか?普通の和式の一軒家。だけど、和式と言っても瓦屋根ではなく、木だけで出来ている昔の家見たいな雰囲気を醸し出している。
「お、お邪魔しまーす…」
「はい、どーぞどーぞ」
引き戸を閉め、靴を脱ぎ、家に上がった。奥に進むと、床に新聞が散乱していた。さっきカメラを『商売道具』って言っていたのは…。
「新聞記者?」
「そうです。すいませんねぇ、片付けが苦手なものでして…」
「あぁ、別に気にしないで」
散乱している新聞のうちの一枚を拾い上げて読んでみる。
『異変』。その新聞の見出しに大きな字でそう書いてあった。
「あの、この『異変』っていうのは?」
「え?あぁ、それは妖怪が起こしたりする事件のことですよ」
「へぇ、妖怪の事件か…」
写真を見てみると、そこには少女たちが光り輝く弾みたいなもので戦闘?しているのが分かる。
よく出来てる写真だなぁと感心していたが、すぐに気付いた。
これ、合成写真か。こんな光景、現実的に考えて有り得ないし、そもそも『妖怪』なんているわけない。厨房でお茶を煎れている彼女に尋ねてみることにした。
「あの、すごく失礼なこと言っちゃうかもしれないけど、訊いてもいいかな?」
「ん?なんでしょうか?」
「君ってもしかして…虚構新聞を…書いてたりするのかな…?」
彼女の手が止まった。急須を置いて、顔だけをこちらに向けた。
ま、まずい…怒らせてしまったか…?
いや、冷静に考えてみれば、初対面の人の新聞を『虚構新聞』だなんて普通言ったりしないし、たとえそうであったとしても口にはしない。
そりゃ…怒るよな…?やってしまった…。
「はい、その通りです」
「へ?」
彼女は顔に笑みを浮かべてそう言った。
え?『その通り』ってことは、本当に虚構新聞なのか?
「そりゃあ、たくさんの人に読んでもらうためには、嘘をついたりしなければならない時だってあるんですよ」
「へ、へぇ…そうなのか…」
よ、良かった〜。何が良かったのか分からないけど、とりあえず良か…
「でも、それは本当ですよ」
「……え?」
「ですから、その『異変』と『妖怪』は本当ですよ」
「…………ぇ?」
『異変』と『妖怪』は本当?嘘じゃ…ない?
「あーちなみにですが、こう見えて私…実は……」
彼女が次に発する言葉を俺はもうすでに理解していた。何故なら…。
彼女の背中から、真っ黒な翼が現れたからだ。
そして、笑顔でその言葉を発した。
「妖怪なんですよ」
『妖怪』という言葉を聴いた瞬間、俺は玄関に向けて走り出した。彼女が本当に妖怪なのか確認する暇も無ければ、その必要も無かったからだ。
靴を履かずに戸に手をかけた。が、戸は開かなかった。
「っ!え?なんで?なんで…?なんで開かないんだよ…!!」
両手を使ってみたが、戸はビクともしなかった。戸を蹴破ろうと考えたその時、後ろから声が聞こえた。
「そうそう、そうでした。まだ名前を名乗っていませんでしたね…」
俺は、半ば諦めかけて後ろを振り向いた。
そこには、翼を広げた彼女が立っていた。
「私、妖怪鴉天狗の、射命丸文、と申します」
大きな漆黒の翼を広げた彼女の姿は、正に『妖怪』そのものだった。
こんにちは、山本風斗です。この度は『第一話 出会い』を読んでいただき、ありがとうございました。
さて、この『東方並行記』という作品は、言うまでもなく、上海アリス幻樂団様の『東方project』の二次創作です。キャラ崩壊やオリジナル設定が今後出てくる予定なので、ご了承ください。投稿頻度についてですが、次の話を投稿するまで、かなりの時間が掛かってしまいます。これはもう明確です。気長に待って頂けたら嬉しいです。また、投稿済みの話を後々修正することがあるかもしれません(文章力・語彙力が壊滅的なので)。その時は、前書きにて随時お知らせしたいと思います。
今後とも、『東方並行記』をよろしくお願いします。