完結
探し物はどういうわけか探す必要がなくなったころにあっさりと見つかる
でも、見つかればやっぱり嬉しい
完結《笑顔で脱出……?》
セブンベルの輝きはどんどん強くなっていき、ついには直視することが出来なくなってしまった。
「なに、これっ」
琴美の声がどこからか聞こえた。
「何がどうなってるんだ」
それに続いて茂の声も聞こえてきた。
どうやら全員無事のようだ、
『一体何をした!』
“少女”も含めて。
そんなやり取りをしている間も光はどんどん強くなっていき、さらには光に連動するようにセブンベルも徐々に熱くなっていった。
そして、
「あつっ!」
熱さに耐えられなくなった俺はセブンベルを手から離してしまった。
「……?」
が、一向に床に落ちた音も、気配もない。
不思議に思ったので恐る恐る目を開いてみると、
「あれ?」
さっきまであった輝きは弱まっていた。他の人たちもそれに気づいたようで、次々に目を開けていく。
だが、さっきまで強い光を見ていたせいで視界が少しぼやけている。
少し待って、視界を正常に戻してから辺りを見渡してセブンベルを探す。
が、どこにも見当たらない。おかしいなと思っていたら、茂が、
「なんだあれ」
と言って上を向いていた。
俺も茂の見ている方を向くと、
「あっ」
“少女”が浮かんでいるところよりも、さらに高い所にうっすらと光っているセブンベルがあった。
まだ何かあるのか。などと思っていたら、セブンベルから光の玉みたいなものが六つ出てきた。
その光る玉が出てきたことにより、セブンベルは輝きを失い、重力に従って落下してきた。
そして、
ガッシャーーン
と、大きな音を立てて割れた。
光る玉の方はしばらくしたら形を変えていった。
一つは、小さくない『トイレの花子さん』に。
一つは、下半身のない『テケテケ』に。
一つは、肉のない『ガイコツ』に。
一つは、中に人影がある『呪いの鏡』に。
一つは、薪を担いで本を読んでいる『二宮金次郎』に。
一つは、暗闇に溶け込まない『影』に。
そう、光る玉は倒したはずの七不思議に変わっていった。
「倒したはずじゃ……」
茂が驚いたように言う。
「また、倒さなきゃいけないの?」
琴美がそう言いながらその場に座り込む。
俺もいつ何をされてもいいように身構えていたが、一向に何も起きない。
それどころか、六つの七不思議は“少女”の方をずっと見ている。まるで「監視」しているみたいだ。
それに、六つの七不思議は戦った時みたく恐怖などは感じられず、逆に穏やかな感じがした。
“少女”の方は、六つの七不思議を見て、
『どうして……なんで……』
などと呟いていた。
そんな光景を見て、俺ら三人はしばらくボーっとしてたけど、いつ何が起こるかわかんないので俺は二人を呼んで、
「この中に入って」
と言ってシールドの中に入れた。
そして、しばらく七不思議を見ることにした。
しばらく沈黙が続いた後、七不思議の一つ“ガイコツ”が口を開いた。
『もうやめにしよう、理奈』
その声は理科室で聞いた時とは違う、幼い少年の声だった。
『そうだよ、理奈ちゃん』
“ガイコツ”に続いて“呪いの鏡”も言ってきた。
『黙れっ!』
“少女”はそう言って“ガイコツ”たちを攻撃しようとするが、“少女”の攻撃は“ガイコツ”たちに届く前に見えない壁のようなものにぶつかり届かない。
しかし“少女”は諦めずに攻撃を続けた。
『このっ……このこのこのこのこのっ!』
けれどもやっぱり、見えない壁に遮られて届かない。
「おっと」
“少女”の攻撃がこっちにも飛んできたが、シールドのおかげで助かった。
だがシールドの方にはヒビが入っていたので、俺は能力で直していると、また攻撃が飛んできた。何発も。
ガガガガガガガッ……
何とかシールドを直して、強化し、耐えた。
「…………」
気づけば攻撃は止んでいた。
“少女”の方を見ると、疲れていた。
霊も疲れるのか……と思っていたら、
「おいっ、急に闇が引いて行ってるぞ」
茂がそう言ったので辺りを見てみると、確かに闇が引いていき、空間が元に戻っていく。
どうやら“少女”が疲れたせいで力が弱まったみたいだ。
そして、再び“少女”の方を向こうとすると、“少女”の近くにいた“ガイコツ”たちが光に包まれていた。
「次はなにっ!?」
と琴美が叫んでいた。まあこれは置いといて。
“ガイコツ”たちの姿(光に包まれている)はどんどん人型になっていき、光が弾ける(ような感じに消えた)。
「「えっ」」
琴美と茂が声を上げた。俺はちょっと予想していたのでそこまでビックリはしなかった。
“ガイコツ”たちの姿は、普通の少年や少女の姿に変わっていた。
『翔……。くそっ、元に戻ってしまったのね』
「ありがとう。理奈がたくさん力を使ってくれたおかげだよ」
“少女”と、元ガイコツたちはそんな会話をする。
「? 一体どういうこと?」
琴美が聞いてくる。茂の方を見ると、茂も首をかしげていた。
仕方がないので俺は簡単に、結論だけを言う。
「七不思議たちは“少女”の力で姿を変えられた子供たちだったんだよ」
茂は今の説明で分かったらしいが、琴美はまだわかんないようだ。仕方ない。
「もう少し詳しく言うなら、“少女”は自分だけ見つけてもらえずに怨念が溜まって生まれた地縛霊みたいなもので、七不思議は殺された他の子供たちの魂を“少女”が形を変えてこの世に留まらせたもの。そして無理やりこの世に留まらせられた子供たちの魂……霊は、どんどん怨念を溜めて悪霊化してしまい、学校に来た人を襲うようになった。それが『学校の七不思議』。“少女”が全ての霊を操れるのは、その霊を生み出したのが“少女”だったからだよ」
ここまで説明して、琴美もようやくわかったようだ。
でもこの説明があってるかわかんないので、元ガイコツの……えーと、翔くん?(あっでも20年前だから翔さんかな)に聞いてみた。
「そうでしょう、翔さん」
「まあ、そんなところだね」
少し口調は大人っぽかった。声は子供だけど。
「そして、今、僕らがこうやって会話ができるようになったのは君のおかげなんだ」
と急にそんなことを翔さんが言ってきた。
一体何のことだろう? と思っていると、
「わかってないようだね。あの時の――君たちを襲っていた時の僕らは悪霊だったんだ。あの状態で倒されていたら、普通はそのまま消滅していたと思う」
と説明を始めてくれた。
「って、倒したのに今ここにいるじゃないですか」
と、翔さんに突っ込んだ。てかかなりフレンドリーになってしまった。
ちなみに“少女”は今力を溜めていて、一撃必殺の技でも使おうとしているみたいだ。
「そう、僕らも倒された時、体が消えていく中で消滅すると思っていた。……けど、ある物のおかげで助かったんだ」
そういって翔さんはある物を指差す。
「セブンベル?」
そこには壊れたセブンベルが落ちていた。
「本当だったら倒された時に消滅するはずだった僕らの魂を、そのセブンベルが回収して守ってくれていたんだ。どうやらそれには浄化の力もあったみたいで、僕らはその中で正気を取り戻した」
へぇ。セブンベルにはそんな力もあったのか。
などと感心していると、
「おっと、そろそろ力を溜め終わるみたいだ」
翔さんに言われて“少女”の方を見ると、“少女”の周りだけ黒く歪んでいた。
『コロス、コロス、コロス……』
“少女”は完全に理性を失くしていた。
「進、話は分かったわ。けどどうするのよ、あれ」
琴美が“少女”の方を指差して言ってきた。
「うん、俺の能力でも攻撃できるかどうか……。それに、倒せたとしてもセブンベルがないんじゃ消滅させてしまう」
さっきの話を聞いた以上、俺には“少女”を消滅させるなんてこと出来るはずがなかった。
能力でもう一度セブンベルを出そうにも、それが全く同じ役割を果たすとは限らない。壊れたセブンベルを直したとしても、機能までしっかりと直せるかどうか。
一見便利そうな俺の能力は、実際かなりアバウトでこういう時には使いづらかったりする。
そうやって悩んでいると、
「進さん、大丈夫。理奈が消滅する前に僕たちが何とかして見せるから」
と翔さんが言う。
「でもそこまで攻撃が届くかどうか……」
俺が後ろ向きに言うと、
「それも大丈夫だ。僕たちが理奈の力を抑える、だから進さんは攻撃だけに集中してくれ。僕たちは理奈を弱らせることは出来ても、倒し切ることは出来ない……だから、頼む」
翔さんが俺に頼んでくる。
「……わかりました」
俺はそう言って、なるようになれと“少女”に向かって能力を発動させた。どんな能力を使ったのかは、覚えていない。
『ぐっ……うぁ……』
俺の能力が当たったらしく、“少女”のうめき声が聞こえた。
その瞬間、とても強い力がこもった霧のようなものが辺りを包み――俺たちは気絶した。
目覚めてみると、そこにはいつも通りの体育館があり、もう日が昇って来たらしく窓から微かに光が入り薄暗くなっている。
周りには琴美と茂が倒れているだけで、七不思議たちはいなかった。……と思ったが、一人だけいた。
「翔さん……」
上空ではどんどん透けていく翔さんがいた。
「気が付いたみたいだな。進さんたちのおかげで、何とか理奈を解放してあげることが出来た。他のみんなは既に天に昇って行ってしまったから、僕が代表して言わせてもらう……本当にありがとう」
翔さんが深々とお辞儀をする。と言っても、俺は見上げているからイマイチお辞儀されている感じがしないが、その気持ちはしっかりと伝わって来た。
「僕もそろそろみんなのところに行かなくちゃだけど……その前に」
翔さんが何かを落としてきた。俺はそれを床に落ちる前にキャッチする。
「進さん、それを預かっておいてくれないか」
手を開いてみると、そこにはピンポン玉くらいの大きさの丸くて透明な玉があった。少し、中で何かが淡く光っている。
「これは……」
翔さんに聞くと、
「それは、とても大切なもの。ある人が失くしてしまった、その一部。いつか進さんがその人と出会うことがあれば、それを僕たちの代わりに渡しといてくれないか」
そういう間にも翔さんの体はどんどん透けていき、ついには殆ど見えなくなってしまった。
「わかりました。必ず、これをその人に渡しておきます」
俺はその玉を軽く握りしめる。
「何から何まで、本当にありがとう。僕はもう行くけど、最後に一つだけ、これだけは覚えておいて欲しい」
翔さんの声はどんどん小さくなっていく。
「自分が自分であるために、名前や記憶と言ったものはとても大切なんだ。だから、もしそれを失いそうになったり、失った人を見かけたら、助けてあげて欲しい。君たちにならそれが出来るから……」
そういって、翔さんは完全に消えてしまった。
最後の言っていた言葉の意味はよく分からなかったけど、忘れちゃいけないということだけはわかった。
「さてと」
俺は寝ている(気絶している)二人を起こすと、体育館を出た。
渡り廊下にあった見えない結界は既になくなっていて、俺は能力【霊視】を使ってみたがもう校舎の中に霊の気配はなかった。
「本当に終わったのね……」
琴美が呟いた。
「そうだな」
茂が眠たそうに言った。
「もう朝だね。とりあえず今日が休みで本当に良かったよ」
これで家でぐっすり寝れる。
生徒玄関から校舎を出て、校門を過ぎた俺たちは少し会話をした後、
「それじゃあ、また」
それぞれの家へと向かって歩き出した。
こうして、俺らの七不思議と戦った長い夜は終わり、青英高校ではそれ以降七不思議を目撃したという話は聞かなくなった。
☆完結《笑顔で脱出……?》 完
★後日談:
家に帰った後、親に一時間以上叱られた俺(と琴美と茂)。
説教も終わりやっと寝れると思った矢先、今度は学校から連絡が来て呼び出される。どうやら俺たちが夜中に学校で暴れまわっていたところ(七不思議と戦っていた)が監視カメラに映っていた(霊の姿は映ってない)らしく、そのことについてみっちりと問いただされた後また怒られた。
しかもその後に校舎中を綺麗にしろと言われ、俺と茂と琴美の三人は結局寝られなかったうえに貴重な休日を丸ごと失うことになったのだった。
☆学校の七不思議? 《了》
ちっす木葉っす
最終話で終わりの予定っしたが、あれを投稿した後になんとなく探したらあっさりとラストの話が見つかったんで投稿しやした
いや、1年くらい探しても見つかんなかったのに、どうして投稿し終わった後になんとなくノートを手に取ったら見つかったのか
しかも最初に手に取ったノートにラストの話が書いてあって、速攻で見つかるという
もう何度も見直したノートだったのに、なんで今まで見つけられなかったすんかねぇ……これはもう何か大きな力が働いてるとしか。ネタの女神様の仕業かな?
でも、とりあえずこれで正真正銘完結させることが出来て満足っす!
そういえばラストの話を読んでて、最終話のあとがきで言ってたことがだいたい合ってたっすね。やっぱり子供が七不思議っした
それとこれの続編らしき話は「恐怖の都市伝説?」って名前っしたね。これもだいたい正解っした
あ、続編の方は1ページ分も書かないまま放置されてたんで、投稿する予定はないっす
なんかこのラストの話の終盤で「大切な玉」だとか「名前や記憶が~」って続編の伏線らしき何かがあるっすが、当然これが回収されることもないっす
まあ、リメイク版を書くときにもしかしたら都市伝説の方もリメイクするかもっすね。1ページ未満のものをリメイクするって言っていいのかはともかく