第五話
★あらすじ:
・琴美(偽)が出てくる
・茂の出番が増えた
★前回の台詞(一部)
「そう、私は“呪いの鏡”よ」
「違うわ。その鏡の呪いは常に、鏡から鏡へと移動するの」
第五話《呪いの鏡(後)》
あの後、「歩きにくいから」という理由で掴んでいた手を離してもらった。
琴美にしては掴む力が弱かった気が……。まあそれは置いておいて。
今俺らは校内の鏡をすべて割るために3階の廊下を歩いています。何故鏡を割るのか? その理由は数分前に琴美が、
「そういえば“呪いの鏡”は、その(呪われた)鏡を割ればいいらしいよ。あっ、でもどの鏡かわからないね……そうだ! わからないなら、全部の鏡を割ればいいんだよ! うん、そうだよ。ってわけで、早速鏡を割りに行こう。まずはそこの水飲み場の鏡を割ろう!」
と言ったからである。
俺らは琴美が急にそんなことを言い始めるから、少し追い付いていけず、気が付いたら琴美の命令で茂がバットで鏡を割り、そのまま琴美に引っ張られるようにして廊下を歩いている。
という状況になってしまったのだ。
でもいつもの琴美とは少し違うような気がしたから、最初にも言った「歩きにくいから」という理由で手を離してもらったのだ。
ちなみに茂の持っているバットは俺の能力【召喚】で出したものだ。
しばらく歩くと、図書室に着いた。
「よし、じゃあさっそく中に入ろう」
琴美がそう言ってドアを開けようとするが、
「あれっ?」
扉が開かない。
「どうやら鍵が閉まってるみたいだな」
茂がそう言った。そういえば、今は夜中の一時くらいだ。
こんな時間に使う人なんていないのだから閉まってるに決まっている。鍵を閉め忘れない限り。
「それじゃあ理科室のドアが開いたのは、鍵の閉め忘れだったからなのね」
琴美が納得したような顔で言った。
「そんなことより、どうやって中に入るんだ? 教務室まで鍵でも取りに行くか?」
茂がそう提案した。
確かにそうした方がいいかも。なんて思っていると、琴美が、
「ねぇ、進。さっきバットを出した時みたいに、能力で解決できないかな?」
と提案した。
能力かー。でも、どんな能力を使えばいいんだろう。
「能力かー。でも、どんな能力を使えばいいんだろう」
頭の中で考えるつもりが、声にも出てしまった。
「別に悩まなくてもいいんじゃない? 瞬間移動とかで中に入れば」
と琴美が言ってきたので、俺は、
「いや、それもいいがもっといいやつ……例えば、鍵ごと変えてしまうとか。そして明日先生が鍵を使った時に開かなくて困らせるとか」
そこまでいったら茂が、
「それはやめろ。てか瞬間移動にしろ」
と言ってきた。
「ちぇ、しょうがないな」
そういって俺はポケットから鍵を取り出し、扉を開けた。
「じゃ、開いたことだし中に入ろうか」
そういって中に入ろうとすると茂が、
「ちょっと待て」
と言って止めた。
「なんだよ、茂?」
せっかくノリに乗ってたのに、茂に邪魔されたことで少し不機嫌になった俺はトゲトゲしく言った。
「いや、その……あれだ。今お前がポケットから出したものはなんだ?」
そういって茂は俺の右手にある鍵を指差す。
「これ? これは鍵だよ。そんなことも知らなかったのか、茂は」
俺はからかうように言うと、
「それは知ってる。俺が言いたかったのはそうじゃなくて、なんでお前が図書室の鍵を持ってるんだ」
と茂は少し興奮気味に言ってくる。
ああ、これのことか……。
「これはね、俺の能力【物体移動】だよ」
と説明してあげた。それに続けて、
「図書室だけじゃなくて、音楽室や会議室、それに……先生のロッカーの鍵もあるよ」
とも言ってあげた。
茂は一瞬驚いたような顔をしてから、呆れた顔になった。
「何してるの。早く入るわよ」
隣で琴美がせかすので「はいはい」と言って中へ入った。
鏡は入り口から入って右側にあるドアにかかっていた。
「じゃ、茂。お願いね」
琴美はそう言って一歩下がった。俺も鏡が飛び散るのでその場にシールドを展開した。
茂はバットを思いっきり振った。
『まって――』
ガシャーーーン
鏡は音を立てて割れた。
にしても、今声が聞こえたような……?
俺は気になったので琴美に、
「今、声が聞こえなかった?」
と聞くと、
「そう? 気のせいじゃない?」
と言われてしまった。
図書室から出た俺たちは、他のところの鏡もどんどん割っていき、3階、2階の鏡を全部割り、1階も残すは一枚となった。
「ここでラストか……」
そういって俺らは会議室にある鏡を見る。
「早速割っちゃいましょ」
そういって琴美は茂の体を前に押す。
「おい、押すなよ。でも、あと一枚か……本当に頑張ったな……」
と茂が感傷に浸っている。
まあそれも無理はないだろう。なんたって茂はこの学校にある、約1000枚ある鏡を一人で割り続けていたんだから。
「本当に良かったな」
俺が茂に言う。
「ああ」
茂が俺に言う。
「本当の本当に、良かったな」
「ああ」
俺と茂はしばらくそれを繰り返していた。
「さっさと割れと言ってんだろ」
急に琴美の怒鳴り声が聞こえた。
「どうしたんだ、琴美?」
茂がびっくりしている。
「さっきからうるせぇんだよ。あんたらは私の言うことを黙って聞いていればいいのよ」
さっきまでの琴美と別人のようになってしまったのを見て、茂は呆然としていた。
……しかし、今、琴美の周りが歪んだような? よし、ここはアレを使い調べよう。
そう思い俺は能力【霊視】を使った。この能力は、物や人に取り付いている霊や霊の出しているオーラが見える、こういう時にとっても便利な能力である。
俺はその【霊視】を使って琴美を見た。
「!!」
なんと琴美の周りにはどす黒くて禍々しいオーラのようなものが渦巻いていた。というより、琴美自体が影のように黒かった。
「ああ……」
俺は納得した。今まで感じていた違和感の正体は、コレだったんだ。
俺の能力【第六感】が琴美じゃないと言っていたし、幼馴染の俺が、俺の本能がコイツじゃないと感じてたのだろう。
違和感の正体がはっきりと分かった俺は、琴美に――いや、ソイツに向かって言った。
「お前は誰だ?」
俺がそう言った瞬間、ソイツはビクッとなり、
「な、なに言ってるの? 私は琴美よ」
と言ってきた。
しかし俺はソイツの言葉を無視してさらに続けた。
「本物の琴美はどこだ」
そういうと、ソイツの顔には焦りの色が出ていた。
「なに言ってるの? わ、私が“本当の琴美”に決まってるじゃない」
そういってソイツは認めようとしない。
しばらくにらみ合いをしていると、
『進! 茂! 私はここよ!』
琴美の声がしてきた。
「琴美!」
声のした方を向くと、鏡があり、その中に琴美はいた。
☆第五話《呪いの鏡(後)》 完
★次回予告:
ついに琴美は進たちと合流する。
そして、なんと五番目と六番目の七不思議も現れる。
進たちは次々と出てくる七不思議を倒せるのか? 次回、学校の七不思議?第六話《石像と影》